ビットコインETF、60強の過去記事タイトルで振り返るこれまでの経緯──早ければ今日発表か

ビットコイン(BTC)の現物価格に連動する「ビットコインETF」(より厳密には「ビットコイン現物ETF」)を米証券取引委員会(SEC)がまもなく承認するとの期待が高まっている。

ビットコインETFの承認は暗号資産(仮想通貨)市場への投資マネーの流入増につながり、価格の押し上げ圧力になると多くの人が期待している。もちろん一方で「噂で買い、ニュースで売る」出来事になると見る人もいる。

ここでは、まずビットコインETFの基礎知識を踏まえたうえで、CoinDesk JAPANの過去記事を中心に、ビットコインETFにまつわるこれまでの経緯を振り返ってみよう。

ETF(上場投資信託)とは?

ビットコインETFとは何かを理解するには、まず「ETF」とは何かを知ることが前提となる。ETFとは「Exchange Traded Funds」の頭文字で、日本語に訳すと「上場投資信託」となる。例えば、以下のような定義がある。

ETFとは、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託です。特定の指数、例えば日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)等の動きに連動する運用成果をめざし、運用されるインデックス型と、そのような連動対象指数を定めないアクティブ型のETFがあります。
出典:日興アセットマネジメント

いわゆる「投資信託」との違いは、取引所に上場しているかどうか。ETFは「上場している投資信託」なので、個別株と同じように取引所がオープンしている時間帯であれば、いつでも売買できることが大きな特徴だ。

ETFにはゴールド(金)や原油などの値動きに連動したものもあり、こうしたETFを購入すれば、ゴールドや原油の現物を実際に購入しなくても、間接的に投資をすることが可能になる。

ビットコインETFのメリット

ではビットコインETFは、投資家にどのようなメリットをもたらすのだろうか。ゴールドや原油のETFと同様に、ビットコインETFが承認されれば、投資家はビットコインを直接購入しなくても、ビットコインETFを購入することでビットコインに間接的に投資することができるようになる。

通常、ビットコインを購入するためには、暗号資産取引所に口座を開設する必要がある。口座開設は手続きが簡単になったとはいえ、暗号資産に馴染みのない人には大きなハードルとなる。

一方、ビットコインETFであれば、証券口座をすでに持っている人であれば(かつ、その証券会社がビットコインETFを扱うようになれば)、誰でも購入できるようになる。

日本は残念ながら、多くの人が証券口座を持っているとは言えないが、国が「貯蓄から投資へ」をアピールし、また新NISAのスタートで株式投資への関心が高まっている今、アメリカでビットコインETFが承認されれば、ビットコイン投資のハードルはより低くなる。

ビットコインETFのインパクト

一方、アメリカでは証券口座は日本に比べると、はるかに一般的であり、ビットコインETFに対する期待もはるかに大きい。現在、ブラックロック、フィデリティなどの伝統的金融大手がビットコインETFの提供を申請しており、これが認められれば、暗号資産に馴染みのない投資家であっても、歴史と実績のある(投資家にとっては安心感のある)金融大手を通して、ポートフォリオにビットコインを加えることが簡単に行えるようになる。

株式市場は暗号資産市場の50倍以上の規模がある。ビットコインETFは、ビットコインにとっては株式市場への入口を開くものであり、株式市場の莫大な投資マネーが、たとえその一部でもビットコインに向かうことになれば、ビットコイン価格にとっては上昇圧力になると考えられている。

ちなみに、ビットコインETFは一般的にビットコインの「現物価格」と連動するETFのことを指し、ビットコインの先物価格に連動するETFは「ビットコイン先物ETF」と呼ばれる。先物ETFは多くの場合、現物ETFよりも運用コストが高くなり、投資家には不利となる。

これまでの経緯──CoinDesk JAPANの過去記事でチェック

ビットコインETFをめぐるここ数年の経緯を過去記事も交えながら見ていこう。ビットコインETFは、2013年に著名投資家のウィンクルボス兄弟がSECに申請し、却下されて以来、暗号資産業界における注目トピックスのひとつとなっていた。

2019年3月、CoinDesk JAPAN創刊前後もビットコインETFは大きな話題のひとつとなっていた。

ビットコインETF、米SECが審査を進める2申請。2019年春に承認か、それとも審議延長か?(2019年 2月 21日)

米国証券取引委員会(SEC)のテーブルには現在、ビットコインETF(特定の指数に連動して取引所に上場している上場投資信託)に関する複数の申請提案書が並ぶ。45日間にわたる審議を経て、いよいよ初認可となるか?

