「暗号資産は、将来の金融エコシステムでは使えない」シンガポール当局の長官が指摘

シンガポール金融管理局(MAS)長官は、シンガポール・フィンテック・フェスティバルの基調講演の中で、暗号資産(仮想通貨)ではなく、ステーブルコインと中央銀行デジタル通貨(CBDC)が将来の金融エコシステムの一部になるだろうと述べた。

「デジタルマネーには4つの候補がある」とラヴィ・メノン(Ravi Menon)長官は述べ、民間発行の暗号資産、CBDC、トークン化された銀行の債務、そして十分に規制されたステーブルコインを挙げた。

しかし、メノン氏の意見では、暗号資産はデジタルマネーのテストに失敗している。「交換手段や価値貯蔵としてのパフォーマンスが悪く、その価格は急激な投機的変動に左右され、多くの投資家が大きな損失を被っている」。

ビットコイン(BTC)は今年121%上昇し、S&P500やナスダックを上回った。

メノン氏は、MASは十分に規制されたステーブルコインを、CBDCやトークン化された銀行債務を補完する有望なデジタルマネーとみなしていると述べた。講演の中でメノン氏は、StraitsXのステーブルコインとパクソス(Paxos)の新しい米ドルペッグステーブルコインを例に挙げた。

シンガポールはアジアの暗号資産ハブとしての評判があるが、規制当局はむしろこの国がデジタル資産ハブとして知られることを望んでおり、メノン氏はスピーチの中で暗号資産投機以外へのテクノロジー活用を強調した。

メノン氏は、MASと業界パートナーが主導する「プロジェクト・ガーディアン」が、流動性を高め、国境を越えた取引を合理化し、金融市場での業務効率を向上させるために外国為替、債券、資金をトークン化しており、世界の主要銀行が試験的に導入していることに言及した。

「より大きなビジョンとして、支払いや清算を瞬時にシームレスに行える相互運用可能なシステムのネットワークが浮上している」とメノン氏は述べている。「デジタル資産には、金融取引のあり方を根本的に変える2つの重要な特徴がある」。

シンガポール主導のグローバル・レイヤー1

パブリック・パーミッションレス・ブロックチェーンやプライベート・パーミッションド・ブロックチェーンを含む既存のデジタル資産ネットワークは、アカウンタビリティの欠如、法的不確実性、相互運用性の問題などの課題に直面しており、グローバルなデジタル資産インフラとしての適性が制限されているとメノン氏は述べた。

これに対応するため、MASはグローバル・レイヤー・ワン(GL1)イニシアチブを立ち上げるという。

「GL1はグローバルな公共財として構想されている」とメノン氏は述べた。「GL1はシームレスなクロスボーダー取引を促進し、関連する規制要件を満たしながら、トークン化された資産をグローバルな流動性プールで取引できるようにする」。

GL1は、フィンテックに「より大きな目的」を持たせようとするシンガポールの取り組みの一環であり、フィンテックは現実世界の問題を解決し、人々の生活を向上させることに焦点を当てるべきだとメノン氏は強調した。

そして「デジタル資産、デジタルマネー、そして基盤となるデジタルインフラが一体となることで、世界中でシームレスな金融取引を行うというビジョンが実現する」と述べた。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:‘Cryptocurrencies Have Failed the Test of Digital Money,’ MAS’ Managing Director Says