闇サイトSilk Roadの元運営者の母が語る「アメリカにはコンピューターオタクが必要だ」

闇サイトSilk Roadの元運営者の母が語る「アメリカにはコンピューターオタクが必要だ」

デジタル時代が進んでいくにつれ、アメリカにはコンピューターオタクがより必要になる。それなのにアメリカ政府は、彼らのアイディアや才能を掘り起こすのではなく、あまりに多くのオタクたちを、刑務所へと追いやってきた。

中国やロシアにサイバー領域で勝つためには、犯罪歴のある人たちも含め、オタクが必要だ。アメリカに敵対する国々では、最高に優れたテクノロジースキルを持つ人材や革新的な人たちに、アメリカのサーバーに入り込むように促す。一方、私たちは自国の優秀な人材を収監している。

多くのテックの天才たちが、様々なサイバー犯罪で連邦刑務所で厳しい生活を送る中、どれほどの才能が無駄になっているかは分からない。

分かっていることは、極めて優れた、しばしば理想主義的な、法律を犯した多くの若いオタクたちを、連邦政府が厳しく罰してきたということだ。

新しいデジタルフロンティアの可能性に刺激を受け、自らの才能を導くための成熟性や良き指導者を欠いた最高に優れた人材の一部が、違法行為を犯してしまうのだ。そうして彼らは、彼らを投獄することで名を上げるのに躍起となった検事やFBI捜査官の標的となる。

アメリカでも最高峰の人材の多くが、このようにして無駄になっており、それは私たちすべてにとってマイナスだ。あまりに多くの革新的なアイディアや夢が、裁判所や刑務所で叩き潰されているのだから。

オタクを檻に入れる代わりに活用すれば、社会に恩恵がもたらされ、国民皆がはるかに安全になる。

コンピューターセキュリティー研究家兼ハッカーのマーカス・ハッチンズ(Marcus Hutchins)氏の例を見てみよう。彼はサイバー犯罪を犯したが、大規模なランサムウェア攻撃の阻止に協力して釈放された。彼は、やり直しの機会を与えて救済すれば、社会や国家に恩恵がもたらされることの生きた証だ。

ハッチンズ氏は、ハッカーとしてスタートしたが、個人的な欠点はあったとしても、世界に大きな影響を与えるようになった、たくさんの若い技術者の1人である。マーク・サッカーバーグ、スティーブ・ジョブズ、スティーブ・ウォズニアック、ショーン・パーカーも同様だ。

一段と過酷な運命に苦しんだ2人の若者が、米人気掲示板サイト「レディット(Reddit)」の共同創業者アーロン・スワーツ(Aaron Swartz)氏と、私の息子ロス・ウルブリヒト(Ross Ulbricht)である。

悲運なことにスワーツ氏は、学術系の記事を無料でアクセス可能にするために不法にダウンロードした罪で、35年の懲役刑に課せられる可能性に直面した時に、自らの命を絶った。

ロスは、ハッキングではなく、闇ウェブサイト「シルクロード」を運営していたために終身刑に服している。どちらの事例も、過激で残酷な懲罰の破壊的なシステムがもたらした、恐ろしく、もったいない悲劇である。

獄中で朽ちていく

ロス・ウルブリヒトに対する処罰は、非暴力的な初犯の犯罪に対しては前例のないような厳しいものであった。終身刑2回に、仮釈放なしの懲役40年。彼の容疑には、いかなる暴力も含まれてはいなかった。

数多くの勲功バッジを受けた模範的ボーイスカウト団員で、奨学金受給者。そしてサイエンティストであったロスは、自由市場という理想と、新しいテクノロジーへの関心を追求し、当時はほとんど知られていなかった暗号資産(仮想通貨)のビットコイン(BTC)を使った新しい取引の方法を生み出そうとした。

そして彼は、プライバシーと、自発的なやり取りという不侵略的な原則に基づいたオンラインマーケットプレース「シルクロード」を立ち上げたのだ。最も良く取引されたのは、ロスが告発された3つの州を含むアメリカの大半で今では合法となった、少量の大麻であった。

もうすぐ38歳になるロスは、20代の頃とは別人である。20代から変わらない人なんているだろうか?彼の衝動的な性格はすっかり影を潜めたが、人や人間性に対する献身は健在で、そのことは彼の発言から明らかだ。

彼は許しと感謝について記したり、語ったりしており、社会が抱える問題への解決策をもたらすために、自らのクリエイティビティと知識を活用している。祈りを捧げ、瞑想をし、勉強や執筆活動を行い、芸術作品を作り上げ、仲間の受刑者たちに授業や指導をしている。

他の受刑者に暴力を振るうのではなく、窓のない狭い独房で、保護された孤立の日々を長く送ってきた。あらゆる意味で模範的な受刑者であり、暗闇における光のような存在だ。

それでも、現時点では、この平和的な男は、26歳の時にオンラインで生み出したもののために、死んでから刑務所を出ることができるような刑を宣告されているのだ。

アメリカの刑務所システムの中で朽ちていく多くの受刑者と同じように、ロスには差し出せるものがたくさんあり、私たちは社会として、その機会を奪われるという損失を被っている。

ロスの不公平で残酷な刑罰を減刑するように大統領に求めるオンライン署名には、約50万人が署名している。数多くの彼の支援者には、議員や州知事、刑事司法の活動家、テック起業家などが含まれる。ロスの刑罰が彼の犯した罪に見合ったものではなく、ひどく不公平なものだと考えるのは、あらゆる政治的立場にいる人たちだ。

アメリカ人の大多数は、アメリカの刑事司法システムの過酷なやり方に反対している。非暴力系の犯罪を犯した受刑者を何年、何十年も、さらには一生檻の中に閉じ込めるために何百万ドルもの税金が使われることに反対している。

そのような受刑者には、サイバー犯罪を犯した者も含まれる。むしろ彼らのようなオタクには、私たちのために働いてもらう必要がある。テレビ司会者でコメンテーターのジョン・ストッセル(John Stossel)氏が、ロスやその他のサイバー犯罪者について指摘した通り、革新や新しい発見で前進するためには、規則を破る人たちが必要なのだ。

オタクを檻に閉じ込めるのではなく、活用すべきだ。

リン・ウルブリヒト(Lyn Ulbrict)は活動家であり、講演者である。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:Put America’s Geeks to Work, Don’t Cage Them

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