イーサリアムで人気のリステーキングがソラナにも──懸念すべきか

もしあなたが伝統的な金融業界に身を置いているのなら、「お金が眠っているのなら、もっと働かせろ」ということをご存じだろう。

あなたは例えば、担保を金庫の中で眠らせているブローカーだろうか? それではつまらない! 再担保化すればいい! あなたの取引のために使おう!

そして、リーマン・ブラザーズに端を発した2008年の世界金融危機は、何が間違った方向に進み得るかを説明してくれる。

リステーキング

暗号資産(仮想通貨)業界は独自の再担保化を発明した。リステーキングだ。EIGENトークンのエアドロップが迫っているアイゲンレイヤー(EigenLayer)が注目を集めたことで、イーサリアムで人気が出た。

プルーフ・オブ・ステーク(PoS)ブロックチェーンであるイーサリアムの仕組みは、バリデーターと呼ばれる人々がイーサリアム(ETH)をネットワークに「ステーキング」することに依存している。

バリデーターはイーサリアムを担保にすることで、利息のような報酬を得ることができる。しかし、イーサリアムはロックされて、眠ったままだ。金融エンジニアはそのような状態を嫌悪するだろう。

リステーキングでは、ロックされたイーサリアムはデリバティブ化されることである意味解放され、イーサリアムの所有者はもう少しお金を稼ぐことができる(これを可能にするアイゲンレイヤーのようなリステーキングプラットフォームも同様に利益を得ることができる)。

現在、数十億ドルものイーサリアムがリステーキングされている。CoinDeskのダニー・ネルソン(Danny Nelson)記者は、複数の企業がソラナ(Solana)にもリステーキングをもたらそうとしていると報じた。

誰もがこのアイデアに熱心なわけではない。支持者に言わせれば、リステーキングはソラナスタートアップのブロックチェーンアプリをより安全なものにするのに役立つ。

批判的な人たちは、システミック・リスクを懸念している(何か問題が起これば、2008年のように、相互のつながりによって、即座にひどい状況になり得る)。

一方、イーサリアムのリステーカーは、おそらく現在のイーサリアムのステーキング利回り(CESRによると3.13%)よりも多くの利回りを喜んで手にしている。

楽しめる間は、楽しいものだ。

メタマスク vs MEV

正直に言うと、私はMEV(maximal extractable value:最大抽出可能価値)に興味津々であると同時に、本当に困惑している。

大雑把に言えば、MEVはバリデーターが利益を最大化するためにブロックチェーンにトランザクションを追加する順番を変えることだ。私の(おそらく未熟な?)目には、その一部は裁定取引に似ているように見える。TradFi(伝統的金融)における、顧客の取引のフロントランニングのようにも見える。

フロントランニング:金融商品取引業者またはその役職員が、顧客から有価証券の売買の委託等を受けた場合、その売買を成立させる前に、自己の計算において同一銘柄の売買を成立させることを目的として、顧客の注文より有利な価格(同一価格を含む)で有価証券の売買を行うことをいい、金融商品取引法で禁止されています。(日本取引所グループ|用語集

ご想像の通り、MEVが好きな人もいれば(MEVに携わることで、あるいはMEVを可能にしたり、MEVと戦ったりするツールを作ることでお金を儲けている人たち)、嫌いな人もいる。

いずれにせよ、広く普及しているイーサリアムウォレットのメタマスク(MetaMask)は、メタマスクユーザーをMEVから保護するために設計された新機能を導入している。

これはTradFiのダークプールを思い起こさせる。大口注文の発注者に逆らって価格を動かそうとする者から保護するために、注文が執行されるまで注文の詳細が見えないようになっている株式取引プラットフォームだ。

ダークプール証券取引所を通さず、投資家の売買注文を証券会社のシステム上でつけあわせて成立させる取引手法のうち、売り買いの希望価格である気配値が提示されないもの。 英語表記「Dark Pool」は「Dark Pool Liquidity」の略称で、直訳すると「見えない流動性」となります。(大和証券|金融・証券用語解説

暗号資産にはMEVがあり、TradFiには高頻度トレーダーがいる。マネーの世界に新しいものは(ほとんど?)ないのかもしれない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Cindy Tang/Unsplash
|原文:Restaking Is Hot in Ethereum and Entering Solana. Should We Worry?