ビットコインETF、市場デビューから1カ月の経緯と展望──今後、さらに大きな需要予測
  • ビットコインETF(上場投資信託)の最初の1カ月は、1日あたり約1億2500万ドル(約188億円、1ドル150円換算)の資金流入を記録した。
  • グレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)は資金流出が激しいとはいえ、まだ主要プレーヤー。
  • ウェルスマネージャー(富裕層向けの資産運用サービス)や登録投資顧問(RIA)はまだ参入していないが、予想より早く参入する可能性もある。

約1カ月前、TradFi(伝統的金融)がついに暗号資産(仮想通貨)のためのまったく新しい投資商品を発売するために規制当局から許可を得たことで、興奮が高まった。

ビットコインETFのアメリカ市場への上場には10年以上の歳月を要したが、1月11日、ついに10銘柄の取引が開始された。以来、とんでもない展開が続いている。

絶好調の滑り出し

BDE Venturesの創業者兼CEOのブライアン・D・エバンズ(Brian D. Evans)氏は「ETFは非常にうまくいっている。今、多額の資金が流入しており、ユーフォリア(陶酔感)の段階が始まっている」と語った。

ビットコインETFは過去4週間、1日平均1億2500万ドル相当のビットコイン(BTC)を追加している。これは、他のビットコインETFよりも手数料がはるかに高いグレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)から、総額60億ドル以上という大量の資金が流出しているにもかかわらずだ。

GBTCを除くビットコインETFは、わずか1カ月で110億ドル相当以上のビットコインを買い集め、ブラックロックのIBIT、フィデリティ(Fidelity)のFBTC、アーク21(Ark 21)のARKBの3つのETFは運用資産総額(AUM)10億ドルの大台を突破。2月12日時点で、IBITのAUMは50億ドルに迫り、FBTCは40億ドルに迫る勢いだ。

特にブラックロックのIBITは、暗号資産に限らないすべてのETFで、資金流入額トップ5に入り、iシェアーズ・コアS&P500 ETF(IVV)やバンガードS&P500 ETF(VOO)といった業界をリードするETFと肩を並べた。

ブルームバーグ・インテリジェンス(Bloomberg Intelligence)のエリック・バルチュナス(Eric Balchunas)氏は「(IBITは)最大かつ最高のファンドと肩を並べている」と述べた。

急速な買い集めはビットコイン価格に影響を与えている。1月11日の取引開始後、一時的に「ニュースで売る」動きを受けて短期間の下落を見せたが、最近では反発し、2月12日には5万ドルを超える数年来の高値をつけた。

GBTCはどうなる?

グレイスケールのGBTCは、先月、ETFに転換されるまで、クローズドエンド型ファンドとして何年も存在していたが、ETF転換以来、大規模な資金流出が継続しており、そのAUMは2月12日の時点で約300億ドルから240億ドル弱にまで縮小している。

ETF転換前にGBTCを購入した多くの投資家は、現在売却することで利益を得ているとファルコンX(Falcon X)のレポートは指摘している。

グレイスケールはETFの管理手数料を1.50%に設定したが、これは競合9社の中で最も高いETFよりも、さらに1パーセントポイント以上、つまり100ベーシスポイント以上高い。利益確定に加え、より低いコストを求める一部の資金がGBTCから流出していることは確実だ。

ファルコンXのトレーディング担当シニア・バイスプレジデント、マット・シェフィールド(Matt Sheffield)氏はレポートの中で「GBTCは無くならないだろう。この分野のパイオニアであり、多くの道を切り開き、その結果、暗号資産ネイティブの強い支持を得ている」と語った。

一方、グレイスケールの広報担当者は「我々は、GBTCがすべてのビットコインETFが市場に出るための道を切り開いたことを誇りに思っており、ビットコインの継続的な成長と成熟、そしてビットコインETFを取り巻く強固なエコシステムについて楽観視している」と語っている。

次の展開は?

ビットコインETFのデビューをここまで成功させた高い需要は、近い将来、いくつかの頭痛の種を引き起こす可能性がある。最近の純流入は、1日あたり数千ビットコインの購入を必要としており、毎日マイニングされる900BTCよりも何倍も多い。さらに、日々マイニングされるビットコインは4月に半減期を迎えると、450になる。

これに加えて、ビットコインETFの発売からまだ1カ月しか経っておらず、主要な資産管理プラットフォームのほとんどとは言わないまでも、その多くがまだ顧客にビットコインETFを提供していない。

ETFストア(ETF Store)のネイト・ジェラチ(Nate Geraci)社長が言うように、ビットコインETFのこれまでの成功は「片手を後ろに縛られた状態」でのもので、流通が拡大すればさらに多くの需要が生まれることを示している。

ファルコンXのシェフィールド氏は「各社がビットコインETFを取り上げ始め、ポートフォリオ・ストラテジストがさまざまな投資家層へのアロケーションを決定するようになれば、資金流入はこれまでのどのETFをも上回るだろう」と指摘している。

ETF関係者は、アメリカのウェルスマネージャー(富裕層向けの資産運用サービス)や登録投資顧問(RIA)がまだ大々的に参入していないことをよく理解している。なぜなら、彼らは受託者基準によって、定められたデューデリジェンスの期間を守るよう義務付けられているからだ。

この遵守期間は通常、ビットコインETFのような新規商品の市場デビューから90取引日が経過することを求め、またさまざまな取引高基準やAUM基準もあり、約半年のタイムラグに相当する。

しかし、ブラックロックのIBITをはじめ、数多くのビットコインETFを手がける暗号資産インデックスのスペシャリスト、CFベンチマークス(CF Benchmarks)のCEO、スイ・チャン(Sui Chung)氏によると、今回の場合、待ち時間はもっと短くなりそうだ。

チャン氏は、フロリダやカリフォルニアのような退職者が多い地域にある大規模なRIAネットワークやウェルスマネジメント会社数社から、今すぐデューデリジェンスを行いたいと連絡を受けたと語った。

「それぞれ1兆ドルを超える運用資産と顧問資産を持つプラットフォームの話だ」と同氏は述べた。

チャン氏によれば、これまでのところビットコインETFが比較的成功していることは、リスク管理パッケージに組み入れるために実際に情報を収集する人々が今、情報収集を行っていることを意味する。

「彼らは、90日目にはこれらの商品がすべての基準値を満たし、割り当てを希望するアドバイザーがいることを知っている。閉ざされていた大きな水門が、約2カ月後には開かれることになる」とチャン氏は語った。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin ETF First Month Is in the Books: How It Went and What Comes Next