暗号資産シンギュラリティ、到来

暗号資産(仮想通貨)の懐疑論者も、熱烈な信者も長年、ブロックチェーンテクノロジーのメインストリーム・ユースケースの欠如を批判してきた。何千もの分散型アプリケーションが導入されているが、メインストリームのユースケースはほとんど存在しない。しかし、状況は変わろうとしている。

シンギュラリティ(特異点)とは、物質が無限に密集した点のこと。そのような点が爆発してビッグバンが起き、宇宙全体に物質が広がったと理論化されている。我々は今、暗号資産の歴史において似たような瞬間にいると考えている。

デベロッパーたちはここ1年、ビルダーたちに高速で安価なブロックスペースを提供してきた。

主要ブロックチェーンは大きく前進している。イーサリアムは3月にデンクン(Dencun)アップグレードを実施し、レイヤー2(L2)ユーザーの取引コストを0.01ドル未満に削減した。ソラナは昨年まで悩まされていたダウンタイム問題を(ほぼ)解決し、同プロトコルの経済価値の大幅な急上昇につながった。

新規参入も相次いでいる。

スイ(Sui)、セイ(Sei)、アプトス(Aptos)などの新しいレイヤー1ブロックチェーンが過去1年半の間に登場し、前例のないレベルのスループットを約束している。このプロセスはまだ完了には程遠く、2024年以降も斬新な設計要素を持つ、期待の新しいブロックチェーンが続々と登場する予定だ。

実験段階の始まり

投資家のクリス・ディクソン(Chris Dixon)氏は新著『Read Write Own』の中で、「インフラが非常に優れたものとなり、アプリケーション開発者がインフラについて考える必要がなくなる時が重要な瞬間だ」と予測している。

暗号資産が誕生して以来、アプリケーション開発はインフラのことばかり考える必要があった。暗号資産のユースケースについて斬新なアイデアがあったとしても、インフラの制限によって実行に移せなかっただろう。

現在では、多様な設計の複数のブロックチェーンが、大規模に低コストで確実に運用できるため、デベロッパーは「何ができないか」よりも「何ができるか」に集中することができる。

下図は、実験できるテクノロジーがどれだけあるかを示している。

最近では、分散型ソーシャルメディアやソーシャルファイナンスの斬新なアイデアが登場している。例えば、高スループットのブロックチェーンソリューションを活用して現実世界のユーティリティを実現するDePINネットワーク、分散型計算ネットワークやAIエージェントプラットフォームなどのAI関連ツールだ。

やがて、どのようなインフラがニーズに最も適しているかが解明されるにつれて、斬新なアプリケーションはますます普及し、性能も向上していくだろう。

おそらくこのプロセスは、モジュラーソリューション上で実行されるスケーリングされた各種アプリケーションがイーサリアムへと回帰して終わるか、あるいはモノリシック(一枚岩)なビジョンが勝利し、ソラナ、モナド(Monad)、アプトス、またはスイが多くの人に好まれるブロックチェーンになるかもしれない。

結局のところ、どのようなソリューションが最も効果的かは、大規模にテストできるようになった後で市場が決めることになるだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:The Blockspace Singularity