トークン化証券プラットフォームを手がけるSecuritize(セキュリタイズ)は、2026年第1四半期に、上場株式をネイティブにオンチェーンで取引できる、初の規制を遵守したサービスを提供すると発表した。
これは株価を追うだけの擬似的な商品でも、カストディアンが保有を約束するだけの権利証でもない。規制下にある本物の株式そのものをオンチェーンで発行・管理・取引する仕組みだ。
同社のリリースによると、投資家にとっての体験はDeFi(分散型金融)に近い。一方で、投資家保護、市場の公正性、規制遵守という伝統的金融(TradFi)市場が求めてきた高い基準を満たしている点が特徴となる。
「トークン化株式」の限界を超える試み
近年、「トークン化株式」を名乗る商品は増えているが、その多くは株価へのエクスポージャーを提供するに過ぎず、実際の株式所有権を伴うものではない。
デリバティブやSPV(特別目的会社。株式を保有するためだけに設立された別会社)、オフショア構造を用いたこれらの商品では、投資家は発行体の資本政策表(キャップテーブル)に記載されず、議決権も持たないケースがほとんどだ。
セキュリタイズはこうした状況を「真のトークン化ではない」と考えている。
セキュリタイズのトークン化株式が「本物」である理由
セキュリタイズが発表した新しいトークン化株式は、実在する上場企業の普通株式であり、以下の特徴を持つ。
- 投資家は規制下の株式を直接保有
- 発行体のキャップテーブルに直接記載
- 配当や議決権など完全な株主権利を享受
- 株式はセルフカストディ可能なトークンとして存在
- 同意なしの貸株や再担保化は不可
- 準拠ウォレット間でP2P移転が可能
この仕組みが成立するのは、セキュリタイズがSEC(米証券取引委員会)登録済みのトランスファーエージェントとして機能し、ブロックチェーン自体が権威のある所有権の記録となるためだ。
このモデルはすでに2024年12月、Exodus Movement, Inc.(エクソダス・ムーブメント)が史上初めて株式をネイティブにオンチェーン発行したことで実証されている。
最大のブレークスルーは「オンチェーン取引」
これまでネイティブにトークン化された株式は、オンチェーンで保有できても取引はオフチェーンに依存していた。今回発表された新商品は、その「最後の欠けていたピース」を埋めるものだ。
初めて、ネイティブにトークン化された上場株式が、Web3ネイティブの体験を通じて、オンチェーン上でリアルタイムに完全に取引可能となる。しかも、公開市場取引を規制する法的要件を遵守しながらだ。
TradFiとDeFiの交差点へ
セキュリタイズは、トークン化の本質を決済の高速化ではなく、プログラマビリティにあると見ている。株式がトークンになることで、スマートコントラクトやオンチェーン流動性、分散型レンディングとの安全な統合が可能になる。
同社は、規制当局やDeFi開発者と連携しながら、責任ある形でのオンチェーン金融の拡張を進めていく方針だ。
だが、セキュリタイズの取り組みは、伝統的金融を置き換えるものではない。
「信頼を犠牲にすることなく構築された、よりオープンでプログラム可能、かつ世界的にアクセス可能な金融システム」という業界の長年の約束がついに実現すると、セキュリタイズは考えている。
セキュリタイズは今年10月には、SPAC合併を通じた2026年のナスダック上場計画を発表している。
|文・編集:山口晶子
|画像:Shutterstock
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