仮想通貨マイニング・モデムを使ったIoTネットワーク、全米250超の都市に展開

仮想通貨マイニング・モデムを使ったIoTネットワーク、全米250超の都市に展開

Brady Dale
公開日:2019年 9月 25日 18:00
更新日:2019年 9月 25日 19:33

仮想通貨マイニング・モデム

IoTスタートアップ「ヘリウム(Helium)」が初めて仮想通貨マイニング・モデムを発表したとき、販売はテキサス州オースティンに限られていた。

オースティン向けの最初の生産分は早々に完売したが、現在、ヘリウムは、はるかに広範囲となるアメリカ国内263都市に向けて製品を販売している。

主要都市は、ニューヨーク、サンフランシスコ、ボールダー、デンバー、アトランタ、シカゴ、ダラス、ヒューストン、シアトルと同社広報担当者は語った。製品の出荷は10月に開始される予定。

簡単に言うと、ヘリウムは、電動スクーター、シンプルなセンサー、ペットトラッカーなどのIoTデバイスが、低容量のデータを迅速かつ極めて低コストでインターネットに送信できるようにするネットワーク機器(ホットスポット)。

家に設置されたヘリウムは、ノードの位置確認、データのシーケンス確認、ネットワーク経由でデータを送信するデバイスの位置確認など、ネットワークに有益なタスクを実行してヘリウム・トークンをマイニングする。

ヘリウムを使ってデータを送信したい企業は、ヘリウムをバーン(焼却)させることでしか得られないセカンドトークンを支払う必要がある。

言い換えると、495ドルのヘリウム・ホットスポットを設置してインターネットに接続したユーザーに報奨を与えることで、このシステムは人々にヘリウムの代わりにネットワークを展開するインセンティブを与えている。つまり、ヘリウムは自社でネットワーク機器を展開しなくて済む。

コンピューティング・ネットワークの経済モデルを研究しているピッツバーグ大学のマルセラ・ゴメズ(Marcela Gomez)氏は次のようにCoinDeskに語った。

「コグニティブ無線(複数の無線方式が選択できるエリアで、最適な無線方式を選択する技術)の分野では、データ転送時にネットワーク・リソースを効率的に使用できるように、無線機器が互いに協調する複数のアプローチが研究されてきた。ヘリウムのケースは、これを実践する良い例のようだ」

ユーザーからのフィードバック

ヘリウムのCOO(最高執行責任者)フランク・モン(Frank Mong)氏は、同社は短期間でオースティンに可能な限り多くのホットスポットを展開することで多くの教訓を得たとCoinDeskに語った。

この製品は、ネットワーク構築に興味を持つ多くの人を引き付けたが、必ずしも仮想通貨に詳しい人たちではなかったため、ヘリウムはユーザーエクスペリエンスを改善するために多くの変更を行う必要があった。

「実際の消費者が使っているホットスポット・エリアが1日で構築できたことは、我々にとって間違いなく良い学習体験だった」とモン氏は語った。

例えば、同社はトークン・プールのサイズを劇的に増やし、ユーザーがトークンを部分的にではなく、全体を受け取れるようにした。部分的だと混乱するユーザーもいた。

相対的には同じ量になるが、ユーザーにどう見えるかが問題とモン氏は述べた。

同社はすでに、大きなポジションを獲得しようとする動きがあることを認めている。

「起業家や、テック、IoT、不動産の世界にいる人々は、ネットワーク構築やアクセス提供を理解している。そして、早いことにはアドバンテージがある」

初期の熱狂的ファンのなかには、ヘリウムを50個購入して自身で設置し、ヘリウムの仕事をより容易にしている人もいる。

さらに興味深いことに、ヘリウムは現実の状況でネットワークがどのように稼働するかを学ばなければならなかった。

ヘリウム・ホットスポットは、信号を送信したり、ネットワーク上の他のノードと三角測量を行うことで常に位置を確認している。ヘリウムは、ほぼどんなものでも通過できるスペクトルを使用しているが、素材や条件が送信に影響を与える可能性は依然として残っている。

「こうした基本的なことは、ネットワークに参加する前には分からない。ネットワークに加わった後で初めて分かる」とモン氏は述べた。

「ホットスポットが稼働し始めると、それは学習し適応する生命体のようなものになる」

近いうちに、このシステムに興味を持つ関係者が参加する方法が増えるとモン氏は述べた。例えば、データを送信せずに台帳を保存するブロックチェーン・ノードの提供などだ。

大手通信企業との戦い

ヘリウムのトークンは取引所では扱っていない。だが、ヘリウムのトークンをマイニングしている人は誰でも、ヘリウムを手にいれれば望むことは何でもできる。

とはいえ、最終的にはユーザーは他のユーザーにヘリウムを販売できるようになる。だが、販売できるのはデータクレジット建てトークンのみ。つまり、ユーザーはウォレットにクレジットの行き先を指定し、支払いを受け取って、ヘリウム・トークンをバーンする。

そうすれば、ネットワークを利用しているスクーター企業は自社のデータ・クレジットを補充でき、同社のスクーターはヘリウム・ネットワークを経由してデータを送信できる。

食品大手のネスレ、ペットトラッキング企業のInvisiLeashといったヘリウムの初期パートナーは現在ネットワークを利用しているが、まだ費用を支払っていないとモン氏は語った。だが、その日は来るだろう。

もちろん、企業ユーザーには他の選択肢もある。

「IoT分野では、大手通信会社が低コストで、IoTサービス向けにレガシーネットワークを提供している(例えば、AT&TのLTE-M、NB-IoTなど)」と、ビッツバーグ大学のゴメス教授は電子メールで述べた。

「ヘリウムの課題の1つは、この分散型ネットワークを構築するために十分なインセンティブを提供することだろう」

ReadWrite Labsの創設者であり、IoTに長年投資しているカイル・エリコット(Kyle Ellicott)氏は、現状の競争をそれほど心配していなかった。ほとんどの大手通信会社は既存インフラや5Gで顧客を獲得しようとしているが、温度計のデータをウェブに送信するにはまだコストがかかりすぎるだろうと同氏は語った。

さらにエリコット氏は、大手通信会社には見過ごされがちな場所も、ヘリウムの草の根アプローチなら簡単に追加できると述べた。例えば、センサーでデータを集めたい大規模農場は、数千ドル以下のコストでヘリウム・ホットスポットをいくつか設置すれば、広大な土地をカバーできる。

エリコット氏は次のように述べた。

「ヘリウムや他の企業が行っているこのプロセスは、我々の生活全体に存在するテクノロジーの世代におけるネクスト・ステップだ」

翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸
写真:Photo of Helium team members, Pierre Defebvre, Andrew Allen, Rahul Garg and Brian Bussiere (Courtesy photo)
原文:Crypto-Powered IoT Networks Are on Their Way to Over 250 US Cities