レンダーが急上昇、エヌビディア好決算を受けてAI関連銘柄に期待集まる【マネックスクリプトバンク 格付けレポート 3月】

米国におけるビットコイン現物ETFの承認から早くも2カ月。当初は既存投資家によるグレースケール社のETFの売却や投機熱によって価格が安定しなかったビットコインだが、2月に入ると日米主要株価指数の史上最高値更新も追い風となり、ETFへの資金流入が継続した。そして、2月最終週には価格が大きく上昇し、まずは史上最高値を超える900万円、そして、ついには1000万円という大台に乗った。そんな過熱感の冷めない中、桜咲く季節の近づきを感じる3月の格付けはこれからの波乱の始まりを予感させてくれる。それでは見ていこう。

概観

全体として相場の動きが非常に大きかったため、先月比で得点の増減が非常に大きい結果となった。最も得点を伸ばしたもので+95点、逆に最も得点を下げたもので-108点という結果となった。出来高や時価総額の増加によって流動性リスクの評価が上昇した銘柄が多かった一方で、投機性がリターン比で小さいものは得点をあげ、逆に投機性の方が強いとみなされた銘柄は得点を下げる形となった。

まず、上位銘柄の動向を確認する。1位のビットコイン(BTC)は現物ETFへの需要拡大により、資金流入が継続。投機感の薄れから投機リスクで得点を伸ばし、総合得点は+8点と1月の水準まで戻した。

2位のソラナ(SOL)は相場全体の盛り上がりとともに流動性リスクで評価を伸ばしたが、それ以上に投機リスクの得点が下がり、最終スコアでは-7点と得点をやや下げた。

そんなSOLを上回る下落を見せたのが3位のイーサリアム(ETH)だ。要因としてはSOLと同様であるが、価格の上げ幅がBTCに負けじと非常に大きい月だったことが得点減少率の差を分けた。

デンクンアップデートを目前にその期待で大きく上昇し、BTCに並んで史上最高値を日本円建て、米ドル建てともに更新するなど、マーケットの過熱感を作り出した立役者となった。開発進捗を巡ってボラティリティが高まる場面もあり、価格高騰の反面、投機性が高いと判断されて-71点と大幅に得点を下げた。

格付け更新後の3月13日にはデンクンアップデートが実施され、今後レイヤー2の手数料削減によってETHエコシステムが活性化することが期待されている。しかし、アップデート直後には事実売りによって価格を大きく下げており、やはりこの1ヶ月の大幅上昇が投機に寄っていたことは否めないだろう。

そして4位はなんと前回18位のレンダー(RNDR)となった。これについては後ほど、注目ポイントの項目で詳しく解説したい。RNDRは対象銘柄全体の中でも最も得点を上げた銘柄であり、先月比で+95点となり、主要銘柄をごぼう抜きした。一方、最も得点を下げたのはインジェクティブ(INJ)の-108点であった。INJは先月、増加した得点が最高値の銘柄であったが、ボラティリティが著しく大きいことから投機リスクで得点を大きく下げた。

全体で新たにトップ10に入ったのはRNDRとドージコイン(DOGE)、逆にトップ10から外れてしまったのはバイナンスコイン(BNB)とポルカドット(DOT)であった。DOGEは投機リスクで評価を下げたものの、流動性の上昇がそれを上回り、前回から5つ順位を上げた。BNBとDOTは正反対に投機熱の方が過剰に高まったことから、総合得点を50点以上下げた。

(2024年3月10日付マーケットパフォーマンス格付け:マネックスクリプトバンク作成)

流動性リスク

次に項目別に注目すべきポイントを見ていこう。まずは流動性リスクについて、概観でも述べたように、2月から3月にかけては価格上昇の中で商いが活況となり、得点が向上する銘柄が多かった。一方で、詳細は後述するが、投機リスクの評価を下げてしまう銘柄が多かった。

その中でも、DOGEと柴犬コイン(SHIB)の犬トークンが投機性以上に流動性を評価され、得点を伸ばした。どちらもミームコインでは時価総額や発行開始からの年数など様々な観点でトップの座に君臨している。月初の行きすぎた過熱感で主要銘柄が価格を下げる状況の中、両銘柄も例外ではなく価格を大きく下げている。一方、出来高では一定の水準をキープしているため、流動性の観点では高評価が継続する可能性が高い。そうは言ってもミームコインという性質上、ボラティリティは定常的に高い傾向にあり、投機熱による急落には十分注意したい。

評価対象銘柄のうち、今回流動性の観点で得点を上げたものは21/48、変化なしは19/48、下げたものは9/48となった。約44%の銘柄で流動性が高まった一方、相場全体の盛り上がりに反して流動性で評価が変化しない銘柄や逆に下げてしまう銘柄もあった。これは評価方法が相場全体のトレンドに対してそれを超過した場合に上がるようになっているためである。つまり、得点が上がっていることは流動性がトレンドに対してアウトパフォームしていることを意味する。流動性の水準が一段上に上がった銘柄が多いことは非常に嬉しいニュースである一方、それが短期的かつ異常な急上昇によるものであった場合には、次に述べる投機リスクの評価が下がることで、総合得点が大きくブレてしまう点には注意が必要である。これは格付けの頑健性と照らして改善を要する点であり、今後の評価基準の見直しの際に活かしたい。

