カードで遊んだワクワクをブロックチェーン上に再現、新しいユーザー層を開拓した「資産性ミリオンアーサー」の秘密:スクウェア・エニックスの開発プロデューサー、畑 圭輔氏インタビュー

株式会社スクウェア・エニックスが手がけるブロックチェーンゲーム「資産性ミリオンアーサー」は、NFTのデジタルシールを作ったり、集めたりするゲーム。だが「寿司」「パンツ」「おまんじゅう」というユニークな名称や、少額から始められる手軽さで人気を集めている。同社ブロックチェーン・エンタテインメント事業部 事業部長で「資産性ミリオンアーサー」の開発プロデューサー、畑 圭輔氏に開発の狙いや運営のポイントについて聞いた。


1日5分なら遊べるという観点

公式ウェブサイト

──まず「資産性ミリオンアーサー」とは、どのような特徴があるのでしょうか。

:「資産性ミリオンアーサー」は、いわゆる「ポイ活」のような考え方を取り入れて設計しています。既存のゲームユーザーだけではなく、ゲームをこれまでやってこなかった方、ゲームとは縁遠い方が1日5分、10分ぐらいなら遊べるという観点からユーザーとなっています。実際リリースしてから、従来のゲーマーではない人たちが私のSNSをフォローしてくださり、コミュニケーションしています。もちろんNFTゲームなので、やや投機目的な人たちや既存のゲーマーもいます。そこに新しい層が加わっているのが「資産性ミリオンアーサー」です。面白い現象だと思います。

当然、ゲームに詳しくない人たちはゲームの進め方がよくわからない。それをSNSでつぶやくと、すでに遊んでいる古参のユーザーが返信をして、こういうふうに遊びますとか、参考になるツイートがあるとか、こんなブログを書きましたなどとホスピタリティあふれる対応をしています。

むしろそうしたコミュニケーションやコミュニティを活かしたゲームにしようということで、他のゲームではあまりやらないような施策を常に考えるようにしています。

──コミュニケーションやコミュニティを活かしたゲームとは、具体的にはどういう仕組みですか。

畑:例えば「メガししゃもグミまつり」というイベントがあります。これは名称を聞いただけでは、特に新しいユーザーには内容がよくわからないところがポイントです。「わからない」とSNSで発信すると、古参のユーザーが反応して、内容やポイントを説明してくれています。本当に皆さんが親切心で動いてくれていることが我々もとても心地良い。

──謎を残しておくことで、ユーザーさんのコミュニケーションを活性化している。

畑:攻略サイトを作って欲しいというニーズもありますが、それだと出来あがったコンテンツを参照してくださいという話になってしまう。そういうプロセス自体が嫌な人もいます。

一方で、攻略方法をわかりやすく、かみ砕いて説明してくれる人たちがこのゲームの中には存在していて、新規ユーザーに自ら説明してくれていることは新しい動きだと思います。今の時代、ゲームをプレイするモチベーションもかなり変わってきています。自分だけでプレイしているのではないという感覚の大切さは、こうしたWeb3事業を通してノウハウとして蓄積されてきている印象です。

ゲームに対するモチベーションの変化

──ゲームに対するモチベーションが変わってきているとはどういうことでしょうか。

:世の中はコンテンツの供給過多になりつつあり、それに伴い、ゲームをプレイする時間が少なくなっています。以前は電車の中でスマホゲームをプレイしている人をよく見かけましたが、最近は動画コンテンツとか、SNSとか、いろいろなコンテンツが増えた結果、ゲームに割く時間が減ってきている。そもそもゲームは何のためにプレイするのかという定義から改めて見直していかなくてはいけない部分もある。

何かのきっかけとか、こういう人たちがいるからプレイするというような新しいムーブメントが生まれていると思っています。新しいモチベーションを生み出していけるようなムーブメントを感じられるところが、今、この事業をやっていて非常に面白い。

「資産性ミリオンアーサー」ではTwitterスペースなどの機能を使ったユーザー同士の対話も盛んで、開発運営サイドとしてもそうした活発なコミュニケーションは意識しています。私たちも、ユーザーが何を考えてこのゲームを盛り上げようとしているのか理解したうえで次のコンテンツを仕掛けたい。制作サイドの仕様に基づいてコンテンツを出すだけではなく、ある程度の柔軟性を持たせておいて、リリースしてからかじ取りができることが重要になってきています。コミュニティ・ドリブンのコンテンツならではの特徴だと思います。

──開発と運営が一体化しているようなイメージですね。

:一方で「今回のイベントがうまくいかなかったらミリアサは失速するだろう」ということを発信する人もいて、従来ならネガティブな意見には触れないでおくことが一般的でしたが、私はあえて「失敗しても、日々改善していきます」という意思表示を行います。そうなると、それを見て「あんな風にツイートしたけれど、万一、盛り下がったとしてもずっとプレイします」などと気持ちを返してくれるユーザーもいます。ポジティブな意見だけをピックアップするのではなく、ネガティブな声も含めてユーザーの言葉をしっかり受け止めて、我々がどう考えているかを発信していくことが、Web3ビジネスやデジタル資産を扱う側の責任と感じています。

「資産性ミリオンアーサー」の場合、建設的で具体的な意見を出してくれるユーザーがとても多い。カードは資産なので、価値が高くなる方がうれしい。ポジティブにどうするべきかを常に考えている。ある意味、運営側みたいな印象もあります。

従来のスマホゲームとの違いは?

