資産のトークン化、進展中

16兆ドル(約2320兆円、1ドル145円換算)──。これは2030年までにトークン化されると予想される現実資産(RWA:Real World Asset)の金額だ。オンチェーン分析によれば、すでに30億ドルの資産がトークン化されている。大手企業(BNYメロン、JPモルガン、ブラックロック)はすでに、支払いや決済の観点からトークン化がもたらす効率性を認識し、トークン化プロジェクトを打ち出している。

しかし、トークン化投資のより重要な可能性は、金融を民主化し、グローバルな機会への「小口化」投資を通じて、より広範な投資機会を一般大衆にもたらすパワーだ。

トークン化に特化したコンサルティング企業Security Token Advisorsのピーター・ガフニー(Peter Gaffney)氏が、今、トークン化の世界で何が起こっているのか、その概要と洞察を紹介する。

トークン化の現状: 2023年のテーマ

資産のトークン化は、次なる金融商品のラッパー(wrapper:投資のための仕組み)として、伝統的資産をブロックチェーン上にもたらす(オンチェーン)というコンセプトとその実行に集約される。広範な公開金融市場が、新たに手に入れた効率性とポートフォリオ管理の精度に牽引されて、個々の株式や債券から投資信託、ETFへと移行したように、ブロックチェーンベースの証券は、非公開市場と公開市場を問わず、次なるラッパーとして大いに期待されている。

2023年を通じて、デジタル資産のトークン化に関する主要なテーマは、個人投資家、機関投資家ともに、多かれ少なかれ堅調に推移した。投資銀行業務は、2022年に続いて活発だった。ゴールドマン・サックス、UBS、HSBC、ABNアムロなどの銀行が、この時期を通じてデジタル債券の発行に積極的だった。

例えば、ゴールドマン・サックスは、欧州投資銀行(EIB)の1億400万ドルのデジタル債権の試験運用を行った後、2023年1月にゴールドマン・サックス・デジタル資産プラットフォーム(Goldman Sachs Digital Asset Platform:GS DAP)を正式に立ち上げた。

GS DAPはその後、香港金融管理局(HKMA)とともに1億200万ドルのデジタル・グリーンボンド(環境債)発行。ソシエテ・ジェネラル、EIB、サンタンデール、そしてEIBの初回発行の主要購入者として、15ベーシスポイント(約15万6000ドル)の追加金利を獲得したユニオン・インベストメントなど、現在積極的に発行を行っている銀行との追加発行も予定している。

この数字は、発行規模が大きくなり、オンボーディング、サービシング、管理がエンド・ツー・エンドで完全にデジタル化されるにつれて、さらに増えるだろう。

銀行独自プラットフォーム以外では、ジェフリーズ(Jefferies)が3年ぶりにこの分野に再参入し、ゴールドマン・サックス、JPモルガンとともに、3568件のローンを含む2億3700万ドルのプロベナンス・ブロックチェーン(Provenance Blockchain)ベースのHELOC(ホームエクイティ・ライン・オブ・クレジット)で引受人を務めた。この時のHELOCは、ブロックチェーンベースのHELOCとして初めて大手機関(この場合はモーニングスター)から格付けを受けた。

このような優良企業とは別に、ブティック型銀行やブローカー・ディーラーは、デジタルの未来に向けて自社のライセンスをアップグレードしており、ダルモア・グループ(Dalmore Group)、キャッスル・プレイスメント(Castle Placement)、ボソニック・セキュリティーズ(Bosonic Securities)、さらには既存の1万のOTC証券を担当するOTCマーケッツ・グループ(OTC Markets Group)などが、デジタル資産証券(ブロックチェーンベースの商品)をサポートしている。

マネーマーケットとプライベートエクイティ

そして、マネーマーケット&トレジャリー・ファンド側とプライベートエクイティ(PE)&プライベート・クレジット側で起きていることも見ていこう。投資プロフィールはまったく異なるが、共生している2つの領域だ。

トークン化されたマネー・マーケットと国債は現在、総運用資産額で6億5000万ドルを超え、デジタルシステムに資本を保管する低リスクの利回り創出手段として機能している。

新たな機会が開かれれば、例えば、従来のマネー・マーケット・ファンド(MMF)からスワップし、法定通貨の送金を待ち、PEプロダクトへと転換するよりも、オンチェーン・マネー・マーケットからオンチェーン・プライベートエクイティにスワップする方がよりシームレスになるだろう。

これはごく基本的な例だが、各社はこれに向けて、エンド・ツー・エンドのデジタルインターフェースを積極的に開発している。金融アドバイザーや投資顧問、ウェルスマネジメント業界にこのような現実をもたらす顕著な例として、Securitize(セキュリタイズ)が挙げられる。同社はもともと、Onramp Investと提携していたが、デジタル資産と並行してオルタナティブ投資を可能にするという目標を掲げ、2023年8月に同社を買収した。

近い将来の目標は、ステーブルコインや暗号資産(仮想通貨)の保有者を、完全にオンチェーン化された有形で伝統的な投資商品へと転換させることだ。

セキュリティ・トークン(デジタル証券)やトークン化された資産の流通市場の時価総額は、不動産、プレIPO株式、投資ファンド、その他の資産クラス全体で150億ドル(出典:Security Token Market)に達しており、エコシステムがますますデジタル化していく中で、走り出す余地は十分にある。

マネー・マーケットと国債は、業界がオルタナティブ投資の分野でより強固なソリューションを構築するなかで、馴染みやすさを生むために成果を出しやすい分野と言える。

時価総額総計:アメリカ(緑)と世界(紺)

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shubham Dhage/ Unsplash
|原文:The Tokenization of Assets Is Underway