【検証と展望】「2020年、ビットコインはゴールドを超えた」のか?2021年はどうなる?

新型コロナが世界経済を揺るがせた2020年、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などのクリプト資産が、株式や債券、コモディティ、ゴールド(金)といった既存の資産クラスを遙かに上回る上昇率を記録した。

このような快挙を受け、「BTCはゴールドを超えた」「BTCはデジタルゴールドの地位を確立した」などの見方がある一方、BTCとゴールドを差別化する動きも高まっている。激動の一年を振り返り、2021年の展開を予想しみてよう。

BTCは史上初の2万ドル突破、ゴールドは8月に過去最高値

最初に2020年のBTCとゴールドの大まかな値動きを振り返ってみよう。

5月に半減期に迎えたビットコイン(BTC)は、機関投資家の参入増加や供給不足による希少価値の上昇、米選挙、PayPal(ペイパル)やSquare(スクウェア)といった米大手決済企業の参入など、複数のポジティブな要因が追い風となり、11月に約3年ぶり となる2万ドル(約207万円)目前の水準を記録。

12月中旬には史上初の2万ドルを超え、22日現在の時価総額は4359億 7875万ドル(約45兆871億円)、2万2600ドル(約234万円)前後で取引されている。1月と比較すると204% 、時価総額は226% 上昇した。7年間で最大の下げ幅となった「ブラック・サーズデー(3月12日)」の3600ドル(約37万円)と比較すると、622%増という驚異的な数字であることが、Coin Market Capのデータから明らかになっている。

一方、8月6日に1キロ当たり6万6553ドル(約688万円)という過去最高値をつけたゴールドは、12日に7.7%安の6万1776ドル(約684万円)まで値を下げた。ロシアのコロナワクチンの承認報道や、米国の追加経済対策への期待感から欧米の株価が上昇し、安全資産を下押した。現在は6万195ドル(約622万円)と8月の水準を大幅に下回るものの、1月の4万8853ドル(約505万円)から23%上昇した。

2020年の2大イベント時の値動きは?

高ボラティリティーの引き金となった、新型コロナと米国大統領選挙選時は、以下のような特徴が見られた。

新型コロナ 共に3月大幅に下落

欧米諸国でコロナの感染が急拡大し、ロックダウンや行動制限により経済活動が著しく停滞した3月、BTC、ゴールド共に大幅に下落した。しかし、以下の3月で最も価格の落ち込んだ日の終値の比較から分かるように、過去1年というスケールで見るといずれも増加している。BTCのほうが前月比の下落率は激しいが、前年比の上昇率も大きい。

BTC──3月12日 4970ドル(約51万円)、前月同日比107%減/前年同日比27%増

ゴールド──3月18日 1キロ当たり4万7496ドル(約491万円)、前月同日比7.6%減/前年同日比13%増

米国大統領選挙選 上昇を続けるBTC ゴールドは大幅に下落

2012年にバラク・オバマ氏が再選した際は殆ど価格変動が見られなかったが、2016年にドナルド・トランプ氏が勝利した際はBTC が3.8%、ゴールドはほぼ5%近く急上昇した。今回の米選挙選は、「どちらの候補者が勝利してもある程度市場に不透明感が残り、BTCとゴールドに有利になる」との予想もあったが、それぞれ異なる動きが見られた。

BTC──米選挙選実施前の一ヵ月間で30%高騰。行方が不透明感を増した11月4日、1万4265ドルと2018年1月以来の高値を付けた。その後は挙選速報に一喜一憂し、米株と連動するように上昇と下落を繰り返しながら、2万ドルの壁を目指した。

ゴールド──10月29日を境に反発したが、選挙当日の11月6日の6万2764ドル(約649万円)をピークに反落。30日には5万7114ドル(約597万円)まで下落し、月間としては4年ぶりの大幅な下落率を記録した。

BTCとゴールド、加速する差別化の動き

興味深いのは11月以降、「BTCを伝統的な安全資産と差別化する動き」が市場で加速している点だ。

11月はコロナワクチンが実用化に近づいたことで、各国の経済復興への期待からリスク志向が高まり、安全資産を手放す動きが加速した。ロイターの報道によると、12月2日までの1週間で株式ファンドに97億ドル(約1兆32億円)が流入したのに対し、安全資産とされるゴールドファンドからは12月2日までの3週間で90億ドル(約9308億6769万円)が流出したという(バンク・オブ・アメリカの報告から)。

一方、BTCはリスク志向の高まりや米株価の高騰に影響を受けることなく、上昇し続けている。この状況は市場がBTCをゴールドの代替ではなく、まったく異なるアセットとして差別化し始めたことを反映しているのではないだろうか?

ゴールドマン・サックス「BTCとゴールドは共存できる」

2020年はBTCが上昇率ではゴールドを制したという印象だが、2021年は「BTCはゴールドを代替するか?」といった次元を超えた、新たなステージへ突入するとは言えないだろうか。

2020年の両資産の動きを追跡してきたゴールドマン・サックスのアナリストは、「BTCとゴールドは共存できる」との見解を、ブルームバーグが入手した12月17日のリサーチノートで示している。

アナリストは「ゴールドの最近のパフォーマンスと実質金利、ドルの低下により、BTCがインフレヘッジとしてゴールドに取って代わっていることを、一部の投資家は懸念している」と前置きした上で、「いくつかの代替品が生まれているが、BTCの人気の高まりは、“最後の手段の通貨”としてのゴールドのステータスに対して、実存的な脅威となるとは思えない」と述べている。

また、「景気が回復しても低金利金融政策が続く場合、実際の借入コストはさらにマイナスの領域に落ち込むため、投資家にとって魅力的な投資対象となる」と、ゴールドの2021年の強気相場再燃を予想している。

BTCに関しては様々な価格予想があるが、ブルームバーグは12月に発表した「クリプトの見通し(Crypto Outlook)2021」の中で、2021年に5万ドル(約519万円)、時価総額1兆ドル(約103兆7261億円)に達すると予想。現在のBTCの供給量は1858万弱と 、発行上限である2100万枚に近づいている。これにより希少価値が高まることに加えて、メインストリームでの採用や関心の拡大が予想されることがその根拠 である。

長年にわたり購買力を維持してきた歴史をもつゴールドと、激動の2020年に新たな転換期を迎えたBTC。2021年はゴールドが伝統的な安全資産としての地位をさらに強化する一方、BTCはメインストリームにおける独自の資産クラスを確立するものと予想される。

文:アレン・琴子
編集:濱田 優
画像:Cryptographer / Shutterstock.com