暗号資産取引所でのビットコイン保有数が2018年1月以来最少に

中央集権的な暗号資産(仮想通貨)取引所に結びついたアドレスに保有されるビットコイン(BTC)の数は、市場が洗練されてきたことを部分的に反映し、5年以上ぶりの低水準に落ち込んだ。

ブロックチェーン分析会社CryptoQuantによると、いわゆる取引所積立は8月に4%減の200万BTC(545億ドル、約7兆9025億円:1ドル=145円換算)となり、2018年1月上旬以来の少なさとなった。

この減少は、暗号資産カストディアンのコッパー(Copper)のClearLoopのような、中央集権的な取引所に資金を移動させることなく取引できるサービスの人気が高まっていることなど、プラスとマイナスの両方の動きを表している。

取引所に保管されたビットコインの数の推移(CryptoQuant)

暗号資産(仮想通貨)サービスプロバイダーのマトリックスポート(Matrixport)のリサーチ・戦略責任者のマーカス・ティーレン(Markus Thielen)氏は、「これはコッパーのClearloopのような、最小限のコインだけを取引所に保管するサービスに対する需要の高まりを反映している部分もある」と述べた。「時が経てば、暗号資産取引所の重要性は低下し、高い収益性を維持するために新たなビジネスモデルを見つけなければならなくなるかもしれない」。

マトリックスポートは5月にClearLoopに参加し、機関投資家に取引所外決済を提供している。

原因の一つは信頼の欠如

昨年11月にサム・バンクマン・フリード(Sam Bankman-Fried)氏の取引所であるFTXが破綻して以来、投資家はますます中央集権的な取引所からコインを遠ざけるようになっている。現在わかっているところでは、かつて取引高で世界第3位の取引所だったFTXは、利用者の資金を会社の資金と混同し、投資家の信頼を失墜させた。

ティーレン氏によると、取引所の残高が減少しているのはそのことを表しているという。「FTXによる顧客資金の不正使用は、投資家にセルフカストディの重要性を再認識させた」とティーレン氏は米CoinDeskに語った。

先月発表されたプライスウォーターハウスクーパース(PricewaterhouseCoopers:PwC)のグローバル暗号資産ヘッジファンド報告書(PwC 2023 Global Crypto Hedge Fund Report)によると、ほとんどの業界関係者は現在、複数の形態のカストディを好んでおり、「コインを取引所のみに預けている回答者はわずか9%」だった。

戦略別のカストディ・タイプ(PwC)

マーケットニュートラル戦略、一任ロングオンリー戦略、クオンツ・ロングショート戦略、一任ロングショート戦略のユーザーは、圧倒的にサードパーティーのカストディアンを好んでいる。この4つのうち、ロング・オンリー戦略のファンドは、取引所でのコインの保管数が最も少なく、合算口座と分離口座の両方で保有している。

「暗号資産ヘッジファンドの圧倒的多数は、昨年の出来事の後、可能な限りリスクを軽減しようとし、日々の取引に必要な資産のみを取引所に保管しているようだ」と報告書は述べている。

取引所残高が減少していることの一つの解釈は、投資家がコインを直接保管し、価格上昇を見越して長期的に保有することを選好していることを示している。言い換えれば、暗号資産の長期的な見通しに対する投資家の自信を示している。ティーレン氏によれば、この強気な解釈は今でも有効だという。

「2022年の価格下落後、投資家はバイ・アンド・ホールドの投資アプローチをとっている」。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:CryptoQuant
|原文:Bitcoin Holdings on Crypto Exchanges Dwindle to 2M, Fewest Since January 2018