ゲームをきっかけに、あらゆるデジタルコンテンツでセカンダリーマーケットを実現したい

多くのIPと連携して、魅力的なゲームを開発しているドリコム。2020年に伝説的なRPG「Wizardry」の商標権などを取得し、今回、そのIPを使ったブロックチェーンゲーム『Eternal Crypt – Wizardry BC -』で使用できるNFTコレクションを、コインチェックの「Coincheck INO」の第1号案件として販売することを発表した。

ドリコム代表取締役社長の内藤裕紀氏にブロックチェーンゲームにかける思い、INOによるNFT販売の狙いなどを、コインチェック副社長執行役員 暗号資産事業本部長の井坂友之氏とともに聞いた。


INOという新しい手法を採用した狙いは?

──「東京ゲームショウ」前後に各社からいろいろなブロックチェーンゲームが登場すると言われています。今回のゲームはどういう特徴、差別化ポイントがあるのでしょうか。

内藤:1つ目としては、モバイルゲームの立ち上がりのときもそうでしたが、まずオリジナルIPを使ったゲームがいくつか登場し、徐々にユーザーが増えて、認知が広がると人気IPを使ったゲームが登場します。過去、ゲーム業界ではそうした動きが続いています。IPものがマーケットに入ってくる前に、まずは自社IPでやってみて、ブロックチェーンゲームについてのノウハウを身につけていきたいと考えています。

2つ目としては、ブロックチェーンゲームはどれだけサステナブルなものにできるかが重要だと考えています。のちほど、詳しくお話できればと思っていますが、新規ユーザーを拡大し続けていくようなものはサステナブルに続けていくことが難しい。そこをいかにクリアしていくかを盛り込んで作っています。

井坂:「Wizardry(ウィザードリィ)」を使うという話は最初から決まっていたのですか?

内藤:Wizardryも含めていくつか検討しましたが、他社IPを使おうとすると、まだブロックチェーンゲームは事例がないなどのハードルがありました。他社IPで展開できた方が実績としては良いとの考えもありましたが、まずは自社IPでやることになりました。

特にこの1年ぐらいはクリプト・ウィンターと言われ、ブロックチェーンや暗号資産に対してネガティブなイメージを与える事件もあり、IP各社は慎重になられています。ただし今後、マーケットが拡大するには、IPとの掛け算が不可欠。そのためのノウハウを身につけていくことを今回の取り組みの中でやっていきたいと考えています。

──今回、イニシャルNFTオファリング(INO)という新しい手法を採用されますが、そうしたアイデアはどこから生まれてきたのでしょうか。

内藤:何をもって「INO」と呼ぶかですが、例えばPFP型のNFTも一括で販売している事例はありますので、それもINOと呼べると思います。

今回は、NFTを先行して販売することをブロックチェーンゲームになぜ取り入れたのかという話だと思いますが、今年の3月に「GGGGG」というタイトルをリリースしています。こちらはトークンは使っておらず、NFTのみを使ったゲームで、NFTをフリーで配布したので、ユーザーはNFTを購入したわけではないのですが、NFTホルダーとNFTを保有していないユーザーの数値がものすごく違っています。継続率も違うし、プレイ回数も違う、課金率は大きく違っていて、数値によっては10倍ぐらい高い状態になっています。

もともと「GGGGG」はWeb2的なゲームとWeb3をうまく融合できないかという仮説のもとで、フリーのNFTだけを取り入れてみました。結果的には、NFTホルダーとノンホルダーの間にはかなりの距離があって、まだ融合には早かったというところです。

両方が混在している状況で数値を改善していくことは、ユーザーの動きも数値もあまりに違いすぎるのでかなり難しい。なので今回はどういった形で、コアなユーザーに先行してゲームをプレイしてもらうかを考えました。通常、今のブロックチェーンゲームは、基盤となるチェーンのトークンを購入し、それをゲーム用のトークンに替え、さらにNFTを購入するところからスタートしますが、難易度がかなり高くなります。最初にコアな、よくわかっているユーザーにNFTをベースに参加してもらおうというアイデアが今回のINOのきっかけになっています。

