AIトークン入門編──役割や仕組み、時価総額トップ5を紹介【基礎知識】

AI(人工知能)は多くの業界を変革しているが、暗号資産(仮想通貨)も例外ではない。ブロックチェーンとAIの融合に伴い、AIトークンというユニークな暗号資産が生まれている。

ここでは、AIトークンとは何か、どのように機能するかを解説し、よく知られたAIトークンをいくつか紹介する。

AIトークンを理解する

AIトークンは、ブロックチェーン・エコシステム内でAIベースのプロジェクト、アプリケーション、サービスをサポートする暗号資産だ。

AIトークンは3つのきわめて重要な役割を担っている。

1つ目は取引の促進。AIトークンは、AIを活用したプラットフォーム内での価値交換媒体となる。トークンを使って、ユーザーはサービスの対価を支払い、データにアクセスし、プラットフォームの活動に参加できる。

2つ目は、トークンはプロトコルのガバナンスを実現するうえできわめて重要な役割を持つ。AIトークンの中には、保有者にガバナンス権を与え、AIプロジェクトやプラットフォームの開発や方向性を決める意思決定プロセスに参加する権限を与えるものもある。

3つ目は、AIトークンはユーザーにAIプロトコル/プロジェクトの成長に向けて貢献するインセンティブを与える。データを提供したり、演算リソースを提供したり、AIアプリケーションを開発したりすることによって、AIトークンで報酬を受け取ることができる。

AIトークンの仕組み

AIトークンは通常、以下のような仕組みで機能する。

  • トークンの作成: 多くの場合、イーサリアムのERC-20やBNBスマートチェーンのBEP-20のような標準規格を使用して、プロジェクトがブロックチェーンプラットフォーム上でトークンを作成する。
  • スマートコントラクトの作成:AI関連サービスにおけるトークンの使用方法を定義するスマートコントラクトを作成する。
  • トークンの発行: AIトークンを手掛けるプロジェクトは通常、トークンセールまたはジェネシスブロックでトークンを発行する。
  • トークンの利用:ユーザーは、取引所、ステーキング、またはエコシステムへの参加を通じてトークンを取得できる。その後、トークンを使用してサービスにアクセスし、料金を支払い、ガバナンスに参加する。
  • AIプラットフォームとの統合:プロジェクトはAIトークンをAIサービスを提供するプラットフォームと連携させる。保有者はトークンを使って機械学習(ML)モデルやデータ分析、その他のAI機能にアクセスできる。
  • 分散化: 多くのAIトークンプロジェクトは分散化を目指している。分散型ガバナンスにより、トークン保有者は重要な意思決定プロセスにおいて発言権を持つことができる。
  • インセンティブ: 演算能力やデータなどのリソースをネットワークに提供する人にインセンティブを与えるためにトークンを使用するプロジェクトもある。

詳細はプロジェクトによって異なる。それぞれのAIトークンシステムは独自のルールと目的を持って設計されている。

AIトークン 時価総額トップ5

暗号資産とAIを取り巻く状況は急速に進化しており、この分野のさまざまな側面に取り組む、数多くのプロジェクトが登場している。ここでは、AIトークンの時価総額トップ5を紹介する。

インジェクティブ(Injective:INJ)

インジェクティブ・チェーンは、暗号資産INJを利用したレイヤー2の分散型取引所およびデリバティブ取引プラットフォーム。

最適化されたオーダー実行、戦略テスト、予測分析のためにAIを使用し、証拠金/レバレッジのような高度な取引ツールの使用を可能にする。当記事執筆時点で、INJは時価総額14億1800万ドルを誇る、最大のAIトークンとなっている。

グラフ(The Graph:GRT)

グラフ(GRT)は、ブロックチェーン・データを整理するためのインデックス・プロトコルであり、AI分析を容易に行うための機能を提供する。GRTは時価総額で2番目に大きいAIトークン(当記事稿執筆時点で13億7900万ドル)であり、「Indexer」と呼ばれるノードの分散型ネットワークを擁している。

ノードはGRTをステーキングすることでインデックスを作成し、アプリケーションデータを提供する。

レンダー(Render:RNDR)

レンダーは、需要の高いAI/MLトレーニング/レンダリングタスクのための分散型GPUクラウドコンピューティング・ネットワークを実現する。

ユーザーはGPUにアクセスするためにレンダーをステーキングする。プロジェクトは、グラフィックス能力を貸し出すことへの報酬としてレンダーを与える。時価総額は当記事執筆時点で12億2000万ドル。

シータ・トークン(Theta Token:THETA)

シータ・トークン(THETA)は、分散型ビデオ配信ネットワークのシータの暗号資産。当記事執筆時点の時価総額は9億6000万ドル。

AIとMLのイノベーションを活用し、動画ストリーミングの品質向上とコスト削減を目指している。ユーザーと中継ノードは帯域幅リソースを共有することでシータを獲得する。

オアシスネットワーク(Oasis Network:ROSE)

オアシスネットワークは、ブロックチェーン上でプライバシーを保護したAI計算を可能にする。

当記事執筆時点で時価総額は5億6700万ドル。ROSEは、ノードのネットワークを調整し、Intel SGX、差分プライバシー、連合学習などのテクノロジーによって安全なコンピューティングを提供する。

AIトークンの可能性とリスク

ブロックチェーン・プラットフォームがマスアダプションを目指すなか、AIによるイノベーションは新たな能力と効率性を引き出すために不可欠な存在だ。

AIに特化したトークンは、分散型の文脈のなかでAIを発展させるために必要なインセンティブとコラボレーションをサポートする。機械学習(ML)プロセスのトークン化がオンチェーンで進むにつれ、大きな可能性を秘める。

しかし、多くの暗号資産と同様に、技術的に複雑で変動しやすいものであることに変わりはない。デューデリジェンスを十分に行うことが重要となる。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:A Beginner’s Guide to AI Tokens