CBDCを拒否し、取引する権利を大切にしよう

私たちは皆、持っていることにほとんど気づいていなかったものを徐々に失いつつある。取引する権利だ。

数十年前までは、高圧的な政府が社会統制の手段として支払いを凍結することは考えられなかった。現在、言論に対する広範な検閲を補完するために、取引に対する広範な検閲システムが出現しつつある。

国家は反対意見を封じ込める手段として、経済的検閲や制裁を長い間、用いてきた。つまり、今日の政府が、データ収集、監視、資産差し押さえの範囲を拡大するデジタルテクノロジーの新たな利便性を悪用することは、それほど驚くべきことなのだろうか? 例えば昨年初め、カナダ政府は非常事態を宣言し、反ロックダウンのデモ参加者の資産を凍結するよう銀行に命じた。

決済のデジタル化が着実に進んでいるため、政府はまもなく、このような介入を日常的に行うことができるようになるだろう。ガラスを割って緊急権を発動したり、従順な民間銀行の助けを借りる必要はない。

CBDCが可能にする金融コントロール

世界中でさまざまな開発段階にある中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、資金を凍結したり、没収したりする機能を通貨そのものに組み込むだろう。CBDCの提唱者たちが構想しているようなプログラム可能な通貨では、どの銀行や決済プロバイダーと取引するかにかかわらず、国家は特定の個人による自国通貨の使用を一切禁止することができるかもしれない。もはや、どこかの企業があなたを不当に扱うというリスクだけではなくなる。

このようなことは起こらないかもしれないし、実際、いくつかの中央銀行は、利用者が自分のお金と接する方法をコントロールすることは望んでいないと述べている。しかし、単純な事実として、CBDCはそのようなレベルのコントロールの可能性を開くものであり、CBDCの背後にある社会政策の目的の多く(徴税の改善や金融犯罪との戦いなど)は、CBDCによる完全なコントロールなしには不可能に近いと思われる。

政府が個人向け銀行業務に関与すれば、収益を失う商業銀行は大騒ぎするだろう。しかし、いずれにせよ、多くの人々がCBDCを利用することになり、少なくとも一部の人々はCBDCだけを利用することになる。

中央銀行自身の言葉を参考にするなら、利用者は悲惨な扱いを受けることになるだろう。資金のロックや日常的な監視、「プログラマビリティ(プログラム可能性)」によって組み込まれた恣意的なルール、虹彩スキャンや指紋を利用した世界的なKYC(本人確認)などだ。

そして、コードは言葉よりも雄弁だ。ブラジルの中央銀行は、あらゆるユーザーの残高を凍結し、あらゆるユーザーの残高を別の口座に「移動」させ、さらには通貨全体を「一時停止」させる能力を政府に与える試験的なCBDCに関する文書とソフトウェアを公開した。

通貨の基本的な性質に対するこの急進的なアップデートを正当化する理由は、悪人が脱税、マネーロンダリング、その他のさまざまな「違法行為」など、悪いことをするためにお金を使用できるというものだ。それもごもっとも。

しかし私たちは、自動車が麻薬や武器、人身売買に最適な道具であるにもかかわらず、中央集権型の政府機関によってすべての自動車が1マイル単位で追跡されることを求めていない。

私たちは、無気力で全体主義的な安全性の名のもとに、通貨を全面的に監視・管理するプログラムを拒否しなければならない。中央銀行の銀行員は経済学者だ。彼らに法律を解釈し、執行する資格はあるだろうか? どんな「違法行為」を管轄するのだろうか? 神のような官僚的権限を行使する前に、司法制度の指示を待つのか、それとも単に行動するのだろうか

彼らは法律(私たちが選挙で落選させることができる議員によって可決された法令)を執行するのか、それとも責任能力のない官僚が書き記した政策を執行するのか?

取引する権利を守る手段としての暗号資産

私たちは最悪の事態に備えるべきだ。

あるいは、取引する権利を認識し、守ることもできる。取引は、私たちが最も古い時代から今に至るまでナイーブに享受してきた権利だ。衰退していく中央銀行という制度がこの自然な権利を奪おうとするならば、彼らにその言い分を述べさせればいい。きっと支離滅裂になるだろう。

人々が自由に取引する権利によって、違法なものが何らかの形で合法化されることはない。悪い行為は依然として取り締まられるが、交換手段そのものに対する恣意的で中央集権的なコントロールによって取り締まられるわけではない。そしてもちろん、すべての人が監視される円形刑務所への転落を食い止めるために、私たちは現実的で利用可能な方法を追求必要がある。暗号資産の採用と使用だ。

カナダ政府は、時折起こることだが、セルフカストディ型ビットコインウォレット開発者にユーザーの資金を凍結するよう命じたとき、自らのプロパガンダを信じた。その政府は今、世界が理解し始めているように、それが不可能であることを理解している。暗号資産は取引の権利を保護するものだということを。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Aleksandr Popov/Unsplash
|原文:Reject CBDCs, Embrace the Right to Transact