シンガポール、暗号資産投機抑制や投資資格緩和を含む規則を制定

シンガポール金融管理局(MAS)は、暗号資産(仮想通貨)サービスプロバイダー向けの規制案の諮問書に関するフィードバックに対する第2弾、かつ最後となる回答を発表した。

暗号資産投機を抑制する要件

MASは23日、暗号資産事業者に対し、融資や信用取引、取引のインセンティブを提供しないことによってリテール顧客による暗号資産投機を抑制するという要件を維持したと発表した。MASはまた、暗号資産事業者が現地で発行されたクレジットカードでの支払いを受け付けないことや、サービスへのアクセスを許可する前に顧客のリスク認識を判断することを望んでいる。

シンガポールは暗号資産業界の誘致を図る一方で、暗号資産に対する規制のバランスを追求してきた。今回の発表は、シンガポールのデジタル決済トークン(DPT)サービスプロバイダーに対する規制案に関して受け取ったフィードバックへの回答の第2弾だ。7月から行われている最初の措置では、安全な保管のためにプロバイダーが年末までに顧客資産を法定信託に預けることが義務付けられた。

制限の緩い措置に落ち着いた分野も

ブロックチェーンインテリジェンス企業TRM Labsの上級政策アドバイザーで元MASスタッフのアンジェラ・アン(Angela Ang)氏は、「MASは投機的なリテール取引に対する姿勢では非常に一貫しており、自らの提案をおおむね進めているのは驚くべきことではない」とした上で、「とはいえ、顧客の純資産を決定する際に暗号資産を含めるなどの分野では若干制限の緩い措置に落ち着いている。これは、MASが業界のフィードバックに耳を傾けており、必ずしも同意していない場合でもそれを考慮する意向があることを示している」と指摘した。

比較的制限の緩い措置の中には、MASが認定投資家としての資格に関する制限を緩和し、認定に必要な200万シンガポールドル(約2億2200万円、1シンガポールドル111円換算)に一部の暗号資産をカウントできることを明確にしたことがある。

また、利益相反を開示し、上場を管理する基準を公表し、顧客の紛争を解決する手続きを確立させるという条件で、取引所が暗号資産を上場させるための独自の基準を策定することも許可されたようだ。アン氏は、香港のアプローチはより規範的であり、規制当局の基準を満たす暗号資産のみが許可されると指摘した。

MASには、高可用性とリスクインシデントの報告に関する規定もある。こうした要件は、他のシステム上重要な金融機関には課せられているが、決済サービスプロバイダーには課されていない。そのため、これは暗号資産に対する特別な規定となっている。

移行期間後の2024年半ばから発効

今回の規則は、施行に向けた「適切な移行期間」を設けるため、2024年半ばから段階的に発効する予定だ。

MASによれば、この規則は起こり得る消費者被害を制限することを目的としているという。

金融監督担当副マネージングディレクターのホー・ハーン・シン(Ho Hern Shin)氏は、「こうした事業行為や消費者アクセスの措置は、この目的の達成に役立つが、本質的に投機的でリスクの高い暗号資産取引の性質に由来する損失から顧客を隔離することはできない」と述べた。

|翻訳・編集:林理南
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|原文:Singapore Central Bank Rules to Discourage Crypto Speculation, Ease Investment Qualifications