──ブロックチェーンゲームはまだ黎明期と言えますが、従来のスマホゲームとは違ってきているのでしょうか。

:かなり違います。もちろん投機目的な人たちは声も大きいですが、運営に対して具体的にアクションをするかというと実はそうでもない。トークンやNFTの価値には非常に敏感でウォッチしているけれど、運営は運営に任せるというスタンスです。

一方で、従来とは違うタイプのユーザーたちが、いろいろ提案してアクションを起こしてくれる。そうすると投機目的の人たちも、このユーザーとうまくコミュニケーションしていけば、ゲームがより盛り上がるのではないかと考え始めて、積極的にコミュニケーションしていくという動きもあります。

──海外のNFTプロジェクトもコミュニティを重視していますが、あちらはいわば高級志向。一方で「資産性ミリオンアーサー」は、毎日、気軽に遊べることがコンセプト。海外のコミュニティづくりなどで参考にする部分はありますか。

畑:昨年夏に「NFT.NYC」に行き、有名プロジェクトのオフライン・イベントを体験しました。それらを参考にした部分はもちろんありますが、「資産性ミリオンアーサー」は、大部分が「自分はこれをやりたい」という思いで設計したのでそれを貫きました。「デジタルのシールなんて本当に成立するのか?」「誰もプレイしない」などと言われた時期もありましたが、信念をぶらしてしまうとやってきたことがゼロになってしまう。継続してやり切ってみたら、ユーザーが増えてきたという側面もあります。理解してくれる人たちを巻き込む作り方をかなり意識してきました。

流動的に捉えながら進める難しさ

──最初に描いていたグランドデザインからすると、何%ぐらい完成したイメージでしょう。

畑:70%ぐらいです。2年前ぐらいに会社に提案した「フィジカルなカード体験をデジタルシールで実現したい」というコンセプトをほぼ実現できた。その後のロードマップはある程度完成しているので、その投入時期を議論し始めているところです。

ただし、ロードマップを描いていますが、コミュニティが関わってくると難しくなると感じています。もっと流動的に捉えながら進めなければいけない点が、Web3ビジネスにおいて非常に難しいところです。

いわゆるソーシャルゲームでは、コンテンツがインフレ傾向になり、ユーザーのコンテンツ消費を鈍化させるような施策を取ることもありますが、インフレするコンテンツはどこかで終わりが見えてしまう。Web3に関しては「インフレしない設計が大切」と考えています。デジタル資産なので、しばらくゲームから離れていて、半年後に再び遊び始めたら、持っているシールの価値が上がっていたというようなことが起きるとワクワクする。そういうふうにしていきたい。

第1弾のシールは、500円で販売しましたが今は5〜6倍、ものによっては10倍以上、100倍以上になっているシールもあります。そこは我々も予測できない部分。ただし今、一般的にはトレーディングカードの高騰が問題にもなっているので、その方向にあまり行き過ぎてはいけないとも考えています。

ゲームで遊ぶために何十万円も出さないといけない状況は本末転倒です。新しいユーザーには新しいシリーズのカードを提供して、それを買っていただいて、常に遊べるようにしたい。バランスが非常に重要です。

──カードが高騰しすぎると、参入が難しくなり、新規ユーザーが少なくなってコミュニティも盛り上がらなくなってしまいます。

:いろいろなユーザー、いろいろな年齢層の人たちが遊べることは「資産性ミリオンアーサー」が狙っていることです。シールというコンセプトや売買できるという部分などに興味関心を持ってプレイしてくださる人もいらっしゃれば、以前からシールを手作りしている人たちがデジタルシールも面白そうと「資産性ミリオンアーサー」をプレイしてくれているケースも徐々にですが増えてきました。

まだ新しい技術なので、どうしても怪しいイメージは残っています。「ポンジ・スキーム」などと呼ぶ人もいるので、そのような誤解を招かないように気をつけています。今のブロックチェーンゲーム、NFTゲームは、よく「原資回収」とか「稼げないといけない」と言われます。ですが、稼げるかもしれないけれど、それが目的ではないと強調しています。

ユーザーも「このジュースは、ミリアサで100円稼いで、コンビニでLine Payで支払って買いました」とか「シールが売れたので、カフェでちょっとリッチなドリンクを買いました」などと報告してくれます。自分が楽しく遊んだ結果、ジュース1本を手に入れましたみたいなストーリーなどでイメージを払拭していきたいです。

