金融庁の証券取引等監視委員会(監視委)は12月5日、暗号資産(仮想通貨)発行業者のフィスコに対し、自社発行の暗号資産の価格を不当に吊り上げ、決算上の損失計上を回避していたとして、課徴金1500万円の納付命令を出すよう金融庁に勧告した。
監視委の発表によると、フィスコでは2022年6月期、保有する「フィスココイン」の価格下落に伴い、本来は評価損を計上すべき状況にあった。

しかし、当時の取締役2名が暗号資産交換所「Zaif」で買い注文を繰り返すことで価格を人為的に引き上げた。同社はこの吊り上げられた価格を根拠に資産価値を算定し、必要な減損処理を免れていた。

また、その後の決算においても不正は継続。フィスココインやカイカコインは取引量が激減し、市場での換金が困難な状態となっていたため、会計上は無価値(ゼロ)として処理する必要があった。
ところが同社は資産としての評価額を維持し続け、有価証券報告書の利益を過大に表示していたとされる。
同日にはブロックチェーン関連のコンサルティングを展開するクシムに対しても、1200万円の課徴金勧告が出された。
クシムも同様に、流動性が失われたフィスココインの評価損を計上しなかったほか、子会社株式の売却益を過大に計上するなどの不正会計が認定されている。
これを受け、クシムは同日、勧告事実を認め「課徴金の額について争う意思はない」とする声明を発表した。
同社は不正の主因として、旧経営陣が企業グループ「シークエッジ」の利益確保を行動指針とし、不透明な意思決定を繰り返していたガバナンス(企業統治)の欠如を挙げた。
旧経営陣は既に解任されており、同社は今後、彼らに対する損害賠償請求を含めた法的措置を検討するとしている。
|文:栃山直樹
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