投機リスク

投機リスクの観点では上位銘柄の多くが得点を減らしている。この原因は繰り返し述べてきた通りである。そんな中で得点を伸ばしたのはBTCとRNDRだ。BTCは4回目となるマイナー報酬の半減期が迫り、過去3回の半減期と同様に価格レンジが中期的に一段上がることが期待されている。ETFによるまとまった資金流入も踏まえれば、今回の価格上昇は決して投機的な要素だけによるものではなく、継続的なトレンドになりうると捉えることができ、それが点数アップにつながったと考えられる。

RNDRは投機リスクの評価が200点以上上がり、その上げ幅は他と比べても圧倒的である。チャートを見てみるとボラティリティが大きくなっており、投機的な要素は否めないものの、そのリスクをカバーしうるほどの大きなリターンが得られている。3月に入ってからは一段上のレンジで価格を落とすことなく安定的に推移している。このような部分が今回の高評価に繋がった。

今回投機リスクでスコアを伸ばしたのは全48銘柄中8銘柄だけだ。内訳はBTC、RNDR、ファイルコイン(FIL)、グラフ(GRT)、アルゴランド(ALGO)、イオス(EOS)、サンドボックス(SAND)、アクシィ・インフィニティ(AXS)だ。前回ご紹介した、今年注目トレンドの一つであるDePIN銘柄が三つ含まれていることも意識しておきたい。その他にも今回の相場の加熱で、投機リスクの得点が上昇した希少な銘柄は個別に動向をフォローするに値するだろう。

集中リスク

集中リスクはほとんどの銘柄で得点に変化はなかった。唯一、評価が下がったのがRNDRである。保有量の多いアドレスの動向を見てみると、バイナンスでの取引量が急増したことの他に、取引所以外でRNDRを大量保有するアドレスがさらにRNDRを買い増ししたことがわかった。これほどの急激な価格上昇局面で、大量に一つのトークンを保有する投資家が存在することは、そのような大口投資家の動向次第で価格が急落する可能性があることを意味している。波に乗っているRNDRであるが、保有率上位のアドレスの動向には十分に注意したい銘柄でもある。

注目ポイント:RNDRが上位にランクイン、その理由は?

(出所:Messari)

先月のレポートで紹介したDePIN銘柄の一つであるRNDRが、今回の格付けの主役だ。前回からの飛躍的な評価の伸びは驚くべきものであり、その分、RNDRの価格も高騰している。Render Networkは3Dイメージや動画などのクリエイターに向けて制作に必要な性能の高いGPUを提供する分散型コンピューティングプラットフォームであり、RNDRはその利用に必要なネイティブトークンである。RNDRを利用するRender Networkでは、GPUの所有者がクリエイターにGPU計算能力を貸し出すことで、クリエイターが高性能な分散型GPUレンダリングをオンデマンドで利用して制作プロセスを向上するための環境を提供している。

ところで最近GPUという言葉をよく聞いた人も多いのではないだろうか?その言葉の発信源はご存知エヌビディア(NVIDIA)だ。上のチャートの2/22ごろの部分をよくみてほしい。この日を境に元々の上昇トレンドがさらに加速したことが見て取れる。ちょうどこの日はエヌビディアの決算発表があり、業績が元々の強気な市場予想をさらに超えるという嬉しいサプライズがあった。今後ますますGPUの需要が高まり価格も高騰していくことが予想される中、クリエイターにとっては必要量を必要なときに利用できるGPUの価値はますます高まるだろう。このようなRender Networkへの期待が今回のような価格上昇につながったと考えられる。また、GPUトレンドが一定期間継続することが考えられる中では、必ずしも今回の上昇が投機的な側面だけが寄与しているとは思えない。エヌビディアの将来性と関連してRNDRに資金が集まっているとすれば、現在の価格レンジは一定継続するのではないだろうか。

総括

今回の格付けはRNDRの大躍進という衝撃的な結果であった。その背景には世界的な生成AIトレンドが関係している可能性があり、RNDRの値上がりは暗号資産ならではの投機的な上昇だけで説明することはできない。むしろ、数ある暗号資産の中でも世界全体のトレンドに即して価値が成長する銘柄があるということではないだろうか。その証左に同じくAI関連銘柄であるGRTも点数を伸ばしており、AIトレンドが暗号資産相場にも色濃く影響を及ぼしていることがわかる。これまでには、ビットコインのマイニングにはGPUが必要となってくるため、半導体関連株の動きと暗号資産相場は相関があるのではないかと言われてきた。それが生成AIの登場によりさらに強くなったのではないかと考えられる。

今後、生成AIの台風の目であるオープンエーアイ(OpenAI)をはじめ、AI業界の動向がDePIN銘柄をはじめ関連する暗号資産銘柄に与える影響は大きいだろう。ビットコインがETFとして認められた今、暗号資産もいよいよ一人前の金融資産として認識されつつある。そんな今だからこそ、暗号資産の世界で一喜一憂するばかりではなく、よりマクロな視点で相場の動きをウォッチしていきたい。