人気の証券コード「COIN」を取得したのはコインベースだけではない

ナスダックに上場する暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)は、証券コード(ティッカー)を「COIN」と決めた。これを知ったブロックチェーン投資会社コインシリアム(Coinsilium)のマルコム・パレ会長は、驚きを露わにした。

コインシリアムは、暗号資産の関連企業としては比較的早い時期の2015年に株式上場した。同社の株は現在、「COIN」の証券コードでロンドンのアクイス・エクスチェンジ(Aquis Exchange、元NEX)で取り引きされている。

パレ氏は、コインベースがティッカーとして「COIN」を使うことについては、さほど問題ではないとしている。しかし、今後何らかの混乱が生じれば影響が及ぶのではないだろうかと話す。

「(コインベースとナスダックが)確認するものだと思っていた。確認したのに当社を見落としたのか、あるいは確認もせずに『ナスダックで利用可能だから、これを使おう』と考えただけなのか。または、当社の存在を知っていながら、気にしないことに決めたのだろうか」(パレ氏)

コインベースはコメントを控えた。

弱者と強者の戦いを思い出させることはさておき、同じティッカーが異なる法域で使われている例はある。だが多くはない。ティッカーの基盤は、各銘柄に固有に割り当てられた識別コードの「ISINコード」だ。

混乱が生じる可能性があるのは報道時、そしてソーシャルメディアの影響は言うまでもないとパレ氏は述べる。

「COIN」を使い続ける

コインシリアムは、ロンドンの暗号資産コミュニティでは初期から知られていた。同社はイギリスでは「COIN」のティッカーを使っているが、2020年10月にアメリカのOTCQB市場(ナスダックなどに上場していない銘柄を売買する市場)に加わった時は、ティッカーとして「CINGF」を使って取引された。

パレ氏は、コインシリアムの資産が昨年の500万ドルから、最近では2500万ドルまで成長したことを指摘した。同社は「COIN」を使って、数多くのプレスリリースを出している。

「消滅しかけの企業が同じティッカーを使っていて、二度と耳にすることがないなら可能性があるかもしれない。だが、我々がそのティッカーを使い続けるにもかかわらず、大きな話題になるトレーディング会社も同じティッカーを使うというのは話が違う」とパレ氏は語り、以下のように付け加えた。

「プレスリリースで、COINの使用を躊躇することはない」

ナスダックもコメントを控えている。

ジェミニも望んだ「COIN」

「COIN」というわかりやすいティッカーを望んだのはコインシリアムだけではない。

2014年7月、暗号資産取引所ジェミニ(Gemini)の共同創業者、キャメロン(Cameron)とタイラー(Tyler)のウィンクルボス(Winklevoss)兄弟は、上場投資信託(ETF)申請書類を改訂し、ティッカーとして「COIN」を申請した。

兄弟が申請しているETFの取引の場をナスダックからBATSグローバル・マーケットに移した時も、認められれば「COIN」で取引される予定だった。

2014年当時、キャメロン・ウィンクルボス氏は「ティッカーと取引所を確定させることは、我々が予定通りに進んでいることを示す2つの大きな出来事だ」と米CoinDeskに語っている。

|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:コインベースのブライアン・アームストロングCEO(CoinDesk archives)
|原文:How the Coveted ‘COIN’ Ticker Found Its Way to Coinbase