株価下落とおそらく暗号資産の下落も望むFRB【コラム】

FRB(米連邦準備制度理事会)のインフレ対策は、ビットコイン(BTC)が下落するまで終わらないかもしれない。

その理由はFRBの基本的な役割に立ち返る。FRBは金融政策(最近では金利引き上げ)を行い、とりわけ主要資産の価格、つまりFRBの用語でいう「金融情勢」に影響を与えることで経済を動かしている。

今年の大半、FRBは株式などの市場に対して悲観的だった。FRBは金融政策の変更にあたっては、フォワードガイダンス(金融政策の事前表明)を提示し、トレーダーが前もって準備できるようにしていた。しかし、それも過去のことのようだ。7月、パウエルFRB議長は、フォワードガイダンスの提示をやめると発表した。

株価下落を望むFRB

「FRBが株価下落を含む金融環境の引き締めを望んでいることは明らか」と米金融持株会社アリー・ファイナンシャル(Ally Financial)のシニア・マーケットストラテジスト、ブライアン・オーバービー(Brian Overby)氏は記した。

そして、おそらくFRBの意向は暗号資産にも当てはまる。なぜなら、暗号資産と株価は強い相関関係にある。すでに大きな損失を被っている暗号資産投資家にとっては、歓迎できないニュースだろう。

ビットコインはすでに年初から60%近く下落しており、業界大手の破産申請やマクロ経済の低迷を背景に、暗号資産市場の下落が続いている。

FRBには2つの使命がある。物価安定と雇用の最大化だ。現状、物価は安定しておらず、インフレ率はFRBの目標値2%を大きく上回っている。一方、失業率は依然として低く、新規雇用者は毎月30万人以上増えている。

これは求職者にとっては素晴らしいニュースだが、逆にインフレを煽りかねないもので、FRBにさらに強いアクションを取るよう圧力を加えている。そして、株式や暗号資産のような市場に潜在的な問題をもたらす。

「FRBは逆資産効果を生み出し、資産を持つ人々に購入習慣の一部を再考させ、需要を減速させようとしている。これは危険なゲーム」とビアンコ・リサーチ(Bianco Research)のジム・ビアンコ(Jim Bianco)氏は語った。

アメリカのGDP(国内総生産)が2四半期連続で縮小しているにもかかわらず、経済は積極的な利上げの継続に耐えられる状態にあるようだ。だが経済軟化のサインは、FRBの決意を試すことになる。

「(FRBが)なにか本当に深刻な雇用統計に直面したときに、スタンスを変える可能性はきわめて高いが、現状はそうなってはいない。FRBの取り組みは賛成できないが、その主張は完全に理解できる」とビアンコ氏は述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:パウエルFRB議長(Wikimedia Commons)
|原文:The Fed Wants You to Lose Money in Stocks and Probably Crypto, Too