FTXを崩壊させたのは暗号資産ではなく人間だ【コラム】

FTXを崩壊させたのは暗号資産ではなく人間だ【コラム】

かつては320億ドルの評価額をつけた暗号資産取引所のFTXと、その姉妹投資企業アラメダ・リサーチ(Alameda Research)の破綻は、暗号資産嫌いの人たちに改めて、ニュースの見出しを見て悦に入る喜びを提供している。しかし、FTXは、ブロックチェーンやウェブ3を長年信じている多くの人たちが築こうとしているものとは、似ても似つかないのだ。

FTXはクリプトではない

FTXの破綻は、規制の不足によるものでも、コードベースの破損によるものでもない。人間の失態だ。FTXの破綻が示すのは、真に分散化され、透明で開かれたウェブ3テクノロジーは、ユーザーをより良く守り、より公平でレジリエントなデジタル金融システムを支えることを示している。その理由を説明しよう。

サム・バンクマン-フリード氏が築いたFTX帝国には、分散化も透明性もなかった。FTXはブロックチェーン業界の大半が築こうとしているものよりも、2008年に破綻したレバレッジ過多の金融機関にはるかに近い。

その理由はシンプルだ。FTXは中央集権型であり、参加は限定的。少数の人間が所有し、さらに少ない人たちによって管理されていた。プラットフォームがオーダーブックとユーザーの資産を管理し、自社金庫の中に準備資産を保管していたのだ。

ブロックチェーン第1号のビットコインは、企業や銀行などの仲介業者を必要とせずに、世界のどこにいる人たちの間でもピアツーピアの価値の交換を可能にする。

イーサリアムはこのパラダイムにプログラム可能なスマートコントラクトをもたらし、アプリケーションを丸ごと、グローバルで分散型のネットワーク上で運営できるようにした。

ブロックチェーン基盤のテクノロジーを使ってインターネットインフラを分散化しようとするウェブ3を支える、そのようなプロブラム可能なブロックチェーンが、今では多く存在している。

これらの開かれたブロックチェーンネットワークは、透明性のある開かれた台帳の上で運営されており、取引履歴はネットワーク内にいる誰にとっても検証可能で、検閲は非常に困難だ。

分散型システムのメリットは、利害関係者が何が起こっているか知ることのできる透明性、犯罪者が悪用、乗っ取りすることを困難にする検閲耐性、そして困難に対応するために順応できるアンチフラジャイル性にある。

中央集権型取引所は、法定通貨と暗号資産の間のオンランプ、オフランプとして最も便利であり、個人ユーザーは広範な顧客確認プロセスを経る。準備資産やバランスシートを一般に公開することが義務付けられていない中央集権型取引所には、伝統的銀行や貸付業者と同じような慎重な規制が必要となる。

ベアー・スターンズやリーマン・ブラザース同様、FTXは事業を展開した地域で規制を受けていた。規制を受けた証券を扱っていた組織においても、不良債権や流動性のない担保、レバレッジ過多などが明らかに発生していたのだ。

しかし、FTXのユーザーが、ユニスワップ(Uniswap)やアーベ(Aave)など、分散型型取引所やプロトコルのユーザーと同じ情報にアクセスできていれば、今回の破綻はほぼ不可能であったはずだ。分散型取引所でアカウントを持つ人たちは、自分の資産を完全にコントロールし、プラットフォームのガバナンスにも参加できる。

自社の準備資産を公開するよう求める圧力に、バイナンスやクリプト・ドットコムなど、いくつかの中央集権型取引所が応じている。準備資産は対応する債務を明らかにするものではないが、自己規制や分散型金融の慣行を中央集権型組織に適応する方向に向けた、好ましい展開である。

分散型のアプローチ

FTXの破綻は、より分散型のアプローチの必要性を浮き彫りにしている。例えば、FTXと今年7月に破綻した中央集権型企業セルシウス・ネットワーク(Celsius Network)のどちらもが、最終的に破産を申請する前に、公に確認できるものであったことを理由にDeFiローンを最初に返済したことは注目に値する。

このことは、個人のプライバシーを守りつつ、参加者を守るデータ豊富で透明性の高い会計・コンプライアンスシステムが必要とされていることの、はっきりとした証拠である。

閉じられたシステムやウォールド・ガーデンにおいては、規制はある程度しか役に立たない。透明性のあるコードと一般への説明責任の方が、ウェブ3によるより良い未来への移行にはるかに役立つ。

DeFiの透明性を受け入れつつ、ゼロ知識証明プロトコルなどのプライバシー保護テクノロジーへの投資を続ければ、個人ユーザーや、実世界でのユースケースに対応するウェブ3プロジェクトにとって、より安全な環境を作りつつ、広範な規制当局による取り締まりにつながるような状況を避けることができる。

私はウクライナで育ち、プログラマーとして自分の最初のプロジェクトに携わっている時から、信頼とより公平な金融システムの問題について考えを巡らせてきた。

私がウェブ3を信じているのは、簡単に腐敗したり、犯罪者に乗っ取られることのないシステムを構築したいからだ。世界中の市民が、信頼できない銀行を信頼したり、祖国の経済状況を理由にシステムから完全に締め出されることなく、自らの資産とデータをコントロールできるようになって欲しいのだ。

FTXの破綻を受けて、より良いデジタルインフラを作るために、世界がウェブ3を必要としていると、私はこれまで以上に確信を持つようになった。FTXはクリプトではない。その失態によって、クリプト業界全体を判断してしまうことのないようにしよう。

イリア・ポロスキン(Illia Pollosukhin)氏は、ニア・プロトコル(Near Protocol)とアンチェーン・ファンド(Unchain Fund)の共同創業者。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:サム・バンクマン-フリード氏(Danny Nelson/CoinDesk)
|原文:Crypto Didn’t Fail FTX; People Did

おすすめ記事: