SEC、ビットコインETF承認──需要拡大からの買い圧力に期待

米証券取引委員会(SEC)がついに、ビットコインETF(より厳密には、ビットコイン現物ETF)を承認した。

SECは米東部時間1月10日午後4時前にビットコインETF承認についての文書を掲載。数分後には削除されていたが、改めて、ゲンスラー委員長による声明が掲載された。

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アメリカでのビットコインETF(上場投資信託)は2013年、著名投資家のウインクルボス兄弟がSECに申請して以来、さまざまな企業が申請してきたが、SECはそのすべてを却下していた。

2021年、バイデン政権誕生に伴い、暗号資産(仮想通貨)に造詣が深いゲーリー・ゲンスラー氏がSEC委員長に就任したことで、何度目かの申請の波が起きたが、結果は業界の期待に反するものだった。2022年、市場が弱気相場となったことで、その熱は冷め、話題にも登らなくなっていた。

だが、2023年6月、世界最大の資産運用会社ブラックロックが突如、ビットコインETFを申請。伝統的金融(TradFi)大手が申請したことで承認への期待は高まり、再び話題の中心に躍り出た。市場もブラックロックの申請をポジティブに受け止め、これを契機にビットコインは年初から2倍以上となる上昇を見せた。

新たなビットコイン需要

ビットコインETFは、暗号資産取引所に口座を開設しなくても、証券口座を持っている人なら(少なくともアメリカでは)誰でも購入できる。取引所でビットコインを直接購入するのではなく、今回であればブラックロックが組成し、ナスダックに上場させたビットコインETFを購入すれば、より手軽にビットコインに投資できる。

ビットコインへの直接投資が難しかった生命保険、年金基金などの機関投資家も、ビットコインETFならば、規制当局と株式市場が認めた金融商品であるため投資が可能になる。生命保険や年金基金がビットコインETFを購入することはすなわち、(ビットコインETFを認識すらしていない人たちも含めて)多くの人たちが間接的にビットコインに投資することを意味する。

一方、ビットコインにとっては、新たな需要が生まれることになる。今回であればブラックロックがETF組成のために大量のビットコインを購入することになるため、新たな「買い圧力」が生まれる。ブラックロックのETF申請をきっかけに、ビットコイン価格が上場を続けたことには、こうした期待が込められていた。この先、ビットコインは大きく上昇すると期待されている。

ただし、投資ではしばしば「噂で買って、ニュースで売る」といわれる。ビットコインETF承認は、まさに「ニュースで売る」イベントであり、利益確定による価格下落を招くとの見方もある。

ビットコイン価格がどのような動きを見せるかはわからない。だがビットコインが新たなステージを迎えたことは間違いない。

|文:増田隆幸
|画像:Shutterstock
※編集部より:タイトル、本文を一部修正し、更新しました。