リップルのバイスプレジデントが語るCBDC成功の3つの柱

中央銀行デジタル通貨(CBDC)は近年、目覚ましい勢いで金融イノベーションの最前線に登場し、私たちの通貨に対する認識や通貨との関係を一変させる可能性を秘めている。

世界の多くの中央銀行にとって、CBDCをめぐる議論は「開発するかどうか」から「いつ導入し、広く普及させるか」にシフトしている。

政策とテクノロジーの相互依存関係や潜在的な市場への影響を考えると、CBDC開発は複雑な取り組みだ。慎重に設計されれば、CBDCは従来のお金の形態と比較して、レジリエンス、高い安全性、アクセスを向上させる一方で、低コストを実現できる。

3つの柱

この目的を達成するために、CBDCの成功は、設計における3つのコアとなる柱、すなわち、テクノロジー、ポリシー、使いやすさに支えられることになる。以下、順に見ていこう。

テクノロジー

第一の柱はテクノロジーだ。CBDCが実験から実際の導入に移行するためには、大規模にユーザーをオンボードし、認証し、サポートする能力を備えた、レジリエントで安全な技術インフラが不可欠だ。

また、増加し続けるトランザクションのスループットに対応するため、無限の水平スケーラビリティも提供しなければならない。

さらに、異なる国々が同じインフラを採用する可能性は低いため、摩擦のない国境を越えた取引のメリットを享受するために、CBDCは異なる技術インフラ間で相互運用が可能でなければならない。

ポリシー

第二の柱はポリシー、すなわちエコシステム全体を支える中央銀行と政府によって確立されたルールおよび規制だ。各国とその中央銀行に特有の優先事項や規制の枠組みを考えると、おそらく最も時間のかかる分野だろう。

ユーザーや金融機関の熱意が普及成功の重要な要因である一方、最初は懐疑的であっても、CBDCが導入される状況もあり得る。政治的な動機や政策目的は、CBDC導入を正当化するうえで重要な役割を果たす。

決済業界は、CBDCに対応するために業務やインフラを調整するなど、状況の変化に適応する必要がある。したがって、円滑な移行とより広範な金融エコシステムへのCBDCの効果的なインテグレーションを確実にするためには、商業銀行、小売業者、中央銀行の間の協力が不可欠となる。

使いやすさ

テクノロジーとポリシーが整っていても、CBDCを持続的に実世界に適用するための鍵は、結局のところ、CBDCの3番目の設計の柱である使いやすさにかかっている。

どのような新しいソリューションでもそうだが、CBDCを採用することを決定した場合、早期採用を促進することは中央銀行が直面する最も重要で困難な課題のひとつとなる。

そのため、個人や企業がCBDCを簡単かつ直感的に使えるようにするために、ユーザー中心のアプローチが非常に重要となる。スムーズで摩擦のないエンドユーザーのウォレット体験がなければ、テクノロジー主導の新しさが多くの人にとって導入の障壁となるかもしれない。

中央銀行と民間セクターは、ユーザーと金融機関がCBDCに興奮するようなメリットを提供すべきだ。これらのメリットには、ユーザーフレンドリーな体験の提供、セキュリティとプライバシーの強化、コスト削減と効率性の強調、金融包摂とアクセシビリティの促進、相互運用性と国境を越えた利用の実現、イノベーションとパートナーシップの機会の促進、規制の明確性と安定性の確立などが含まれる。

デジタル通貨が人々や企業にとって有用であるためには、国内市場における他の決済スキームと共存し、相互作用する必要がある。CBDCの相互運用性の次のレベルは、グローバルな取引に対応する能力だ。国境を越えたシームレスな機能がなければ、ほとんどのCBDCプロジェクトはその潜在能力をまったく発揮できないで終わる可能性がある。

官民連携して世界をより良くするソリューションを

CBDCソリューションについて理論的に議論するとき、必然的に出てくるトピックのひとつがプライバシーだ。しかし、個人のプライバシーの権利を維持することは実際にはそれほど難しいことではなく、CBDCエコシステムにおいては商業銀行が大きな役割を果たす。

特にリテール型CBDCの場合、商業銀行がユーザーのウォレットを運用する可能性が非常に高く、商業銀行は広範なKYC/AML(顧客確認/アンチマネーロンダリング)プロセスを通じて、すでに責任ある指針に従っているため、違法行為を防止しながらユーザーのプライバシーを高水準で維持するために十分な体制が整っている。

また、信頼できるサードパーティがリテールウォレットの保管を行うことで、ユーザーの信頼がさらに高まり、普及が促進する可能性もある。

CBDCの可能性はほぼ無限だが、最終的にメインストリームに普及するかどうかは、個人と企業の両方にとっての使いやすさにかかっている。

つまり、「テクノロジー」と「ポリシー」の柱が整っていても、CBDCがリテールやホールセールで成功するかどうかは、実世界での使いやすさとユーザーによる採用にかかっている。

課題は存在するが、課題や問題は技術開発にはつきものであることを認識することが重要だ。鍵は、問題に効果的に対処することにある。

今こそ、中央銀行はこれらの問題を探求し、民間セクターとともに共通のソリューションを開発し、通貨の次の進化がより多くの人々や企業に利益をもたらし、世界をより良くすることを確実にするときだ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:リップルのバイスプレジデント、ジェームズ・ウォリス氏(James Wallis)
|原文:Ripple VP: The Policy Considerations ‘Justifying the Implementation of CBDCs’