NFTを保有するコアユーザーとそれ以外のユーザーの大きな違い

──INOでまずコアユーザーを集めるということですね。

内藤:そのために、先行してNFTを購入していただいたユーザーに、しっかりと価値を提供できる設計にすることが重要だと考えており、また先行プレイをしたいと考えてくださるコアユーザー層でもあることから、INOで販売されるNFTにはトークン全体の20%が割り当てられ、ゲームリリース前に先行してトークンを保有していただくような設計にしています。

またINOという形を取ることで、ある意味、リリースを2段階に分けています。通常、Web2のゲームは、クローズドβテストやオープンβテストを行いますが、ブロックチェーンゲームはテストが難しい。βテストでは課金をしないので、継続率などはある程度わかりますが、課金率やARPU(ユーザー1人あたりの収益)は実際にやってみないとわからない面があります。それがブロックチェーンゲームでは一層顕著になると考えています。「GGGGG」でNFTを持っている人と持っていない人で行動が大きく変わったように、NFTを購入したことによって、状況は大きく変わるはずなので、NFTを持っていない状況でテストを行っても意味はない。それでリリースを2段階に分けている面もあります。

井坂:INOでコアユーザーのコミュニティを形成するという意味合いが大きいのですね。

内藤:「GGGGG」も先にNFTを配布して、コミュニティを作ってからゲームをリリースしたところ、NFT保有者のKPIが非常に良かった。数字で全部出ています。

井坂:NFTホルダーとノンホルダーで、KPIの数値はどのくらい違ったのでしょうか。

内藤:倍違うようなイメージです。継続率が全く違うユーザーが存在するような状況になっています。そうしたユーザーさんがゲームを広めてくれるような状況も生まれ、新しいユーザーがゲームを勧めた人とコミュニティで情報交換して、一緒にプレイすることで継続率が上がっていく状況にもなっています。今回、そうした環境をどうやって作っていくかを考えています。

逆にCoincheckとして、今後INOをブロックチェーンゲームやそれ以外で進めていくときに期待していることはどのようなことですか。

井坂:Web3業界は、いろいろなところでいろいろなものが生まれて、全体が大きくなっています。そうした動きを取引所としてサポートすることが非常に重要だと考えています。INO、IEOなど、事業者の方々がNFTや暗号資産を活用した取り組みをされるときに、我々は日本で最大級の暗号資産・NFTユーザーを抱えているので、そうした人たちの熱源をうまくユーザーに伝播させていきたい。今回のINOを活用してコミュニティを作ることはとても良い事例だと思っています。これまでのゲームの作り方とは、コミュニティの作り方・巻き込み方が違うと思っています。

ゲームの作り手としては、ユーザーを巻き込むことには怖い面もあると思います。β状態で公開するようなところがあります。不安はなかったのでしょうか。

内藤:INOという形を取ることで配布するNFTの数が決まっていて、一定の人数しか入ってこなくなっています。ある程度制限を設けてテストするというニュアンスも含んでいます。参加してくれたら、きちんとメリットがありますという設計をしていることで、ネガティブなコミュニティにならないようにしたいと思っています。

井坂:当社にとっても、INOの第1号案件になりますので、一緒に模索しながら進めていきたい。このやり方がうまく定着するとゲームはもちろん、ゲーム以外の分野でも、コミュニティをどう作るかというところにWeb3のパワーを活用できるのではないかと考えています。

内藤:日本はNFTのルールが比較的明確に整備されているので、今後、IPホルダーが事業を展開していく際にもルールが明確なものの方が扱いやすい面があると考えて、NFTを中心とした設計にしています。

──従来のゲームでもユーザーコミュニティを意識されていたのですか。

内藤:もちろんです。X(旧ツイッター)などを中心としてユーザーコミュニティを作っていました。従来のWeb2的なゲームのコミュニティは、基本的にはゲーム運営者とユーザーの1対Nのコミュニケーションになっていました。一方、ブロックチェーンゲームはユーザー同士のN対Nのコミュニケーションが行われています。情報交換を従来よりも密におこなっていくことで、お互いにゲームをうまく進めていくなど、コミュニケーションの方法が変わっています。

