- イーサリアム財団はプライバシーを正式なロードマップに組み込み、プライベート決済、証明、アイデンティティ、企業向けユースケースの研究を拡大した。
- イゴール・バリノフが統括する新たなプライバシー部門は、セマフォアやMACIといった既存の実験を新たな取り組みと統合する。
- 財団はプライバシーと中立性・コンプライアンスのバランスを図り、規制上の懸念に対処しつつ、広範な暗号資産エコシステム向けの基準を確立することを目指している。
イーサリアム財団(Ethereum Foundation)はプライバシーをロードマップの正式な柱とし、研究活動を専用クラスターに拡大した。現在ではプライベート決済、証明、アイデンティティ、企業向けユースケースをカバーしている。
イーサリアムは2018年以降、プライバシー・スケーリング・エクスプローレーションズ(PSE)チームを通じてプライバシー研究を支援してきた。これには匿名シグナリング(Semaphore)、秘密投票システム(MACI)、zkEmail、zkTLSy、匿名国家ID(Anon Aadhaar)などの実験が含まれる。
これらはエコシステム全体の開発者にとって参照点となり、数百のフォークや統合を生み出している。
イゴール・バリノフ(Igor Barinov)氏が統括する新たな「プライバシークラスター」は、10月9日のブログ投稿によれば、これらの実験と新規イニシアチブを単一の枠組みに統合する。
これには、決済や相互作用のためのプライベートな読み書き、身元や資産所有権のためのポータブルプルーフ、選択的開示のためのzkIDシステム、プライバシーツールの標準化に向けたUX作業、そして強力な暗号技術をデフォルトで使用可能にするSDK兼ウォレット「Kohaku」が含まれる。
また「機関投資家向けプライバシータスクフォース」もクラスターに組み込まれ、コンプライアンスや運用要件を大規模企業がテスト可能な仕様書に翻訳する。
財団はプライバシーをイーサリアムの信頼性にとって不可欠と位置付けた。ブロックチェーンは設計上透明性を持つが、広範な普及にはユーザーや機関投資家が機密データを晒さずに取引・ガバナンス・構築を行える選択肢が必要だ。
暗号資産(仮想通貨)エコシステム全体では700以上のプライバシー特化プロジェクトが存在するが、イーサリアムの規模ゆえにその基盤技術が他者の採用基準となることが多い。財団が中立性とコンプライアンスを保ちつつプライバシーを両立させる信頼性のあるツールを提供できれば、次世代アプリケーション構築の規範を定義することができるだろう。
一方で、プライバシーは依然として政治的な問題だ。規制当局はミキサーやシールド取引を標的にしており、開発者も機密利用を可能にする機能が違法金融を容易にする可能性があることを認識している。
だからこそ、財団のオープンソース研究、機関投資家向けタスクフォース、一般ユーザー向けツールというアプローチは慎重ながらも意図的なものと見なせるのだ。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Ethereum Foundation Expands Privacy Push With Dedicated Research Cluster


