2023年はビットコインETFの年になるか?

ビットコイン(BTC)ETF(上場投資信託)の待望の承認をめぐって、再び興奮が高まっている。今回、世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)がビットコインETFを申請したことで、暗号資産(仮想通貨)業界が初めてビットコインETFの販売を試みてからおよそ10年あまり、SEC(米証券取引委員会)はようやくビットコインETFを承認するのではないかとの期待が高まっている。

スポットETFへの期待

背景

2013年7月、キャメロン・ウィンクルボス(Cameron Winklevoss)氏とタイラー・ウィンクルボス(Tyler Winklevoss)氏がビットコインETFの申請を行った。それから11年、業界はいまだに、ビットコインETFの実現を待っている。

重要な理由

ビットコインETFが承認されれば、アメリカの幅広い層の個人投資家たちが、ウォレットを設定したり、ときに厄介な暗号資産取引所と取引したりする手間をかけずに、資産としてのビットコインへのエクスポージャーを手にすることができるようになる。さらに、数百万ドル規模のファミリーオフィスのようなプロの投資家も、規制を受け(したがって「安全」な)ビットコイン投資商品を利用できるようになる。ビットコインETFの承認を支持者たちが待ち望んでいるのはこうした理由からだ。

これまでとの違い

2年以上前、カナダのオンタリオ州証券取引委員会は北米で初めてビットコインETFを承認。アメリカでもまもなく承認されるのではないかとの期待が高まった。2021年には、SECが初のビットコイン先物ETFを承認し、似たような他のプロダクトの可能性が生まれた。

現在のところ、アメリカではまだ現物をベースにしたビットコインETFは実現していないが、数週間前のブラックロックの申請は、状況がついに変わる時が来るかもしれないことを示した。この数週間、アメリカではビットコインETFの新たな申請が6件もあった。市場はETFに対応できるほど十分に進化したのだろうか? 資産運用会社はETFは安全だとSECを納得させることができるのだろうか?

今回の申請の大きな違いは、申請した会社が(SECからの働きかけもあり)監視共有協定について多くの時間を費やしていることだ。ETFを申請した金融大手のすべてが、コインベース(Coinbase)を監視共有協定のパートナーに指定している。

関連記事:ブラックロックのビットコインETF、申請を再提出──コインベースを監視共有協定のパートナーとして明示

SECは過去にも監視共有協定の重要性を指摘している。2019年、ビットワイズ(Bitwise)からのビットコインETF申請を却下した際には112ページに及ぶ指示書を発表し、ビットコインは市場操作の可能性が非常に高いため、それを防止するために「原資産に関連する規制を受けた、かなりの規模の市場との監視共有協定」が必要と述べている。

問題は「規制を受けた、かなりの規模の市場」が何を指すのか、明確な定義がないこととブルームバーグ・インテリジェンス(Bloomberg Intelligence)のアナリストで、ビットコインETFの申請を何年も追っているジェームズ・セイファート(James Seyffart)氏は語る。

「これまでのところ、毎回のようにETFの申請審査は毎回期限ギリギリまで延期され、結局は却下されている。その過程で、SECがコメントを出すこともある。審査の一部は密室で行われる。(中略)今回もそのように審査が行われるのは間違いない」とセイファート氏は述べた。

「規制を受けた、かなりの規模の市場」とは

コインベースは紛れもなく、アメリカ最大の暗号資産取引所だ。CoinGeckoによると、第2位のライバルであるクラーケン(Kraken)と比較した場合、24時間の取引高は2倍以上。その大部分はビットコインによるもののようだ。

SEC自体も、コインベースに対する訴訟の中でコインベースが「世界最大の暗号資産取引プラットフォームの1つであり、アメリカ最大の取引プラットフォーム」と述べ、アメリカにおけるコインベースのポジションを認めている。

SECのコインベースに対する訴訟は、同社のビットコイン市場とは無関係であり、だからこそETFを申請した資産運用会社は、監視共有協定のパートナーとしてコインベースに白羽の矢を立てたのだろう。

問題は、SECがコインベースが規制を受けた、かなりの規模のビットコイン市場を運営していることに同意するかどうか、そしてそれが承認に必要かどうか。

昨年時点では、SECはビットコインに規制を受けた市場が存在すると考えていなかったようだ。具体的には、2022年4月にTeucriumのビットコイン先物ETFを承認した際、SECは脚注で「ビットコインの現物市場は現在『規制』されていない」と明記し、ビットコイン先物市場の監視共有協定が現物ETFには使えない理由を説明した。

一方、ブラックロックとブラックロックのETFを上場する予定のナスダックが提出した書類では、過去のETF却下の事例に触れつつ、そもそも規制を受けた、かなりの規模の市場が存在する必要はないと主張している。

「規制を受けた、かなりの規模の市場という評価基準は、SECがこの申請を承認するために、ビットコイン現物市場が規制されていることを求めておらず、先例では、スポット商品または通貨の原市場が規制を受けた市場であることは、実際には例外であることが明確になっている。これらのほとんど規制されていない通貨や商品市場は、SECの監督下にある市場のような保護を提供しないが、SECは一貫して、そのような商品が法律に適合しているかどうかを判断するために、基礎となる先物市場との監視共有協定に注目してきた」

つまりSECの「かなりの規模」という評価基準は、ビットコイン先物市場で十分なはずと、ブラックロックとナスダックは主張している。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Will 2023 Be the Year of the Bitcoin ETF?