G20、国際的な暗号資産ルール具体化を目指す
  • 世界の経済リーダーたちは非公開の会合で、各国が暗号資産(仮想通貨)を禁止することよりも、暗号資産規制に関する世界的な協調を求めた。
  • 今回の会合は、インドがG20議長国の任期を終えるにあたり、チャタムハウスルール(発言者を特定する情報を伏せることで自由な議論を促すルール)の下で開催された。

主要な経済当局者たちは、G20の会議中に行われた円卓会議で暗号資産規制における世界的な協調を求めた。

国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエバ(Kristalina Georgieva)専務理事は、暗号資産を水に例えて全面的な禁止に反対した。「一方から塞ごうとしても、穴を見つけて出てくる」。

同じ会合で、米財務省のジェイ・シャンボー(Jay Shambaugh)氏は、世界的な暗号資産ルールを作成してもこのセクターの惨事は正常化しないと述べた。現G20議長国であるインドが主催した円卓会議は、チャタムハウスルールの下で行われたため、メディアには非公開だった。

会合に出席したある人物はCoinDeskの取材に対して、共有された発言内容は、すでによく知られたものであり、これらの視点を学ぶことは、グローバルな暗号資産ルールに関するしっかりとした議論に寄与することができると述べた。

シャンボー氏とゲオルギエバ氏の事務所は、CoinDeskのコメントの求めに即座には応じなかった。

前述の発言は、インドの計画の一部、つまり暗号資産に関する独自の議長国覚書を提出することを妨げる要因となった。

覚書は、暗号資産規制のロードマップを反映し、その形成におけるインドの役割を評価することを意図していたと、この問題に詳しい2人の関係者は語った。現地の報道ではインドの意図は確認されたが、他のG20メンバーが変更を求めて反発した。

インドは現在、G20の議長国であり、G20の総体的な意見を代表しているため、インドが発表するものはすべてメンバーとの協議を経たものであるべきというのが他メンバーの主張だ。

インドが覚書を発表したのは8月1日のことで、内容をめぐる追加協議からほぼ2週間が経っていた。覚書は、暗号資産規制をめぐる世界的な協調に対するインドの提言を表明する公式文書であり、重要な意味を持つ。

統合文書

インドは議長国覚書の中で、IMFと金融安定理事会(FSB)が共同で作成する「統合文書」が8月末までに予定されていると発表した。

この文書は、暗号資産のグローバルなマクロ的影響に焦点を当て、インドの議長国覚書の勧告や他の機関の勧告が含まれる見込み。

インドが新興市場および発展途上国(Emerging Markets and Developing Economies:EMDE)特有のマクロ金融への影響やリスクに関する懸念を盛り込むよう働きかけたことが受け入れられ、インド政府関係者の成果と見なされる可能性が高いと、この件に詳しい関係者は語った。

インドは、9月上旬に開催される首脳会議において、世界的に受け入れられる暗号資産ルールの枠組みを推進するための取り組みを称えることを望んでおり、用意された統合文書はその取り組みの一例となるだろうと、この件に詳しい関係者は語った。

インドのナレンドラ・モディ首相がG20首脳サミットでの演説で、インドが議長国を務めた間に世界的な暗号資産ルールが策定されることをアピールする可能性さえある、と前述の関係者らは、この件に関して発言する権限がないため匿名を条件に語った。

FSBの期限

暗号資産向けのフレームワークを提言するFSBの文書には、そのフレームワークを実施するための事実上の期限が含まれていた。

「FSBは2025年末までに、(暗号資産とステーブルコインに関する)2つの勧告の国・地域レベルでの実施状況についてレビューを実施する」と同文書には記されている。

事実上、FSB加盟国は2025年末までに勧告を実施する個別の規則や法律を導入しなければならないことになる。

このことは、インドがそれまでに最初の暗号資産法案を提出することを意味するのだろうか? そうとは限らない。というのも、インドは暗号資産を監視下に置くための措置を講じており、それで十分と判断する可能性があるからだ。

「インドではすでにマネーロンダリング防止規則が導入され、暗号資産に対する税制が整備されている。他にも、関係省庁でWeb3を含めた計画が準備中だ」と関係者の1人は述べた。

禁止の可能性

インドにおける大きな疑問のひとつは、FSBの勧告を歓迎することが暗号資産を合法化し、禁止の可能性を排除することを意味するのかということだ。

G20メディアブリーフィングに出席したインド財務省高官の一人であるアジェイ・セス(Ajay Seth)氏は、G20の広範なアプローチは、加盟国が自国内で暗号資産を禁止することを排除するものではないと示唆し、「自国の状況に基づいてより厳格な対応を望む国や地域は、そうするべきだ」と述べた。

同じブリーフィングで、インド準備銀行(RBI)のシャクティカンタ・ダス(Shaktikanta Das)総裁は、「FSBの報告書は、個々の国や地域が望めば暗号資産を禁止する選択肢があることを認めている」と述べた。

RBIは、インドが暗号資産法制を導入するかどうかの意思決定者ではないが、金融法制を策定する上でおそらく最も重要な存在だ。モディ首相の党が議会で多数を占めていることから、その決定はモディ政権と財務省が行うことになる。「インドは現状を維持するか、法案を提出するかのどちらかを選ぶことができる。どちらにしても、インドはFSBの2025年末という期限に間に合わせる」と関係者の1人は言う。

「財務省は暗号資産の禁止を望んでいるかどうか、その立場を明らかにしていない。しかし、G20議長国として世界の暗号資産ルールを策定する役割を考えれば、RBIが暗号資産禁止を強く望んでいるにもかかわらず、暗号資産禁止の道を選択することはないだろう」

G20の審議中、RBIがFSBとIMFに書面で要求したことの1つは、統合文書を含む今後の報告書に「禁止」という言葉を含めることだったと関係者の1人は述べている。

「RBIは規制という言葉の後に『禁止を含む』という文言を入れたかったが、FSBは『規制の定義には禁止を含むさまざまなオプションが含まれるのだから、なぜ明記する必要があるのか』と答えた」と関係者の1人は説明した。

「しかし、禁止が世界的に受け入れられているわけではない。G20の暗号資産に関する円卓会議でもセミナーでも、禁止は支持されていない。実際、禁止はコストがかかり、効果がないというのが各国の圧倒的な意見だ」と続けた。

RBIはCoinDeskのコメントの求めに即座に回答してはいない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Poetra.RH / Shutterstock.com
|原文:G20 Set to Crystalize Global Crypto Rules as India Wraps Up Presidency