米SEC、ビットコインETFの可否判断を5月中旬に延期(2019年 3月 31日)

仮想通貨ETFへの道を切り開くか? VanEckとSolidX、ビットコインETFに類似した商品を機関投資家に提供へ:報道(2019年 9月 3日)

米証取委トップ:ビットコインETF承認に向け懸念 ― 10月中旬に注目(2019年 9月 10日)

ビットコイン上場投資信託(ETF)の承認に関する米証券取引委員会(SEC)の懸念に対処するための措置を市場は講じてきたが、それでも尚「やり残した課題がある」と同委員長は述べた。

ビットコインETF、二度目の取り下げ ── ヴァンエックとソリッドXの申請に米証券取引委員会(2019年 9月 18日)

ビットコインETF申請を認めず:米証取委、ビットワイズに対して(2019年 10月 11日)

結局、SECは各社のビットコインETF申請を却下した。続く2020年、ビットコインETFに関するニュースはほとんどなかった。

■ゲンスラー氏がSEC委員長就任、楽観が広がる

だが2021年1月、バイデン政権の誕生に伴い、暗号資産への理解が深いゲイリー・ゲンスラー氏がSEC委員長に就任することとなり、ビットコインETF承認に対する期待は高まった。今思えば期待し過ぎだった。

ゲンスラー氏率いるSECに暗号資産業界が期待できること(2021年 1月 18日)

ゲンスラー氏のもと、SECはついに個人向けビットコインETF(上場投資信託)を許可すると私は考えている。彼は、スポット市場におけるビットコインの流動性、価格発見と価格形成が行われる特定の市場の整合性に関するデータを綿密に検討し、納得するだろうと期待している。

こうした楽観を受けて、アメリカではビットコインETFに向けた業界の動きが活発化。「ビットコインETF元年」という言葉も登場した。以下、10近くの記事をピックアップしたが、これがすべてではない。どれほど盛り上がったかがわかるだろう。

ビットコインETF、米企業がNY証取に上場を計画──SECに申請(2021年 1月 25日 )

ビットコインETF、今年中に米国で始まると予想:BitGo CEO
(2021年 1月 26日)

ビットコインETF、時価総額2兆円で動き出す可能性:ARKインベストメントCEO(2021年 1月 27日)

ビットコインETF・元年の到来か、それとも時期尚早か(2021年 2月 20日)

ウィズダムツリー、ビットコインETFをSECに申請──北米でETF開発が活発(2021年 3月 12日)

米SEC、ビットコインETFの審査を開始、VanEck社の申請で
(2021年 3月 18日)

米フィデリティ、ビットコインETFに進出か(2021年 3月 25日)

グレイスケール、ETF会社に出資──ティッカー「BTC」の取得が目当てか(2021年 4月 17日)

キャシー・ウッド氏:ビットコインETFの承認確率は上がった──50万ドルへの上昇もあり得る(2021年 5月 20日)

■審査延長、そして却下

2021年2月18日、アメリカより先にカナダのトロント証券取引所に北米初のビットコインETFが上場した。

北米初のビットコインETF、わずか2日で資産440億円(2021年 2月 21日)

ブラジルでもビットコインETFがスタートした。

南米初のビットコインETF、ブラジルでスタート(2021年 6月 24日)

一方、アメリカではSECがビットコインの現物価格に連動したETFではなく、「ビットコイン先物ETF」を承認したことで、ビットコインETF(ビットコイン現物ETF)承認に対する楽観論に陰が差していた。実際、SECは審査の延長を繰り返した。

米SEC委員長の発言、ビットコイン現物ETFには不利な展開(2021年 8月 7日)

「委員長の発言からは、純粋なスポットビットコインETFがまもなく誕生することはなく、先物商品には検討の可能性があるということがはっきりしてきた」と、ビットコインETFの申請をSECに行った暗号資産運用会社ヴァルキリー・インベストメンツ(Valkyrie Investments)のスティーブン・マククラーグ(Steven McClurg)氏は語った。

米SEC、11月14日までに最終回答──ビットコインETFの審査、3度目の延長(2021年 9月 10日)

SEC、4件のビットコインETFの審査延長(2021年 10月 4日)

そしてついに、審査の最終期限を迎えた米資産運用会社ヴァンエック(VanEck)の申請に対して、SECは却下という決定を下した。年初の楽観論は完全に覆された。

SEC、VanEckのビットコインETF申請を却下(2021年 11月 13日)

SECは「(ファンドは)取引所法およびSECの実施規則に基づく責任を満たしておらず…(中略)、アメリカの証券取引所の規則は『詐欺的で、市場操作的な行為および慣行を防ぎ』、『投資家および公共の利益を保護する』ものであるとする要件を満たしていない」とに合致することを証明する義務を果たしていないと結論づけた」と文書で述べた。

SECがビットコイン現物ETFを承認する日は来るのか?(2021年 11月 19日)

SECが再びビットコインETF申請を却下したことに、驚いた人がいただろうか?

私はまったく驚かなかった。SECが12日、VanEckの申請を却下したことによって、暗号資産の現物価格に連動したあらゆるETFを阻止しようとする、長年の伝統が繰り返されただけなのだ。

その後、2022年に入ってもSECの姿勢は変わらなかった。

SEC、ビットコインETF申請を引き続き却下(2022年 1月 21日)

SEC、ビットコイン関連ETFの判断を再度延期──アーク21シェアーズとテウクリウムの申請(2022年 1月 27日)

SEC、グレイスケールの申請却下──ビットコインETFへの転換を認めず(2022年 6月 30日)

この年、ビットコイン価格は下落を続け、弱気相場となっていた。

【US市場】ビットコイン、6カ月で59%下落──過去最悪の半期に(2022年 7月 1日)

そのため、ヴァンエックが新たにビットコインETFを申請したというニュースが伝えられたあとは、ETFにまつわるニュースもほとんど見られなくなっていた。

VanEck、新たにビットコインETFを申請(2022年 7月 1日)

■突然の再注目! 世界最大の資産運用会社が申請

だが2023年6月、約1年の空白を経て、突然、ビットコインETFが注目を集めることになった。世界最大の資産運用会社ブラックロックがSECにビットコインETFを申請した。

世界最大の資産運用会社ブラックロック、ビットコインETF申請──ビットコインは2万5700ドル付近まで反発(2023年 6月 16日)

今回は状況が変わるかもしれない。ブラックロックは、10兆ドル(約1400兆円)を超える運用資産残高(AUM)を持つ世界最大の資産運用会社であり、同社とラリー・フィンク(Larry Fink)CEOは、SECとゲーリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長におそらく匹敵する政治力を持っている。

これまでの申請との違いを指摘する記事もあった。

ブラックロックのビットコインETF申請、これまでとの違い(2023年 6月 19日)

ブラックロックのビットコインETF申請は一大事(2023年 6月 20日)

ビットコイン価格も反応。その後、年末までほぼ一本調子で上昇を続けたことは記憶に新しい。

ビットコイン、2万6300ドル超え──ブラックロックのETF申請で1週間ぶりの高値(2023年 6月 17日)

「ブラックロック・ピボット」続く──ビットコイン、価格も取引高も上昇(2023年 6月 22日)

一番はアーク? ビットコインETF、ブラックロックより先に承認される可能性も(2023年 6月 29日)

フィデリティ、ビットコインETF再申請(2023年 6月 30日)

2023年はビットコインETFの年になるか?(2023年 7月 10日)

ちなみに、ブラックロックのラリー・フィンクCEOは「ビットコイン懐疑派」として知られていた。だがETF申請以降、その発言内容は180度転換している。

ビットコインは「金融システムに革命を起こす」ブラックロックのラリー・フィンクCEO(2023年 7月 6日)

さらにグレイスケールがビットコインETFをめぐるSECとの裁判に勝訴。期待はさらに高まった。

ビットコイン、一時2万8000ドルまで上昇──グレイスケールがビットコインETFをめぐる裁判でSECに勝訴(2023年 8月 30日)

ビットコイン(BTC)は、連邦控訴裁判所が米証券取引委員会(SEC)に対して、グレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)のETFへの転換を求めるグレイスケール・インベストメンツ(Grayscale Investments)の申請を却下したことを見直すよう命じる判決を下したことを受けて、29日午後に7%以上上昇し、一時2万8000ドルを超えた。

ビットコインETFをめぐる動きはさらに加速した。

ビットコインクジラ、15億ドル相当を積み増し──ETF期待で楽観的に(2023年 9月 4日)

ビットコイン現物ETFの行方を占う格好の前例「金ETF」(2023年 9月 24日)

SEC、フランクリンとハッシュデックスのETF申請を検討開始──ヴァンエクとARKは延期(2023年 9月 28日)

「SECが承認」との誤報でビットコイン価格が乱高下することもあったが、承認への楽観は変わらなかった。

ビットコイン、ETF承認の誤報で3万ドルまで上昇して下落──Xで誤報が拡散(2023年 10月 17日)

SECは数カ月以内に複数のビットコイン現物ETFを承認する:JPモルガン(2023年 10月 21日)

ビットコイン現物ETFの検索数がピークに(2023年 10月 22日)

「暗号資産の冬」は終わった(2023年 11月 1日)