──コミュニケーションの違いは、いつ頃から意識されたのですか。

内藤:我々自身がブロックチェーンゲームの検討を始めて、最初、2017年頃にチームを作ってやったときはそこまでコミュニティの存在を感じなかったのですが、やはりAxie Infinity(アクシー・インフィニティ)やSTEPN(ステップン)が登場して、コミュニティの中でのAMA(Ask Me Anything)を中心として、1対Nのコミュニケーションが行われ、その後にユーザー同士でのコミュニケーションも盛り上がっている様子を見てきました。1年半ぐらい前だとNFTが盛り上がってきて、僕自身もコミュニティに参加して、体感してきたこともあります。

自分たちでもNFTを発行して、コミュニティを作ってみました。「運営を手伝います」という人が出てきたら、その人に権限を少しずつ渡したりしながら、運営してみました。

セカンダリーマーケットの重要性

──今回、「サステナブルで手軽に遊べるモデル」とアピールされていますが、他とのゲームの違いは具体的にどういうところにありますか。

内藤:過去うまく行っていたAxieやSTEPNを見ると、ユーザーがゲームを始めるために必要なNFTは、基本的にはセカンダリーマーケットを通して、他のユーザーから購入していました。運営側には取引の一部が手数料として入り、既存ユーザーは新規ユーザーにNFTを販売して収益を上げるというサイクルができていた。

ただし、新規ユーザーが入ってきて、NFTを購入するということが回り続けない限り、手数料が発生しないので運営が続きません。サステナブルかどうかは、Web2のゲームもWeb3のゲームも同じで、運営のための収益がしっかり入ってくることと、ユーザーがついてくることが必要です。この2つがないと成立しませんが、どうしても新規ユーザーを獲得し続けることになり、かなり厳しい状況になります。

特に今後、他社のIPを使って展開していくときには、IP自体がユーザーを抱えていて、いわばそこがMAX(上限)となり、その中でブロックチェーンゲームを展開していくと考えると、新規ユーザーを獲得し続けることは難しい。そこで、運営側がNFTを販売するというこれまでのWeb2に近い形と、ユーザー同士が販売するセカンダリーマーケットの両方を組み合わせた設計にしています。これによって新規ユーザーを拡大し続けなくても運営が成り立っていくような設計にしています。

なぜ、我々がブロックチェーンゲームに興味を持ち、会社としてやっていこうと考えたかという話と連動しますが、従来のゲームはユーザーがアイテムを購入しても、セカンダリーで売買できません。プライマリーしか存在しない。でもリアルの世界で物理的にゲームを購入すると、プライマリーとセカンダリーがあります。ネット上では多くのゲームソフトが売買されています。これをデジタルな世界でも実現したい。セカンダリーがあるゲームを新しいゲーム体験として実現するために、両方を最初から設計していこうという話は結構早い段階からありました。

井坂:パッケージゲームは、やり切ったらセカンダリーで売るという流れがあります。ユーザーとしては良い思い出・良い体験としてゲームを終えることができるので、セカンダリーマーケットが存在することは、IPの観点でも一定良いことだと思います。

内藤:セカンダリーが実現できることが、ブロックチェーンゲームのメリットではないかというひとつの仮説です。今までのブロックチェーンゲームは金融寄りな面があったと思いますが、我々はゲーム側から発想していて、ゲームの今までの課題は何か、ブロックチェーンゲームならどう解決できるかを考えています。

人気のカードゲームはセカンダリーが成立しているから、プライマリーで新しいカードを販売して行ってもサイクルが活発に回っている。セカンダリーができると、プライマリーが盛り上がります。両方を設計していくことがゲームでもできれば、新しい世界が広がるのではないかと考えています。

新しいテクノロジーで新しい体験を提供

『Eternal Crypt – Wizardry BC -』は、シンプルで手軽に遊べるクリッカーゲームとRPGの戦略的なプレイスタイルを掛け合わせたゲームシステムが特徴。

