現実資産(RWA)のトークン化:暗号資産の持続的成長の新たな波

厳しい「暗号資産(仮想通貨)の冬」の終えんを願いたい今、歴史は良い時代が戻ってくることを予見させてくれる。

テクノロジー普及のサイクル

高名なカルロタ・ペレス(Carlota Perez)教授によれば、テクノロジーは予測可能な波のような周期で普及し、高揚したバブルの後には、存在を脅かすと思われるようなバブル崩壊が続き、その後に長い成長の「黄金時代」が訪れるという。2001年、いわゆるドットコム・バブルが崩壊し、ニューヨーク・タイムズが「Dot-com Is Dot-Gone and the Dream With It(ドットコムは去り、夢も道連れに)」と宣言したとき、私たちはそのようなパターンを目の当たりにした。

ドットコムバブル崩壊を伝えるニューヨーク・タイムズ紙

時は流れ、私たちは今、20年以上にわたる何兆ドルもの持続的な成長と、旧来の経済の変革を目の当たりにしている。ペレス教授が予測したように、成長は、およそ20年ごとにバブルとバブル崩壊によって中断された。

Web3もまた、このおなじみのバブルとバブル崩壊のサイクルを伴う技術革命だ。これまでWeb3は、経済成長と変革をもたらす巨大な可能性を秘めた一連のテクノロジーを導入することに成功してきた。DeFi(分散型金融)は、仲介者をコードに置き換え、信頼を変更不可能なスマートコントラクトによる保証に置き換える新しい金融システムを可能にするインフラを生み出した。だがDeFiはこれまで、主に暗号資産トークンの形で、魔法のインターネットマネーを取引するだけだった。

同様に、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)は、デジタルの希少性の問題の一部を解決し、クリエイティビティの民主化を可能にしたが、その利用はほとんどがデジタルアート、文化、ミームに限られている。

言い換えれば、DeFiやNFTは優れたテクノロジーを活用しているだろうが、主に不安定で時価総額の小さな暗号資産を使って取引されている。

ペレス教授によれば、これは価値あることであり、普通のことだという。新しい技術インフラは、投資の盛り上がりの初期導入期に整備されるものであり、その後、高い期待に応えることができず金融面で暴落が起こることは必然。しかし、この優れた技術インフラこそが通常、次の成長段階の基盤を形成する。

ペレス教授の提唱するテクノロジー普及のサイクル
(カルロタ・ペレス『Technological Revolutions and Financial Capital』)

暗号資産と伝統的金融の間でますます共有されつつある主張は、現実資産(RWA)のトークン化が次の強気相場の基幹を形成し、暗号資産への何兆ドルもの価値移転の扉を開けるというものだ。ペレス教授の言葉を借りれば、RWAのトークン化はブロックチェーンと伝統的な金融における新たな黄金時代を解き放つだろう。

これは今、すでに起こっている。現在の状況としては、ブラックロック(BlackRock)やフィデリティ(Fidelity)を含む伝統的金融大手と、Tzero、Securitize、PolymathのようなRWAスタートアップが、ブロックチェーンを利用して、現実世界に実際に適合する資産をトークン化している。これらのカテゴリーには、コモディティ、美術品、不動産、株式や債券などの金融商品が含まれる。ブラックロックのラリー・フィンク(Larry Fink)CEOの言葉を借りれば、「市場の次世代、証券の次世代は証券のトークン化だ」。

トークン化の抱える問題とその解決策

ここでは、RWAのトークン化は単に仲介者の役割を減らすだけであり、その一方で、より速く、より安く、より透明性の高い取引を可能にする。しかし、ほとんどのRWAトークン化プラットフォームは、トークン化された資産の償還を履行するために、ある種の仲介業者への信頼を必要とするため、Web3テクノロジーの潜在力はまだ完全には発揮されていない。仲介者が蒸発すれば、原資産に対する債権も蒸発する。この問題は現物資産のオラクル問題と呼ばれ、次のような例で示すことができる。

アリスが自分の車をトークン化し、ボブがそのトークンを買ったとする。ボブはどのようにして、車を受け取れると確信を持つことができるのだろうか?

この問題は、ブロックチェーンが直接解決できるものではない。なぜなら、常にある程度の人間による調整と信頼を伴うからだ。しかし、この問題を解決する、よりWeb3らしい方法がある。

現物資産を直接トークン化する代わりに、当事者の商取引実行の約束を一種の先物契約としてプロトコルでロックし、スマートコントラクト内にエンコードし、償還可能なNFTとしてトークン化することができる。紛争が発生した場合、スマートコントラクト内にエンコードされたアルゴリズムが分散型紛争解決機関に照会することで処理できる。その結果、RWAのトークン化、交換、決済における信頼の必要性が最小化される。

このようなプロトコルは、トークン化の基本的な問題である「どのようにすれば権利が満たされることを保証できるか」という問いに、より厳密な答えを提供する。また、取引を覆したり、取り消したり、検閲したりできないため、DeFiと同レベルの保証を提供する。このレベルの保証は、「よりハードな」トークン化されたRWAをもたらし、その信頼性によって、よりスマートでプログラム可能な経済の基盤となることが可能になる。

そうでなければ、信頼できる仲介者が必要になり、カウンターパーティリスクや摩擦、独占的な権力など、ブロックチェーンが回避しようとするすべてのものが呼び戻されてしまう。

世界有数のブロックチェーン学者であるジェイソン・ポッツ(Jason Potts)教授が指摘するように、「今や、世界中のあらゆる物理的な製品やサービスを、共通の相互運用可能なフォーマットにトークン化し、単一の公開台帳にリスト化し、信頼コストの低い市場取引を可能にすることができるようになっている。そしてそのような取引は、内部でエンコードされたルールで管理され、その基盤によって執行されるようになっている。それでどうなるのだろうか? そうなると、計算可能な資本が 『プログラム可能な商業』を可能にするが、それ以上に『チューリング完全経済』と呼ぶべきものを可能にする」。

DeFiやNFTのようなWeb3テクノロジーがトークン化された資産を強化するために完全に活用されれば、プログラム可能なWeb3経済が実現するだけでなく、1兆ドル規模のビジネスチャンスも生まれるはずだ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:The Trillion Dollar Crypto Opportunity: Real World Asset Tokenization