BRC-20トークン、検閲すべきか?──開発者の意見は割れる

Ordinalsプロトコルを使って発行された大量のBRC-20トークンがビットコインネットワークを混雑させ、取引手数料を高騰させている。これを受けてビットコイン開発者たちの間ではオンチェーンの熱狂をどう鎮めるかについて議論が巻き起こっている。

存在にかかわる葛藤

議論が展開されているのは、ビットコイン開発についてのテーマを話し合うビットコイン開発者メーリングリスト。BRC-20発行の急増を抑えるために、より抜本的な措置を取るべきかどうかをめぐって意見が割れている。

取引手数料の高騰によって、アフリカのビットコインユーザーの中には、ステーブルコインなど、代わりの支払い方法の利用を余儀なくされる人も出ている。また大手暗号資産取引所バイナンス(Binance)は、ビットコインのレイヤー2スケーリングソリューションであるライトニング・ネットワークの導入に踏み出した。

ビットコインマイナーたちは思いがけない高収益を手にしているが、ビットコイン純粋主義者にとっては、存在の根幹に関わる葛藤を生んでいる。ビットコインはピア・ツー・ピア(P2P)決済ネットワークであると同時に、検閲から自由であるよう設計された。

「真のビットコイン取引がコスト上昇で締め出されている」と、開発者メーリングリストのメンバー、アリ・シェリーフ(Ali Sherief)氏は述べている。

「明らかに価値のないトークンが、本来の目的であるピア・ツー・ピアデジタル通貨としてのビットコインネットワークのスムーズな通常の利用を脅かしている」

市場に委ねるべきか?

シェリーフ氏は、ビットコイン改善提案(BIP)の起案と導入、あるいはビットコインネットワーク接続のための主要ソフトウェア「Bitcoin Core」の変更によってBRC-20トークンの影響を緩和することを提案している。

しかし、全員がその意見に同意しているわけではない。ロンドン・ビットコイン開発者ミートアップグループの中心的メンバー、マイケル・フォークソン(Michael Folkson)氏は、現状を維持すべきと考える。

「コンセンサス(合意)ルールは固定されたもので、それ以外は市場に委ねられている」とフォークソン氏は記している。

「このようなユースケースは気に入らないかもしれない。だが、モグラ叩きゲームを始めえば、1年後、あなたのユースケースに反対するグループが登場することをどうやって止めるのか?」

トークンの大量発行

Ordinalsプロトコルを使うとユーザーは、「サトシ」または「sat」と呼ばれるビットコインの最小単位にデータを記録できる。これによって、ユニークなNFTが作られる。

ツイッターユーザーのDomoは3月8日、Ordinalsプロトコルを使ってJavaScript Object Notation(JSON)と呼ばれるコードの断片をビットコインに記録し、膨大な数のファンジブル・トークンを発行した。供給量が1000兆個にのぼるものもあるが、その多くは実質的に無価値。

シェリーフ氏も、Domo自身が自らが発行したトークンを「無価値」と呼んだことに触れた。実際、Domoは「これらのトークンは無価値になるだろう。大量に発行してお金を無駄にしないで欲しい」とツイートしていた。

CoinDeskはDomoに、今でもBRC-20トークンが無価値と考えているかを質問したが、まだ返答はない。

時価総額10億ドル超え

すでに1万4300ものBRC-20トークンが発行され、なかには42万兆ものトークンが流通しているものもある。BRC-20トークン全体の時価総額は先週、10億ドル(約1350億円)に達した。

Domoがテスト用に作成し、BRC-20トークンの発行の仕組みを説明する以外に実用的な用途を持たない「ORDI」の価格は群を抜いている。当記事執筆時点、価格は7.90ドル(約1070円)、時価総額は1億6100万ドル(約209億円)。

熱狂的なトランザクションを受けて、シェリーフ氏をはじめ、一部の開発者はBRC-20トークンはスパムと批判。発行騒動を抑えるための方法を模索している。

「このメーリングリストに入っている人なら誰でも、この96時間でビットコインのメムプールに何が起こったかを知っているだろう。BRC-20などのサイドプロジェクトが大量に取引されていることが原因だ」(シェリーフ氏)

ビットコインのメムプール(メモリプールの略で、承認されていない取引を一時保管するデータベースを指す)は確かに混雑しており、承認されていない取引は一時、50万件近くにのぼった。ちなみに2022年のほとんどの期間において、承認待ちの取引数は5万件を下回る水準だった。

スパムフィルタ

ベテランのビットコイン開発者ルーク・ダッシャー(Luke Dashjr)氏は2月、Ordinalsの取引を検知して拒否する「Ordisrespector」と呼ばれるOrdinalsスパムパッチフィルタを開発。ダッシャー氏はシェリーフ氏の議論に加わり、彼らが「スパム」と呼ぶ問題のある取引を除外するための変更をBitcoin Coreに加えることを呼びかけた。

「何カ月も前に対策を取るべきだった。スパムフィルタは初日から、Bitcoin Coreの標準となるべきだった」とダッシャー氏は記した。

今のところBitcoinプロトコルやBitcoin Coreに変更が加えられることは決定していないため、BRC-20トークンの発行は続きそうだ。

「マイナーたちはこれらのトークン取引から何百万ドルもの利益をあげている」とベテランBitcoin Core開発者のピーター・トッド(Peter Todd)氏。「私も含め多くの人たちが、そのようなトークンをブロックしないノードを運用し続けるだろう」と続けた。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Among Bitcoin Developers, Debate Is Raging Over Whether to Censor Ordinals BRC-20s