──今後ブロックチェーンゲームは、現状のモバイルゲームを置き換えていくようなイメージでしょうか。あくまでも1つのカテゴリーでしょうか。

内藤:大事なことはユーザーがブロックチェーンを使っているとか、トークンを購入していることを意識しないところに、どのタイミングで行けるかだと思っています。そうすると、ブロックチェーンゲームかモバイルゲームかみたいな話にはなりません。モバイルゲームにおいて10年以上前のことになるかと思いますが、一部のゲームでは、オンライン掲示板でアイテムの売買が活発に行われていた記憶があります。掲示板のやりとりを見ていると、ある種のコミュニティのようになっていました。例えば、フリーマーケットに出店している人は、ただ儲けたいだけではなくて、フリーマーケットに出店して、買い手とのコミュニケーションを楽しむようなところがあります。そういうことがゲームでも成立していて、かなり大きなコミュニティができていたと思っています。

今回、その楽しさが実現できると、ブロックチェーンゲームかモバイルゲームかではなくて、売買すること自体を楽しみとするような人たちも現れてくると考えています。ゲームの中で、魔王を倒してお姫様を助けることはもういいという人が出てきて、武器屋として頑張ろうとか、鍛冶屋として頑張ろうというプレイヤーが出てくる。そういったフェーズになると、もうブロックチェーンゲームかモバイルゲームかではなくて、セカンダリーの機能を取り入れているかどうかが重要になります。

セカンダリーでの売買は、もしかしたら法定通貨での売買が実現しているかもしれないし、トークンかもしれないけれど、それも手段でしかなく、大切なことはセカンダリーマーケットを取り入れたゲームがモバイルゲームの次の未来ではないかと考えていることです。

井坂:確かにあのときは、プライマリーだけでなく一般のオークションサイトを使ったセカンダリーマーケットが存在していたように思います。オークションサービスを介してコミュニティのようなものが生まれていて、カードなどが売買されて、売買やSNSで行われていたやり取り自体もユーザーの方々にとってはゲームがもたらす体験の一部だったように思います。

内藤:そうした楽しみ方をしているユーザーの方々の中には、ゲームをプレイしている時間と、コミュニティで売買している時間のどちらが多いかわからないぐらい、セカンダリーに時間を使っているような方も存在していたと思います。それだけ、コミュニティ、コミュニケーションにも没頭するほどの楽しみがあったということではないでしょうか。今、モバイルゲーム市場が成熟してきて、横ばいになってきている中で新しい体験、じつは古い体験ですが、それを新しいテクノロジーによって新しい体験として提供できたら面白いと考えています。

ただ現状は、基盤のチェーンのトークンを購入して、次にブロックチェーンゲーム用のトークンを買って、NFTを買ってとハードルがまだまだあります。この時点でもう90%以上、もしかすると99%くらいが離脱してしまうので、できるだけハードルを低くしていきたい。

また逆に聞きたいのですが、Coincheckとしては、こうしたハードルはどう考えているのですか。

コインチェック・井坂氏

井坂:課題はやはり、さきほど話に出たように、今はまだ、トークンを購入して、誰かに送ったり、受け取ったりするハードルが高いことです。ゲームを始める前にハードルがたくさんあります。そこを取引所としての機能を開放していくことで解決していきたいと、個人的には考えています。暗号資産を購入する場合でも、わざわざ取引所に来て、価格変動のリスクを考えながら購入するのではなく、例えば、API連携を行うことでゲーム内で購入できるようにすることは、可能ではないかと考えています。金融でいうとバンク・アズ・ア・サービスという概念がありますが、取引所の機能を開放していって、クリエイターにとってゲームを作りやすい環境を提供していくことが重要だと考えています。ただまだ金融の考え方を前提にいろいろやっていますので、ゲームの考え方など、異業種と連携するためにはもう少し歩み寄りが必要です。そこを実現していきたい。

内藤:取引所が扱うトークンの数が増えれば、トランザクションの回数を減らすことができます。今回、我々はポリゴン(MATIC)を使っていますが、ポリゴンが上場されていないときには、最初にビットコイン(BTC)をどこかでポリゴンに変える必要がありました。それをブロックチェーンゲームのトークンに変えていた。上場しているトークンが増えれば、この回数を減らすことができます。最終的にはCoincheck上でブロックチェーンゲームのトークンも売買できるとありがたい。そういう世界は実現するのでしょうか。

