- 12月に予定されているイーサリアムの「Fusaka」アップグレードによって、バリデーターのデータ負荷が軽減され、レイヤー2ブロックチェーンのスケーリングが容易になると米資産運用大手VanEckは述べた。
- Fusakaによってロールアップへの移行が進むことでエンドユーザーの取引コストは低下すると同社は指摘。
- Fusakaはイーサリアム・メインネットの手数料収入を回復させるものではないが、ネットワークを支える資産としてのETHの役割を強化すると述べた。
イーサリアム(Ethereum)の次期大型ネットワークアップグレード「Fusaka」は、コストを引き下げ、効率を高めることで、ユーザーのブロックチェーン体験を一変させる可能性があると米資産運用大手VanEckは述べた。
VanEckのリサーチチームは9月の暗号資産(仮想通貨)市場レポートで、12月に予定されているFusakaは、イーサリアムの最大の課題のひとつである「ロールアップのデータ可用性」に対処するよう設計されていると説明した。ロールアップとは、多数の取引をまとめてイーサリアム上で決済するスケーリングソリューションのことだ。
なぜFusakaが重要なのか
アップグレードの中心となるのは、「Peer Data Availability Sampling(PeerDAS)」と呼ばれる手法だ。これは、すべてのイーサリアム・バリデーターが全取引データをダウンロードする必要をなくし、より小さなデータをサンプリングしてブロックを検証できるようにするもの。
これにより帯域幅とストレージの負担が軽減され、「ブロブ(blob)」と呼ばれるロールアップ用のデータスロット容量を安全に拡大できるとVanEckは説明した。
これは重要な点だ。なぜなら、イーサリアム開発者らはすでに今年、ブロブの上限を2倍に引き上げているが、需要は今も増え続けているからだ。
VanEckによると、Coinbase(コインベース)のレイヤー2「Base」とWorldcoin(ワールドコイン)のレイヤー2「World Chain」が現在、全ロールアップデータの約60%を占めており、レイヤー2がネットワークの成長において中心的存在となっていることを示している。容量のさらなる拡大によって、Fusakaはロールアップのコストを削減し、最終的にユーザーの取引コスト引き下げを実現すると期待されている。
暗号資産イーサリアム(ETH)への影響
VanEckは、Fusakaはイーサリアムが「ベースレイヤーの手数料収入に依存する構造」から脱却しつつあることを示していると指摘した。
アクティビティの多くがロールアップに移行する中で、メインネットの手数料収入は減少しているが、同社はこれは暗号資産イーサリアム(ETH)の重要性を損なうものではないと強調した。むしろ、ロールアップ取引の最終決済を担うイーサリアムのセキュリティに関する役割は大きくないr、ETHは単なる手数料収益源ではなく「ネットワークを支える資産」としてのポジションを強化するとしている。
VanEckのアナリストはまた、ETHをステーキングしていない保有者は、ETF(上場投資商品)やデジタル資産トレジャリー(DAT)企業といった機関投資家たちが利回り目的でETHのステーキングポジションを拡大し続ける中で、希薄化リスクに直面していると警告した。
その意味でVanEckは、Fusakaはレイヤー2のコストを引き下げ、スケーリング・エコシステムにおけるイーサリアムの中核的ポジションを強化することで、今後ますます進む機関投資家への普及に向けた魅力を高めると見ている。
技術的な課題は残るものの、Fusakaはロールアップ中心のロードマップにおける重要な一歩であり、ユーザーと長期保有者の双方にとって「重大な意味を持つ」とVanEckは結論づけた。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Midjourney / Modified by CoinDesk
|原文:How Ethereum’s Fusaka Upgrade Could Be a Game-Changer, Asset Manager VanEck Explains


