ルーブルとペソの暴落でゴールドは下落──ビットコインは存在感なし
  • 三菱UFJ銀行によると、ロシア・ルーブルとアルゼンチン・ペソの直近の暴落は、世界市場の亀裂を明らかにしたものだという。
  • それでも、アメリカ国債利回りとドルインデックスが上昇する中、ヘイブン(逃避先)とされる資産には依然として圧力がかかっている。

ビットコイン(BTC)やゴールドのようなセーフヘイブン(安全な避難場所)と考えられている資産は、世界市場に亀裂が入る兆候が、危機に陥った国の法定通貨のボラティリティという形で現れ始めているにもかかわらず、上昇の牽引力を集めるのに苦労している。

8月14日、ロシア・ルーブル(RUB)は1米ドル102円まで下落し、2022年3月以来の安値を記録した。この下落で年初来の累積損失は33%に達し、クレムリンのエネルギー収入の減少に対する投資家の怒りが浮き彫りになり、ロシア中央銀行は8.5%から12%への緊急利上げを余儀なくされた。

一方、アルゼンチンはすでに弱体化していたペソ(ARS)を18%切り下げ、8月11日の1ドル287円から350円まで下げた。ペソは今年98%下落している。

三菱UFJ銀行によると、ルーブルとペソの新たな下落は、世界の金融市場におけるストレスの初期兆候を表しているという。アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が昨年3月に利上げを開始して以来、いわゆる引き締めサイクルが世界市場で何かを壊すのではないかという懸念から、多くの人の投資がヘイブン資産と思われるものに偏っている

「ARSやRUBの下落が、より広い市場に直接波及することはないだろうが、利回りが上昇を続けるなか、米ドルの魅力が浮き彫りになっている。ほとんどの場合、弱いつながりに最初に『亀裂』が入るものであり、ARSとRUBが弱いつながりであることは確かだ」とEMEAおよび国際グローバル市場リサーチ責任者のデレク・ハルペニー(Derek Halpenny)氏は15日の顧客向けメモで述べている。

これまでのところ、亀裂の兆候とされるものはビットコインへのセーフヘイブン需要をほとんどもたらしておらず、期待を裏切っている。

ビットコインは、その有限な供給量から広くデジタルゴールドと見なされている時価総額トップの暗号資産(仮想通貨)だが、2万9000ドルを超えても元気がなく、数週間鈍い値動きが続いている。ビットコインは2021年のトルコ通貨危機の際、安全な逃避先として好まれた。一方、ゴールドは15日に1オンスあたり1896ドルという7週間ぶりの安値をつけ、報道時点では1905ドル前後で取引されている。

おそらく、今回のRUBとARSの下落の主な要因の一つである、名目およびインフレ調整後のアメリカ国債利回りの継続的な硬化と、ドルインデックスの上昇が、ビットコインとゴールドの上昇を抑えているのだろう。

米10年物国債の実質利回り(インフレ調整後利回り)は1.83%まで上昇し、2009年以来の高水準となり、ゴールドやビットコインのようなゼロ利回り資産への投資の魅力を削いでいる。10年債の名目利回りは4%以上の足場を固めている。

ハルペニー氏によれば、利回りがさらに上昇すれば、より広範な市場に影響を及ぼす可能性があるという。

ハルペニー氏は「アメリカの利回りが今後も上昇を続けるようであれば、さらなる「亀裂」が生じ、より広範な市場に大きな影響を与える可能性がある」と付け加えた。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Vapid, Gold Weakens as Russian Ruble and Argentinian Peso Crash