5月の暗号資産(仮想通貨)マーケットは、歴史的に見ても非常にボラティリティが高まった月となったが、マーケット全体が総崩れする中で、イーサリアムの大口投資家を示す「クジラ」によるETH保有量は一時的に急増した。
クジラの保有量が8,180万ETH(約20兆円)を突破した5月10日
クラーケンのリサーチチームである「クラーケン・インテリジェンス」は、ビットコインのクジラを1,000BTC(約40億円)以上を持つアドレス、イーサリアムのクジラを1万ETH(約24億円)以上を持つアドレスと定義している。
5月10日にイーサリアムのクジラの動きは活発化したが、その後保有量は急減し、約8,160万ETHで月末を迎えた。
保有量の動きと同様に、月初1,302アドレスだったイーサリアムのクジラの数は月半ばに急増、一時1,320アドレスを突破した。しかし、月末にかけて減少し、月初からほとんど横ばいの1,308アドレスとなった。
ビットコインのクジラは静観
イーサリアムのクジラの動きとは対照的に、ビットコインのクジラは静かに5月を終えた。クジラによるビットコイン保有量は807万BTC(約32兆円)から804万BTC、クジラのアドレス数も2,280から2,212と、揃ってわずかに減少となった。
近づくイーサリアム2.0へのアップデート
相場が荒れる一方、イーサリアム2.0へのアップデート「ザ・マージ(The Merge)」の準備は着々と進んでいる。
待望のアップデートの目玉となるのは、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行だが、そのテストネット「ロップステン(Ropsten)」が無事に6月8日(日本時間6月9日)、PoSへの移行を成功させた。
イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は、「マージから3週間後には様々な問題が私たちを苦しめる可能性がある」と述べるが、イーサリアムの開発者たちによれば、予期せぬ遅れがこのまま発生しないとすると、2022年8月にもザ・マージが発生するという。
千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社し、2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。主な著作に『仮想通貨とWeb3.0革命』(2022年 日本経済新聞出版社)。
※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。
|編集・構成:佐藤茂
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