ビットコインは果たして中国の金融兵器になり得るか【オピニオン】

ビットコインは果たして中国の金融兵器になり得るか【オピニオン】

ビットコインは米国覇権を弱体化させようとする中国の陰謀か?

ピーター・ティール(Peter Thiel)氏にとっては、そうかもしれない。リチャード・ニクソン財団(Richard Nixon Foundation)が主催したイベントで、同氏は次のように述べた。

「私は暗号資産推進派であり、ビットコイン推進派だが、現時点ではビットコインは中国のアメリカに対する金融兵器と考えるべきではないかと考えている。(中略)法定通貨を脅かすものであり、特に米ドルの脅威となる」

これは完璧に理解できるが、同時に理解できない。

理解できない理由は以下のとおりだ。

ビットコインはコントロールできない

中国はビットコインをコントロールしておらず、コントロールすることは難しい。言うまでもなく、ビットコインは分散化されているからだ。

世界のビットコインマイニングの約4分の3は中国で行われており、理論的には中国政府が国有化する可能性はあるが、マイナー(マイニング事業者)は簡単に他の場所でマイニングを行うことができる。ビットコインは適応力があり、これまでのところ、政府の介入は受けていない。

もし中国が何らかの方法でビットコインをコントロールすれば、世界通貨としての影響力はおそらく制限されるだろう。リップル社(Ripple)のCEO、ブラッド・ガーリングハウス(Brad Garlinghouse)氏は2018年に以下のように述べている。

「中国が(ビットコインのコントロールに)介入しないとは言えない。だが中国がコントロールする通貨を使いたい国はいくつあるだろう? あり得ない話だ」

だが、ティール氏はある意味では正しい。

米国の銀行システムを迂回する

ビットコインが世界の準備通貨として、すぐに米ドルに取って代わることはないだろう。価値の保存手段としての価値が高くなり過ぎて、交換手段にはならない。ビットコインには数百万人もの保有者がいるが、現状、使う人はほとんどいない。

ビットコインは大きな地政学的影響とともに金融テクノロジーの扉を開いた。ビットコインのおかげで、我々は価値を移動させる方法について違った考え方を持っている。銀行や仲介者を必要としないことを理解する人は増えている。

中国はこうした認識を、そのきわめて国家主義的な世界観に適応させている。国際的なブロックチェーンサービスと提携した「デジタル人民元」の計画は、企業と個人が準備通貨を使用する必要性を取り除き、アメリカの銀行システムを迂回した取引を実現する可能性がある。

今後、ティール氏のようなコメントは多少の混乱はあるとしても、さらに増えるだろう(ビットコイナーがアメリカの国力を心配することは奇妙だが、今は置いておこう)。

中国は都合のよい引き立て役だ。

どちら側につくか

同じようなことは2019年にもあった。フェイスブックのデビッド・マーカス(David Marcus)氏が中国の金融イノベーションへの懸念を引き合いに、同社が主導するデジタル通貨構想を正当化したときだ。

「我々が5年以内に解決策を見つけられなければ、中国は自国がコントロールするブロックチェーン上でデジタル人民元を流通させ、(世界を)変える」とマーカス氏は議会で証言し、アメリカは他国に経済制裁を課す権利を失い、逆の立場に立たされる可能性もあると述べた。

中国が自国のブロックチェーンを大胆に展開すれば、通貨に対するアプローチの違いは鮮明になる。つまり、プライバシー vs 監視、国営企業 vs 民間企業、「クリーン」ビットコイン vs 「ダーティ」ビットコインなど、米中間に新たな衝突が生まれる。他の国々はどちら側につくかを選ばなければならなくなるだろう。

|翻訳:新井朝子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:China, the Convenient Foil

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