暗号資産は2024年、ICOブームの汚名を払拭する

2017年に始まったICO(イニシャル・コイン・オファリング:新規コイン公開)ブームのせいで、暗号資産(仮想通貨)は詐欺だと考えるようになった人が非常に多い。あの時期、怪しげなプロジェクトが蔓延していたことはおおむね事実。しかし2024年は、この業界に対するそのような認識を変えるのに役立つはずだ。

当時、多くのプロジェクト創設者は、パートナーシップ、意図、実際の製品など、ほとんどすべてについて嘘をついていた。多くは最初から単なる詐欺だった。ある取引所の創設者は、盗んだ数百万ドル分の暗号資産を持ち逃げするために自らの死を偽装した可能性さえ指摘されている。

この時期はワイルドウエスト(西部開拓時代)であり、もっともな批判を招いた。暗号資産業界は、伝統的金融に対抗するための理想から生まれたが、さらに悪いものに変わってしまった。

しかしそれ以来、デジタル資産ははるかに専門化した。最近の「暗号資産の冬」の間に、暗号資産ネイティブと非暗号資産ネイティブの双方に真の機会を創出する真の開発者たちが出現した。

現実資産(RWA)と現実世界のユースケースに注目が集まっている。最近の多くのプロジェクトは、ほとんどのICOよりもはるかに実用性が高く、実際の価値を生み出すことと、株価をつり上げるために「ブロックチェーン」という言葉をブランドに貼りつけることの違いを象徴している。

RWA市場は巨大で、トークン化はまだ始まったばかりだ。この動きは、コモディティ、不動産、美術品、希少なウイスキーなど、これまで取引所外の不透明な市場やブローカーやオークションが支配する市場で売買されてきたさまざまな投資に対する人々の見方やアクセス方法を永遠に変えるだろう。

トークン化の成功は、暗号資産に対する認識を変えるはずだ。

透明性の向上

スポット市場や先物市場が存在しないコモディティは数多く存在し、ビッドとアスクが出会う清算価格とは対照的に、多かれ少なかれブローカーの気まぐれによる不透明な価格設定が行われている。公開されている基準価格が存在する場合もあるが、多くの場合、ブローカーが考える基準価格を調査したものにすぎない。

金属のような資産をトークン化することで、以前は存在しなかったスポット市場が生まれるため、より優れた価格発見とより正確な価格設定が可能になる。

ブロックチェーンはまた、サプライチェーン全体にわたるより優れたトラッキングを可能にし、収集品やコモディティの真正性を検証し、偽造を制限し、うまくいけば保有者が自分のアイテムの価値をより良く保持し、理解することをサポートできる。

アクセスの民主化

流動性の低い資産の多くは、その値動きから利益を得ることができる選ばれた一部の人以外には門戸が閉ざされ、そのような機会は裕福なインサイダー集団にだけ提供されていた。

トークン化により、こうした参入障壁が取り払われ、バックグラウンドに関係なく、事実上誰でも(たとえ分割ベースであっても)投資の恩恵にアクセスできるようになる。

また、以前は存在しなかったまったく新しい資産クラスが創出されることで、新たな機会が開かれる。ICOブームの頃、ウォール街のインサイダーがプライベート・エクイティやベンチャー取引にアクセスできるのと同じように、ICOによってあらゆる人がアーリーステージの投資に参加できようになるとプロジェクト創設者や専門家が主張したことを覚えているだろうか?

それはおおむね不正確で、トークンが暴落したときに多くの人がすべてを失うことになった。

実在する有形の現実資産(RWA)の価値に裏打ちされたトークンに投資することで、最悪の場合でも保有者は、現実資産そのものかその現金価値でトークンを換金できるはずだ。もちろん、これには原資産の真正性を確認するための外部監査が必要だろう。

しかし、ホワイトペーパーや、実質的に説明責任のない偽名のチームが確かな製品を作ってくれると盲信することとは大違いで、理論的にはICOやNFTで人々が手にしたよりも良い結果が得られるはずだ。

次なる大きなフロンティア

少なくとも私が暗号資産に携わってきた2015年以来、人々はアートと不動産のトークン化について議論してきた。

これらのプロジェクトのほとんどは、関心の低さからトークン化する実際のRWAの不足に至るまで、さまざまな理由でまだ大きな関心を集めていない。しかしこの1年で、この分野での技術イノベーションの量は、これまでのすべての年の合計を上回っている。

確かに、金や銀のような流動性の高い商品をトークン化することは、資産をオンチェーン化できることを示すPoC(概念実証)としては理にかなっている。

しかし、これまで不可能だった方法で資産へのアクセスを可能にする、まったく新しい市場を創造する真の機会が存在する。

例えば、あるコモディティの買い手は、先物を作ることを可能にする現物(スポット)市場がないため、将来の価格変動に対してヘッジすることができないというシナリオを考えてみよう。

その資産に現物市場が形成されれば、先物を作ることができ、カドミウムのような資源を消費する産業は、航空会社がジェット燃料の価格変動を管理して長期的なコストを平準化するのと同様に、より予測可能なコスト管理を行うことができる。

現実資産(RWA)のトークン化によってもたらされる機会は、あらゆる投資家や市場参加者におよび、アクセスしやすく、透明性が高く、そして最も重要なことに、現物市場でより効率的に価格決定が可能な資源に対してRFP(提案依頼書)を発行するよりも大幅に改善された、まったく新しい機会を創出する。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Conny Schneider/Unsplash(CoinDeskが加工)
|原文:Next Year Crypto Will Wash Away the Stains of the ICO Boom