ベネズエラ移民、ビットコインで送金も、問題あり

ベネズエラ移民、ビットコインで送金も、問題あり

Brady Dale
公開日:2019年 11月 5日 07:00
更新日:2019年 11月 5日 07:00

2018年、デイメル・ゴンザレス(Deimer González)氏は大学の卒業証書と洋服、1.5ビットコイン(BTC)の入ったモバイルウォレットを荷物に詰めて、ベネズエラを出国した。その後2019年を通して起きたことは、世界中のベネズエラ人ビットコインユーザーの共有するところである。

カラカス出身の機械エンジニアとして、かつてはベネズエラ国営石油・天然ガス会社(PDVSA)に勤めたゴンザレス氏はCoinDeskに対して、アルゼンチンのブエノスアイレスで新しい生活を築き始める中、その少しの蓄えによって両親を支えることが可能になった、と語った。

「蓄えがあったおかげで、ペソの給料に手を出すことなく、いつでもお金を送金することができました」と、ゴンザレス氏は語った。

2019年の送金額は推定で37億ドル(約4,000億円)と、海外からの資金がベネズエラ人家族にとってますます大きな収入源となっている。そのため、国境を超えた取引を円滑にするにあたり、ビットコインや仮想通貨がより大きな役割を担うようになってきた。

さらに、職を持たない移民が新しい国で金融サービスにアクセスすることは多くの場合困難なため、移民は移住のプロセスの間にも仮想通貨を使っている。

チリに同国通貨での蓄えを持たずに到着した時の経験をCoinDeskに語ったカラカス出身のトレーダー、ウォルファン・バリオス(Wolfang Barrios)氏の場合も同様だ。バリオス氏は次のように述べた。

「安定した仕事も、十分なお金も銀行口座も持っていませんでした。仮想通貨を利用してのみ、送金が可能だったのです」

さらに、ベネズエラの家族を支えることは、ドルでも簡単ではない。ベネズエラの経済学者ルイス・オリヴェロス(Luis Oliveros)氏は2019年5月、同国での5人家族の生活費をひと月900ドル(約9万8000円)、ベーシックフードバスケットはひと月約300ドル(約3万3000円)と見積もった。その額の大きさを理解する助けとして、経済学者はこの水準が長く続くとは考えていないがベネズエラの現在の最低賃金は、ひと月に15ドル(約1600円)である。

ゴンザレス氏の場合には、PDVSAの社員としてのひと月5ドルの給料も、ビットコインの送金だけでも、家族を支えるには十分ではなかった。

「今は50ドル(約5400円)(相当のビットコイン)を送っていますがそれでも何にもなりません」とゴンザレス氏は述べ、両親は家計を支えるために現在2人共働かなければならず、ベネズエラから出ていくことは計画していない、と付け加えた。

送金事業

おそらくこうした困難のために、仮想通貨送金事業はベネズエラで盛んになり始めているのかもしれない。

下の名前のヘスス(Jesús)のみで紹介されることを希望したある起業家は、ペルー-ベネズエラ間の送金プラットフォーム「ローカル・レメサス(Local Remesas)」で働いている。

「弊社ではひと月に20万ドルから30万ドル(約2170万から約3260万円)の送金を受けます」とヘスス氏は述べ、ベネズエラで後ほどボリバルに両替するために、同プラットフォームでは現在、いかにしてペソとビットコインを交換しているかを説明した。

蓋を開けてみれば、ニッチな法定通貨から仮想通貨への支払い処理は、ベネズエラでは儲かる事業だったのである。

ペルーの移民警察によれば、ベネズエラの移民にとってペルーは2番目に人気の国で、今までに86万5000人を超える移民がやってきた。ニコラス・マドゥロ(Nicolás Maduro)大統領が率いる政府さえも最近、ブロックチェーンベースのペトロ(PTR)を利用した独自の送金プラットフォームを立ち上げた。

ヘスス氏は、最高のレートで両替するためのコツは、直接の知り合いを利用することだとして、次のように語った。

「自分の知り合いを通すより、ローカルビットコインズ(LocalBitcoins)を利用する方が3%ほど高くつきます」

問題点

しかし、多くのビットコインユーザーにとって、仮想通貨での支払いは最後の手段に過ぎない。

1日のインフレ率が3%で、ボリバルが常に切り下げられることによって、ベネズエラで暮らす人にとってビットコインの交換は非常に便利なものとなっている。しかしラテンアメリカのその他の国では、状況が耐えられるものになればすぐに、法定通貨を利用することをより好むビットコインユーザーも存在する。

メキシコ在住のベネズエラ人の仮想通貨支持者マリルナ・デ・ラ・コンチャ(Mariluna De La Concha)氏はCoinDeskに対して、自身が2016年から2019年初頭までは家族に仮想通貨で送金を行なっていたと語った。現在では、母親にペソのみを送金している。

「仮想通貨の交換は不便です」とコンチャ氏は述べ、次のように続けた。「ベネズエラはインフレなので、良い価値が認められますが、ここメキシコからでは、非常に高くつきます」

費用が高いが規制を遵守した取引プラットフォームを利用するというコンチャ氏の選択は、安全のためでもあった。ベネズエラの非公開のチャットでは、ベネズエラ人が保有するアメリカの銀行口座が取引の後に報告、凍結された詐欺の事例が匿名で報告されている。

匿名の情報源はCoinDeskに対して、ビットコインユーザーを脅迫するために、政府警察によって取引プラットフォームの取引が追跡されているという疑いすらもある、と述べた。

2018年に祖国を逃れた機械エンジニアのゴンザレス氏は、このような状況のために法定通貨をより多く送金するように切り替えた。ゴンレザス氏は次の通りに語った。

「今はどちらかというと(ビットコイン)保有者という感じです」

翻訳:山口晶子
編集:T.Minamoto
写真: Venezuelan Bolivar  image via Shutterstock
原文:Venezuelan Migrants Are Using Bitcoin for Remittances, But There’s a Catch