米ブラックロック、ブロックチェーン分野を強化──エンジニアリング責任者を募集

世界最大の資産運用会社、ブラックロック(BlackRock)は、同社の主力ポートフォリオ管理システム「アラディン(Aladdin)」のブロックチェーン戦略を担当する人材を募集している。求人情報で明らかになった。

募集しているのはディレクター(役員)レベルの人材で、「さまざまなブロックチェーンプロトコル/プラットフォームを評価し、ソリューションの選択肢を探る」ことになる。パブリックチェーンとプライベートチェーンの双方が候補にあがっていると、今回の求人に詳しい関係者は語った。

ブラックロックのアラディン(Aladdin:「Asset, Liability, Debt and Derivative Investment Network」の略語)は、リスク測定と取引のためのシステム。求人情報によると、アラディンの新ディレクターは、ブロックチェーンをシステムに適用させる方法を調査するという。

アラディンは、数あるポートフォリオ・リスク管理ツールの中でも傑出していることから、「現代金融の技術ハブ」と呼ばれている。暗号資産投資会社ビットワイズ(Bitwise)の最高投資責任者、マシュー・ホーガン(Matthew Hougan)氏は、ブラックロックにおいて「最も重要なもの」と述べた。

「アラディンはブラックロックを動かす秘密のソースであり、マネージャーが資本市場を分析・解釈し、仕事を進めるためのソフトウエアツール」とホーガン氏はインタビューで語っている。

ブラックロックは、今回の求人ポジションの担当範囲についてのコメントを控えたが、広報担当者は以下のように述べた。

「我々は、ブロックチェーン分野における専門性と実行能力を強化するために、この分野のエンジニアリング責任者の採用を行っている。現在、ブロックチェーン分野で仕事をしているエンジニアはいるが、今回の採用により、我々の注力と能力を高めることができる」

アラディンは同社の設立(1988年)以来、進化を続けている。かつては自社向け製品だったが、現在では250以上のクライアントが利用している。

ブラックロックのブロックチェーンロードマップ

今回の求人では、候補者には「回復力のある」ブロックチェーンシステムを構築し、大企業の技術基盤に統合した経験が求められている。これはつまり、拡張性を持ったエンタープライズブロックチェーンへの関心を表している。

ウォールストリートの企業の中には、ブロックチェーンは中央集権型システムよりも効率的との考え方に基づいて、貿易金融、銀行間決済、さらには担保資産のトークン化のためにエンタープライズブロックチェーンを運用しているところもある。

米銀最大手のJPモルガン・チェースはその代表例だ。JPモルガンは「クオラム(Quorum)」と呼ばれるブロックチェーンプロトコルを開発し、独自デジタルトークン「JPMコイン」や国際送金の情報プラットフォーム「Liink(リンク)」の基盤として利用している。

JPモルガンが構築しているようなプライベートブロックチェーンには、他の銀行など、承認された関係者しか参加できない。そこでは一般的な暗号資産は使われず、代わりに不動産やゴールドといった伝統的資産をトークン化したものが使われている。

ブラックロックは、新しいディレクターにトークン化に対する同社の理解を深めてもらいたいと考えている。

「暗号資産に詳しい人たちは、何年も前からトークン化について議論し、将来、どのような役割を担うかを考えている」とビットワイズのホーガン氏は述べ、銀行や大手資産運用会社も後を追い始めていると付け加えた。

「つまり、伝統的な金融界の最大手の機関投資家にとって、ついに無視できない規模になってきたということ」

ブラックロックは2021年第1四半期にビットコイン先物の取引を開始。同社にとっては、初のビットコイン市場への参入となった。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:BlackRock Wants a Blockchain Strategy for Aladdin, Its Investments Engine