- FRBのパウエル議長は、まもなく量的引き締めを終了する可能性があると示唆した。
- 2022年に開始されたFRBの量的引き締めにより、バランスシートは9兆ドルから6兆6000億ドルに縮小した。
- パウエル議長の発言の後も、BTCオプション市場のセンチメントは弱気のまま推移した。
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル(Jerome Powell)議長は10月14日、まもなく、長期にわたるバランスシート縮小プログラムを終了すべき段階に達するだろうと述べた。しかし、ビットコイン(BTC)は依然として下落傾向にあり、デリバティブは弱気なセンチメントが持続していることを示している。
パウエル議長は、フィラデルフィアで開催された全米企業エコノミスト協会(NABE)のカンファレンスでのスピーチの中で、「我々の長年の計画は、準備金が十分な状況だと判断する水準をいくらか上回った時点で、バランスシートからの資金流出を停止すること」と述べた。
「今後数カ月でその時点に近づく可能性があり、この決定を行うために、幅広い指標を注意深く監視している」と付け加えた。
いわゆる量的引き締め(Quantitative tightening:QT)は、コロナ危機の際に連邦準備制度がバランスシートの拡大を通じて金融システムに追加した異常な流動性を除去するために2022年に開始された。それ以来、連邦準備制度のバランスシートの総規模は約9兆ドル(約1350兆円、1ドル=150円換算)から約6兆6000億ドル(約990兆円)に減少している。
パウエル議長のコメントは、FRBが銀行準備金(銀行が連邦準備銀行に保有している資金)がFRBが「十分な」とみなす水準を下回らないよう、バランスシートの縮小を進めないことを示している。この閾値を上回って維持することは、短期資金市場での混乱を回避し、金融の安定を確保するために極めて重要だ。
パウエル議長によれば、FRBが最近のさまざまな翌日物資金調達金利の上昇を含む市場状況を慎重に評価する中で、この水準に近づいている可能性があるという。
これらの発言は、市場が年末までに2回の25ベーシスポイントの利下げを予想する中で行われた。9月にも同様の規模の利下げが行われており、暗号資産(仮想通貨)ソーシャルメディアでは強気なセンチメントが高まっている。
ビットコインは反応せず
しかしビットコインは反応せず、暗号資産市場全体も同様だ。記事執筆時点で時価総額トップの暗号資産であるビットコインは11万3000ドル付近で取引され、過去24時間ではほぼ横ばいだった。
デリビット(Deribit)に上場するBTC連動オプションでは、下落リスクをヘッジする「プット(売る権利)」が、強気の「コール(買う権利)」よりも引き続き高いプレミアムで取引されている。2026年3月満期のオプションも同様の弱気な価格形成を見せている。
これは市場が暗号資産強気派に、量的引き締め政策の終了が必ずしもCOVID-19のパンデミック時に暗号資産の強気相場を後押ししたような新たなバランスシート拡大プログラムの迅速な開始を意味しないことを思い出させているのかもしれない。
さらに、QTのペースは 2024年半ばから著しく鈍化している。今年4月以降、FRBは国債の月間償還額を50億ドルに制限し、住宅ローン担保証券の上限は350億ドルを維持している。したがって、QTの終了が近づいていることは、必ずしも大幅な強気またはハト派的なサプライズを意味するわけではない。
「今日のパウエル氏の発言から得られた大きなポイントは、QTプログラムがまもなく終了する可能性が高いということだ。つまり、FRBは今後数カ月でバランスシートの縮小を停止する可能性が高い。このバランスシート縮小のペースはすでに非常に小さいため、大きな変化ではない」と、Xで匿名の市場オブザーバー、Markets and Mayhem氏は指摘している。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
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|原文:Bearish BTC Sentiment Persists Despite Powell’s Signal That QT May Be Nearing End


