韓国で「キムチプレミアム」が復活──平均10%の価格差
  • 「キムチプレミアム」とは、韓国と海外の暗号資産(仮想通貨)取引所のビットコイン価格の差を指す。韓国では現在、ビットコインが海外に比べて10%高い価格で取引されている。
  • サム・バンクマン-フリード(Sam Bankman-Fried)氏は、このキムチプレミアムを利用し、リスクフリーで利益を得る裁定取引を世界中に広めたとされている。
  • 韓国の厳しい資本規制により、実際に利益を上げることは難しいが、平均10%のキムチプレミアムを受けて、裁定取引が再び流行の兆しを見せている。

アジア時間3月7日午前中、ビットコイン(BTC)は世界のほとんどの取引所で6万6000ドル(約990万円、1ドル=150円換算)超で取引されていた。一方、アップビット(Upbit)のような韓国の取引所では9300万ウォン超で取引され、ドル換算では7万1000ドル(約1050万円)以上となる。

韓国と海外と取引所のビットコイン価格の差は、「キムチプレミアム」と呼ばれる。

この取引は、理論的には簡単だ。つまり、海外の取引所で購入し、韓国の取引所に移して売却すれば、リスクフリーで10%の利益を得ることができる。

しかし、裁定取引で利益を得ることはかなり難しい。韓国は厳しい資本規制があり、外国人が多額の資金を引き出すことには高いハードルがある。つまり、大手ファンドは裁定取引を利用できず、小規模な投資家は裁定取引に必要なインフラを持っていない可能性がある。

キムチプレミアムを利用した人物としては、破綻したトレーディング企業アラメダ・リサーチ(Alameda Research)と暗号資産取引所FTXの創業者サム・バンクマン-フリード氏が知られている。CNBCによると、同氏は複数のインタビューで、2019年から2020年にかけてキムチプレミアムは50%に達し、1日に100万ドルもの利益を上げることができたと語っていたという。

一方、キムチプレミアムは韓国の個人投資家の参入を示すものであり、ビットコインに対する韓国の大きな需要を物語っているという見方もある。

「韓国の個人投資家が戻ってきている」と、オンチェーン分析会社クリプトクアント(CryptoQuant)の創業者キ・ユン・ジュ(Ki Young Ju)氏はXの投稿で述べた。

「韓国プレミアム指数(通称、キムチプレミアム)は、個人投資家のFOMO(Fear of Missing Out:見逃したり取り残されたりすることへの不安)の純粋な指標だ」

クリプトクアントのリサーチ責任者ブラッドリー・パーク(Bradley Park)氏は、一部の投資家が裁定取引を行っている可能性が高いとCoinDeskに語った。

「キムチプレミアムが拡大するにつれて、トレーダーは裁定取引に目を向け、海外の取引所に保有しているビットコインを韓国に持ち帰るだろう。その結果、アップビットのビットコイン準備高の増加が見込まれる」とパーク氏は述べた。

「2月末にも(ビットコイン準備高の)大幅な増加を観測した」

ビットコイン価格は当記事執筆時点、24時間でほぼ変化はなく、広範な市場を追うCoinDesk 20 Index(CD20)は5.32%上昇した。

|翻訳・編集:行武 温
|画像:engin akyurt/Unsplash
|原文:Bitcoin Trade That Gave Bankman-Fried His Millions Returns in South Korea