FTXユーザーの損失は、ウォール街弁護士の稼ぎ【コラム】

サム・バンクマン-フリード前CEOは保釈金として330億円を支払い、幹部たちは検察と取引し、100万人もの債権者はお金を取り戻そうとしている。

だが、あるグループは間違いなく利益を手にする──弁護士やコンサルタントだ。

12月21日に裁判所に発表された書類には、FTXのパートナー企業が払い戻しを受けるための条件が詳細に記されているだけでなく、弁護士、税務アドバイザー、再建専門家、そして11月11日に後任としてCEOに就任したジョン・レイ氏をはじめとするFTXの新経営陣が請求した報酬も記されていた。

FTXの9つの債権者グループの代表委員会の弁護士、ポール・ヘイスティングス氏もリストに加わった。

高額なフィー

法律やコンサルティングのサービスは、決して安くない。FTXの法律事務所であるSullivan & Cromwell(サリバン&クロムウェル:S&C)は、1時間あたり2165ドル(約28万7000円)を請求していることが21日の提出書類で明らかになった。

11月9日にFTXの清算を指揮するよう依頼されたS&Cは、破綻前の3カ月間にFTXから約340万ドル(約4億5000万円)を受け取り、大半は11月3日に支払われている。

また、FTXの子会社で米国事業を所有していたWest Realm Shiresは、11月14日に破産を申請する前に、S&Cに1200万ドル(約16億円)の依頼金を支払った。

財務アドバイスを提供するAlvarez & Marsel(アルザレス&マルセル)の1時間あたりの料金は1375ドル(約18万2000円)、破産前に400万ドル(約5億3000万円)の依頼金を受け取っている。

レイ新CEOも自分の会社Owl Hillを通じて、同様のフィーを請求している。連邦破産法11条(チャプター11)による手続きが完了すると、新CEOはさらに300万ドル(約4億円)のボーナスを手にする。

このほか、清算手続きに加わっている法律事務所Landis Rath & Cobb、企業再建などを手がけるKroll(クロール)、会計事務所EY(アーンスト・アンド・ヤング)も多額のフィーを手にする。

複雑な仕事

一般人から見れば驚くべき数字だが、破産手続きという複雑な世界では決して例外的な数字ではない。破産手続きは高度なスキルと経験が不可欠な仕事で、関係者は個人的に訴えられるリスクもある。手続きがうまく進めば、最終的には債権者の利益に結びつく。

FTXが問題を解決しようとするときに、高度な法律アドバイスに「即時かつ継続的にアクセスできることは不可欠とサリバン&クロムウェルは考えており」、フィーは妥当かつ競争力のある対価を反映していると提出書類には記されている。

また、これらの金額は破産処理で扱おうとしている金額に比べればわずかなものだ。弁護士とスタッフは現在、10億ドル以上の現金に加え、暗号資産や不動産などの資産を保護しようとしている。

管轄権争い

一方、バハマのライアン・ピンダー司法長官は、破産に関与したアメリカの弁護士によって何か不都合なことが起きていると主張している。「数百万ドルの弁護士費用やコンサルタント費用の見込みが、そうした人たちの法的戦略と過激な発言を後押ししている可能性がある」とピンダー長官は11月27日、新CEOのレイ氏の発言に触れて述べた。

FTXの弁護士は、バハマ政府が破産手続きをコントロールしようとしており、バンクマン・フリード前CEOと「共謀」しているとバハマ政府を非難。レイ氏は先週の公聴会で、顧客と債権者のために価値を最大化することが自分の目標と述べた。

裁判権をめぐる争いが国際的な問題に発展すれば、まだお金を取り戻せないでいる人たちにとっては悪いニュースとなり、高額の訴訟費用がさらに増えることになる。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:FTX Investors’ Loss Is Wall Street Lawyers’ Gain