ビットコイン(BTC)はここ1カ月で28%上昇した。ビットコインETF(上場投資信託)は近いうちに登場する。暗号資産(仮想通貨)投資ファンドは先週、2022年半ば以降で最大の資金流入を記録した。ミームコインも復活しつつある。そして、サム・バンクマン-フリード氏を懲らしめるための裁判はほぼ終わり、暗号資産は新たなスタートを切ろうとしている。

ビットコインETFがもたらす巨大なチャンスとは(2023年 11月 9日)

■より具体的なステップがスタート

ブラックロックのビットコインETF、大手マーケットメーカーがサポートか:関係者(2023年 11月 1日)

複数の大手マーケットメイキング会社が、規制当局がビットコインETFを承認した場合、ブラックロック(BlackRock)のビットコインETFに流動性を提供する可能性がある。この件に詳しい関係者が語った。

米SEC、ビットコイン現物ETFをめぐりグレースケールとの協議開始を発表(2023年 11月 9日)

ブラックロックのビットコインETF、ウォール街の銀行からの参加を募集(2023年 12月 13日)

ブラックロック、ナスダック、SECがビットコイン現物ETF上場に関するルール変更で2回目の会合(2023年 12月 21日)

ブラックロックとヴァルキリー、ビットコインETFの指定参加者(AP)にJPモルガンなどを記載(2023年 12月 30日)

ゴールドマン・サックス、ブラックロックとグレイスケールのビットコインETFに参加する可能性:情報筋(2024年 1月 4日)

■ビットコインはTradFi(伝統的金融)に取り込まれたのか?

ビットコインETFが、世界最大の資産運用会社で、伝統的金融(TradFi)を代表する企業であるブラックロックの申請をきっかけに実現に近づいている事実はポジティブであることに違いない。だが、ビットコインが描いた分散型金融の夢が伝統的金融に取り込まれつつあるという見方も生まれている。

金融大手がビットコインETFを申請するシンプルな理由(2023年 6月 23日)

金融機関が戻ってきた。だがなぜ、運用資産残高10兆ドル(1400兆円)の資産運用会社ブラックロックや、1兆5000億ドルのインベスコは、再びビットコインETFの時がやって来たと判断したのだろうか? 多くの人が複雑で陰謀論的な仮説を立てている。

ビットコイン・ホワイトペーパーから15年、ウォール街がビットコインを飲み込む?(2023年 11月 3日)

私たちは今、皮肉な瞬間に遭遇している。金融界の巨人たちが、多くの人から見て、彼らを廃業させるために設計された分野をますます牽引するようになっている。

TradFi(伝統的金融)が暗号資産の主役に──大規模シフトが始まる(2023年 11月 13日)

ビットコインが最高値を更新してから2年──新たな波がやってくるのか、魂を失うのか(2023年 11月 14日)

■ビットコイン価格、さらに承認自体に慎重な見方も

ビットコイン価格への影響については「織り込み済み」と見る向きも出始めた。承認自体にもネガティブな意見がある。

ビットコイン現物ETFの承認は織り込み済み:コインベース(2023年 10月 14日)

現物ビットコインETF承認は織り込み済み?アナリストの見解が分かれる(2023年 10月 19日)

ETFが承認されなかったら、ビットコイン価格はどうなる?(2023年 11月 5日)

ビットコインETFのさらなる拒否、「可能性高い」:BitGoのベルシェCEO(2023年 11月 20日)

ビットコインETF承認は「ニュースで売る」になる可能性:CryptoQuant(2023年 12月 29日)

ビットコイン、暗号資産は次のフェーズへ

ビットコインETFが価格にどのような影響を与えるのかは、だれにもわからない(SECが承認しない可能性もある)。だが、ビットコインETFによってビットコイン、さらには広く暗号資産が次の新たなフェーズを迎えることは間違いない。

ビットコインETFは莫大なビットコイン取引の火付け役となる──市場は準備万端(2024年 1月 7日)

最後にビットコイン「超強気派」として知られるマイケル・セイラー氏の言葉を、この記事のまとめのように紹介することは不適切かもしれない。だがビットコイン価格の推移を考えると、同氏の言葉に耳を傾ける価値はあるだろう。

ビットコイン現物ETF、過去30年間のウォール街で最大の発展:マイケル・セイラー氏(2023年 12月 20日)

マイクロストラテジー(MicroStrategy)のエグゼクティブ・チェアマンを務めるマイケル・セイラー(Michael Saylor)氏は19日にブルームバーグTVで、市場は今後登場するビットコイン(BTC)現物ETF(上場投資信託)の重要性を過小評価すべきではないと述べた。

|文・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|協力:株式会社ロイター板
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