ビットコイン、供給不足──機関投資家の参入が拍車:データ

400万ビットコイン──現在流通しているビットコインの量だ。過去1年で、毎月少しずつ減少している。

この数量はブロックチェーンのデータを分析しているグラスノード(Glassnode)が推計したものだ。ビットコインへの投資を始めた機関投資家が増えるにつれて、売買可能なビットコインは減少し、価格上昇につながっている可能性がある。

グラスノードによると、直前の30日間における流通量の変化を示すビットコインの「リキッド・サプライ・チェンジ(liquid supply change)」はこの1年、ほとんどマイナスだった。

ビットコインのリキッド・サプライ・チェンジ
出典:Glassnode

過去にないほど長いマイナス期間は、長期的なビットコイン価格の力強さを裏付けている可能性がある。

3月1日時点、グラスノードによると売買可能なビットコインはわずか約400万。リキッド・サプライ・チェンジは7月~8月の間と、12月の期間を除いて、2020年4月以降マイナスとなっている。

「これほど長くマイナスが続いたことはなく、まもなく大規模な供給不足につながる可能性がある」とグラスノードは2月26日のウィークリーニュースレターに書いている。

過去5年のリキッド・サプライ・チェンジ(青:非流動的、橙:流動的、赤:流動性が高い)
出典:Glassnode

ビットコインの長期的な価値

2020年5月の3度目の半減期によって、マイニング報酬は12.5ビットコインから6.25ビットコインに半減した。同時にゴールドマン・サックスやシティグループ、ブラックロックといった伝統的金融街の大手企業が暗号資産市場への参入を計画する一方で、ペイパルやスクエアはユーザーに暗号資産の売買サービスを提供している。

ヘッジファンドのサード・ポイント(Third Point)の創業者兼CEO、ダニエル・ローブ(Daniel Loeb)氏は1日、「暗号資産を深く掘り下げている」とする一連のツイートを行った。

「機関投資家はマイニングされるビットコインよりも多くのビットコインを購入している。全員に行き渡る十分な数はない。これがビットコイン価格を押し上げている最大の要因」とビットコイン店頭取引(OTC)ブローカーのアレッサンドロ・アンドレオッティ(Alessandro Andreotti)氏は説明する。

先週の価格下落が一部の個人投資家にショックを与えた後、こうした供給状況は、ビットコイン市場に強気トーンを回復させるために重要と言えるだろう。ビットコインは、2月21日に記録した5万8000ドル(約620万円)超えの史上最高値から、一時4万3000ドル(約460万円)付近まで下落した。

長期保有者のポジション
出典 : Glassnode

しかし、グラスノードによると、1月はじめの反落時と比べると、ポジションを減らしたり、利益確定を行った長期保有者は少なかったようだ。上図のように長期保有者のポジション減少を表す赤い部分は中立(ゼロ)の方向へ戻っている。

機関投資家にとっての供給不足

ビットコインのコインベース・プロからの移動
出典:CryptoQuant

ブロックチェーン分析のクリプトクワント(CryptoQuant)のデータを見ると、2日に1万2000ビットコイン(約640億円)以上がコインベース・プロ(Coinbase Pro)から移動している。これは機関投資家が長期保有のためにビットコインを引き出し、コールド・ストレージに移動させた可能性が高い。投資家が下落局面でビットコインを買い進めたサインかもしれない。

コインベース・プロは、機関投資家がビットコインを売買するために利用する数少ないプラットフォームの一つであると、暗号資産取引所ブロックテーン(Blocktane)のジョン・ウィロック(John Willock)氏は述べる。

ビットコインのすでに限定的な供給は、大口のビットコイン投資家にとってビットコインがより希少なものになっていることを意味している。

「コインベースで取引可能なビットコインは“クリーン”で、ハッキングや盗難、ランサムウェア、ダークネット市場からもたらされたものではないと考えられている」とウィロック氏。「一般的な市場よりも基準が高くなっているため」、機関投資家が入手可能なビットコインは少なくなっているとウィロック氏は述べる。

「その結果、機関投資家はそうしたクリーンな取引所におけるビットコイン価格を押し上げることになり、それが全体的な価格を押し上げることにつながっている」と続けた。

|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Glassnode
|原文:More Institutional Investors Jumping Into Bitcoin Leaves Less to Go Around, Data Show