DeFiセクターに吹く逆風【Krakenリサーチ】

マーケット全体の回復に合わせ、DeFi銘柄も7月は復調の月となった。

イールドアグリゲーター・サービス(レンディングなど利回り投資を自動で最適化するサービス)を手がけるヤーン・ファイナンス(YFI)については、月間で価格が2倍に上昇。-4%となったAMPなど一部例外はあるものの、ほとんどの銘柄が二桁の上昇率を記録した。

(画像:DeFiの7月のパフォーマンス/Kraken Intelligence)

パンケーキスワップ(Pancake Swap)やバランサー(Balancer)については、月間の手数料収入が前月比+170%、+77%と大幅に増加した。一方、カーブ(Curve)、メーカーダオ(MakerDAO)、アーべ(Aave)については、それぞれ同-66%、-32%、-31%と落ち込んだ。

(画像:DeFiプロジェクトのパフォーマンス/Kraken Intelligence)

TVL(Total Value Locked、総預かり資産)別で見てみよう。

MakerDAO、リドファイナンス(Lido Finance)、ユニスワップ(Uniswap)がトップ3を占める。TVLから見たDeFiの市場規模は、DeFi Llamaによれば、7月末時点で約688億ドル(約9.2兆円)。

MakerDAOは約12%超のシェアをもっていることになる。一方、(ガバナンストークンの)時価総額をTVLで割った時の割合でみると、上位3プロジェクトの中でMakerDAOが0.12倍と、Uniswapの0.59倍に対して過小評価されているようだ。

押し寄せる淘汰の波

投資家にとっては必ずしも好ましい話ばかりではなかった7月の暗号資産業界での出来事について、ハイライトを以下にまとめた。

7月上旬の約2週間で、実に3つもの企業が破産の申請を行ったことになる。

Celsius Networkは、その決定に関して「事業を安定化させるためだ」との声明を出した。チャプター11とチャプター15は共に(清算を行わない)再建型の再生手続きであり、暗号資産ヘッジファンドのThree Arrows Capital(3AC)が申請したチャプター15は、米国外の企業が現地で再建を進める間、米国内の資産を保全(米国の債権者からの訴訟から保護)することができる再建方法だ。過去の教訓を踏まえた、意義のある再建が進められることを願う。


吉田友斉:慶應義塾大学経済学部卒業。新日本監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)にて大手金融機関の監査、アドバイザリー業務等に従事後、金融庁に入庁。検査局において金融機関の検査業務に従事。2018年7月に暗号資産(仮想通貨)取引所「Kraken」を世界的に運営する米国Payward Inc.に入社。2018年11月Krakenの日本法人であるPayward Asia株式会社の財務・リスク・コンプライアンス部門統括取締役に就任。2022年7月より現職。 公認会計士(日本)。

※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。


|編集・構成:佐藤茂
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