コミュニティを重視した新作「SYMBIOGENESIS」

──非常にユニークですね。「資産性ミリオンアーサー」とは別の方向の新作もあるとお聞きしています。

:「SYMBIOGENESIS(シンビオジェネシス)」は、Web3にどっぷり漬かりたいユーザー向けに作り込んでいるコンテンツです。「資産性ミリオンアーサー」と比べると、UI・UX的にハードルは高め。Web3コミュニティを非常に重要視した設計にしています。例えば、キャラクターNFTを保有することで読める物語があり、手に入れたキャラクターを「レプリカ」という行為で複製し、マーケットを通じて他のユーザーの手に渡る仕組みも用意されています。

キャラクターNFTを手に入れてストーリーを読んだ人たちがどういうふうに考察するか、自分が持っているキャラクターやストーリーという情報をどう他のプレイヤーに分配するかも新しいゲームサイクルとして取り組んでいます。何が起こるか本当にわからない。逆にわからないからやってみる価値があると考えて立ち上げているプロジェクトです。

例えば、最近、「トレジャーハンティング」というイベントを実施しました。マップの中から宝を見つけるのですが、ノーヒントでスタートして、少しずつヒントを出していきました。

皆がマップの中を探し回っているときに、ある段階でディスコードに答えを投稿した人がいました。我々運営サイドの人間ではありません。皆、その場所に群がったのですが、その後で、「そもそもなぜここがゴールなのだろう」とか「どうしてあの人は答えがわかったのだろう」いう考察が始まったりします。プレイだけでなく、そうした考察もコミュニティで楽しむことができます。

──そうした「Web3らしさ」は、多くの人に伝わっている印象ですか。

畑:まだ難しい。「SYMBIOGENESIS」は、独占と分配という明確なコンセプトで作っていますが、ゲームの進め方がわからないという意見も寄せられています。ライトユーザーからすると、先ほどの「トレジャーハンティング」も、答えを探し出して、NFTをゲットするイベントにしか映らない。ゲットしたら、もう遊ぶことがなくなってしまう。でもWeb3ユーザーは、ハンティングに関する考察が楽しくて、NFTはあくまでプロセスに過ぎない。なぜここに答えが設定されたのかを紐解き、壮大な世界観を探っていくところに面白さを感じてくれています。

ワクワク感を持ち続けたい

──スクエア・エニックスとしては、Web3ビジネスはやはりチャレンジなのでしょうか。

:大きなチャレンジです。R&D的要素が非常に強いことは経営層とも話をしています。私は当社のスマートフォン向けの最初のタイトルを作りました。iPodが出た時に、これは次のゲームチェンジャーだと感じて、毎年いくつも買っていました。ゲームを載せられるとなった瞬間にもうワクワクしかなくて、自分がやりたいと手をあげました。

──そうしたモチベーションは、どういうところから生まれてくるのでしょうか。

:仕事が趣味になり過ぎていて、常に新しいことを考えていたい。ゲーム業界を見ても、ブロックチェーンゲーム、NFTゲームはまだ様子見の人が多いです。そうではない方向にムーブメントを起こしたい。子どもの頃にカードで遊んだワクワク感を大人になっても持ち続けたいと思っています。

「資産性ミリオンアーサー」で遊んだことで、物理的なシールに興味を持ってくれたユーザーもいて、そういう話を聞くと非常にうれしく思います。

──私はゲーム好き、カード好きなので、非常に共感してしまったのですが、ハードルがあるとすればどういったところでしょうか。

:よく言われるのは、ウォレットです。ゲームを遊ぶ前に、まずウォレットを作ってくださいというプロセスになっていることが多くて、そこがうまく行っていません。

例えば、買い物をした時に「ポイントカードをお持ちですか?」と言われることは、ある意味、当たり前の光景になっています。ウォレットを作ることも、違和感がなくなるタイミングがどこかで来るはずですが、今は違和感しか残らない。ウォレットを作らなくても、先に遊べた方がいいと考えています。

昨日もTwitterスペースであるユーザーがプレイ方法を教えていました。「まず、おすしを取りに行きます」「次にパンツをつくります」「パンツを作ったら、池に持っていきます」「池にパンツを入れたら、その数だけシールができます」と。

初めて聞く人は、訳がわからないでしょうけど、その会話内容自体が面白い。ウォレットという言葉は出てきません。よくわからないけれど面白そうというところから興味を持ってもらい、ゲームを楽しんでもらえると、より自然に参加してもらえます。むしろユーザーの方がうまく説明している。

我々はどうしても提供側なので、ウォレットの説明などを前面に出しがちですが、ユーザーはゲームの魅力をしっかり理解している。大変、勉強になります。

|インタビュー:渡辺一樹
|文:増田隆幸
|写真:多田圭佑