井坂:すべてではないにせよ、基本的にはそうしたいと思っています。主要通貨、直近ではポリゴン(MATIC)を上場しましたが、クリエイターが使うようなトークンは、クリエイターや開発者を支援するという意味で扱っていきたいです。

もう1つは、IEOももっと活発に行えるようにしていきたい。業界団体でもチェックフローを含めて、手続きの短縮に取り組んでいます。ここももっと告知していきたい。ゲームの独自トークンなどもIEOすることによって、ユーザーがストレスなくゲームができる環境を整えていきたいと思っています。

内藤:IEOは大規模に資金を調達するので、審査が不可欠だと思いますが、基軸となる暗号資産とゲームの独自トークンの交換だけであれば、ユーザーのリスクも小さくなります。それが実現できるだけでもかなり変わってくると思います。現状ではブロックチェーンゲーム用のトークンを手に入れるまでにハードルがあり、基軸通貨に替えるときにもハードルがあります。この部分だけでもハードルが下がれば、もっと参加しやすくなるはずです。今回のゲームの独自トークンも、どこかのタイミングで上場を考えています。

あらゆるデジタルコンテンツにセカンダリーマーケットの可能性を広げたい

──御社は「中期的に総合エンターテイメント企業を目指す」とおっしゃっていますが、その中でブロックチェーンゲームはどのような役割を担うのでしょうか。

内藤:ブロックチェーンゲーム、あるいはブロックチェーンでいうと新しいテクノロジーはいろいろな業界の中でも、特にゲーム業界で早い段階から使われる傾向があります。今回、我々がブロックチェーンゲームでやりたいことはすでにお話したように、セカンダリーマーケットを作ることですが、ゲームにとどまらず、すべてのデジタルコンテンツに対してセカンダリーマーケットができていった方が良いと考えています。

音楽、漫画、動画……、先行するものがブロックチェーンゲームだと思っています。今、漫画やWebノベルなどいろいろなものを始めていますが、ここにもセカンダリーマーケットを作って、クリエイターにとっても、企業にとっても、ユーザーにとっても、全員がハッピーになる世界を模索していきたい。

井坂:何らかの型が具体的にできあがると、いろいろなIPホルダーも参加しやすくなり、さらにマーケットも大きくなっていきます。

内藤:今、漫画はデジタルで買っても、物理的に買っても値段は同じです。そしてリアルの方ではセカンダリーで売買が盛んに行われているけれど、クリエイターにも、企業にもまったく還元されない。ある意味、望まれていない世界になっています。ですが、ブロックチェーンを使えば、クリエイターにきちんと二次手数料が還元される設計が可能です。みんながハッピーなものができないか、今後も模索していきたい。

井坂:一例を挙げると、クレーンゲームもIPを活用した景品がセカンダリーマーケットで流通するという循環が生まれて、マーケット全体が大きくなっています。それをデジタルでも、という考え方は可能性が広がります。プライマリーマーケットの成長をさらに後押しするようなセカンダリーマーケットを、Web3の技術を使ってデザインしていけたらよいですね。

内藤:近いところで考えると、音楽業界はカラオケというセカンダリーマーケットによって、作曲家などの関係者に収益が入り続ける構造ができています。プライマリーとセカンダリーが両立しています。なのでゲームにとどまらず、デジタルコンテンツ全般に可能性があると考えています。

エンターテインメント企業として、ブロックチェーンとどう向き合うかということをこの6年くらい考えてきました。2017年、18年頃に一度ブロックチェーンゲームを作ってみたのですが、マーケットが低迷する中でリリースを諦めました。

さらにルールもグレーな部分が明確になってきて、この2年ぐらい、ずっと法律事務所や監査法人とやり取りしてきたのですがようやく何ができるか明確になってきました。そうした紆余曲折を経て、我々はもちろん、業界全体としても取り組みが進み、上場企業などでもブロックチェーンゲームがリリースできる環境が整ってきたと感じています。

|インタビュー・文:増田隆幸
|写真:小此木愛里