シバリウムの波瀾万丈の船出と柴犬コイン(SHIB)の将来性:マネックスクリプトバンク格付け評価 注目ニュース

柴犬コイン(SHIB)がイーサリアム互換のレイヤー2「シバリウム」を公開

マネックスクリプトバンクは、独自の暗号資産(仮想通貨)格付け評価モデルを発表し、30種類の主要暗号資産に対して相対的なスコアを付与。この格付けをもとに、評価対象のスコアに変化を及ぼしうるイベントがあった際の分析や、各銘柄スコアの中期的な見通しについても発信している。

今回は犬系のミームコインとして人気を集める、柴犬コイン(SHIB)の直近の動向について取り上げる。SHIBトークンは暗号資産の時価総額ランキングでもトップ20に位置し、国内においてもbitFlyerやGMOコイン、SBI VC トレードなど5つの取引所に上場している。


現状を打破する一手「シバリウム」

2023年1月に柴犬コインの開発チームによってSHIBトークンを間接的な手数料として使用するイーサリアムのレイヤー2ソリューション「Shibarium(シバリウム)」の概要が発表された。SHIBエコシステムの分散型取引所「ShibaSwap(シバスワップ)」のガバナンストークンであるBONEトークンをシバリウムのネイティブトークンとして移管し、同トークンがガス代として使用される同量分のSHIBトークンを流通量から減らす。

要はシバリウムが使われるほどSHIBトークンの供給量が減って価値が向上する仕組みである。プロジェクトの関係者はシバリウムを足がかりにDeFiおよびNFTの分野でSHIBトークンが活用されることを狙いとしているという。

2023年3月にはシバリウムのテストネットの運用が始まった。時価総額ランキングでも上位にランクインするSHIBトークンのレイヤー2が安価な手数料で利用できるとあってか、試験段階から約2100万個のウォレットが作成され、非常に人気を博した。またミームコインの立場から本格的なブロックチェーンプロジェクトへ移行するという期待によってSHIBトークンの価格も短期的に上昇した。

予想外の大量のトランザクション流入でスタートから失速

その後、2023年8月17日にシバリウムのメインネットの運用がスタートしたが、本格稼働が開始されてすぐ、予想を超えるトランザクションの発生によってネットワークが11時間以上停止する事態となった。それに伴い、数百万ドル分の資産がイーサリアムとシバリウムの価値移転を行うブリッジに滞留してしまい、それらを引き出すことができなくなった。

開発チームは即座に対応を行い、同年8月末にシバリウムを再公開した。しかし、9月に入ってからもウォレット数が約120万個、日次トランザクション数が数万件、ネットワークに預け入れられている総資産額(Total Value Locked:TVL)も約400万ドルと伸び悩んでおり、アービトラムやベースなど既存のレイヤー2と比べて規模が小さいままとなっている。

項目別分析

前回の「MCBクリプト格付け」では、SHIBトークンの総合スコアは6.35で14位となっている。シバリウムの登場により今後のSHIBトークンの格付けはどのような方向に向かっていくのか、プロジェクト稼働度とスケーラビリティ/分散性の観点から考察してみたい。

プロジェクト稼働度:ネットワークの過負荷が結果としてプロジェクトの信頼度を高める

出典:柴犬コインの公式ブログ。障害が起こった直後から定期的に開発者たちによる情報発信が行われていたことがうかがえる。

スタートからサーバーに障害が発生し、先行きに不安を感じさせる結果になってしまったシバリウムだが、ネットワークの再公開に至るまでのスピードは非常に早かった。障害が発覚してすぐに柴犬コインのコア開発者であるShytoshi Kusama氏が公式ブログを更新し、虚偽の情報に注意するように呼びかけるとともに現状をしっかりと説明した。その後もアップデートの進捗を開発チームが細かく発信し、約10日後にはバグを修正してブリッジからトークンの引き出しが可能になった。

暗号資産界隈ではブログが完全にストップしてしまっているプロジェクトも多い中で、SHIBトークンは毎月の頻度でブログを投稿している。そこで最新の情報のみならず、スマートコントラクト等の監査情報や関連プロジェクトの情報も詳細に公開しており、ミームコインから始まったプロジェクトとは思えないほどの情報公開に努めている。今後もシバリウムやその上のプロジェクトに関する積極的な発信を継続していくことが期待される。

一方、開発コミュニティの規模については懸念も残る。シバリウムのGithubを見てみると外部からの貢献を表すContributorの数は16人となっており、ライバルのドージコインが抱える272人と比べて小さい。またシバリウムの親コードであるポリゴンでは766人のContirbutorがいて、その差は歴然である。単純にGithubの指標で開発の規模感や良し悪しを決めつけることはできないが、ブロックチェーンの性質上、外からコミットする開発者の人数が多いほど今後のさらなる発展が期待できるだろう。

SHIBトークンはプロジェクト稼働度の観点から高く評価できるクリプトである一方で、今後はコア開発者以外の開発者をどれだけシバリウムのエコシステムに参加させることができるかに注目である。ミームコインとしてのコミュニティがあることを前提に、レイヤー2としても機能が充実すれば、目標としているDeFiとNFTの分野でのSHIBトークンの利用拡大も期待ができるだろう。

スケーラビリティ:強豪ぞろいのイーサリアムレイヤー2で主導権を握れるか

シバリウムはイーサリアム互換のレイヤー2として誕生した。そもそもレイヤー2とはイーサリアムが抱えるスケーラビリティ問題を解決するためのソリューションであり、シバリウムの元となっているポリゴンや、この分野で大きなシェアを誇るアービトラムとオプティミズムなどが強敵として存在している。最近ではコインベースもレイヤー2の開発に乗り出すなど様々なプレイヤーによってレイヤー2が作られており、その中で新興のシバリウムがシェアを奪うのは容易ではないだろう。

シバリウムがスケーラビリティを備えたレイヤー2であるとはいえ、競合と比較して果たしてどこまで高い性能を見せられるかはまだ不確実だ。2023年9月24日現在、シバリウムは日次トランザクション約2万件を平均ブロックタイム5.0sで処理している。それに対してアービトラムは日当たり約50万件の取引を平均ブロックタイム0.28sで処理している。両者ではそもそも利用度合いが違うとはいえ、シバリウムはスケーラビリティの面で大きく水を開けられている。

シバリウムは後発であるというビハインドを抱えているからこそ、性能あるいはトークノミクスで差別化を図る必要がある。さらなる機能的な改善・改良なしにイーサリアム互換のレイヤー2というセクターでポジションを取ることは難しいだろう。

総評:話題となった今こそ更なるユーザー獲得のチャンス

このニュースをきっかけに新しく柴犬コイン(SHIB)への関心を持った人も一定数いる一方で、従来のブーム同様に一過性のもので終わる雰囲気が漂い始めている。レイヤー2として競合と渡り合っていけるかは今後の開発次第で不透明な部分も多いが、熱意のあるミーム信者とコア開発者に支えられてまさに今、ミームコインから脱却して次のステージへ進もうとしている点は注目に値する。

話題の中心となったこの機会にプロジェクトに関する情報発信を積極的に行い、シバリウムの強みを訴えることで、その上のアプリ開発や新規ユーザーの獲得が期待できるのではないだろうか。次の一手が非常に楽しみだ。

|編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:柴犬コインの公式ブログ(キャプチャ)
※編集部より:タイトルと小見出しを変更し、更新しました。