
- テザーは、アデコアグロの株式保有比率を51%から70%に引き上げた。
- この動きは、テザーが現実世界のインフラへの投資を強化していることを反映したものだ。
- アデコアグロの取締役会の再編は、テザーの長期戦略とのより深い整合性を示唆。
時価総額約1500億ドル(約21兆4500億円、1ドル143円換算)のステーブルコインUSDTの発行者であるテザー(Tether)は、約10億ドル(約1430億円)の時価総額を持つラテンアメリカの農業企業アデコアグロ(Adecoagro)の株式70%の取得を完了した。
テザーは当初、2024年9月にアデコアグロに1億ドル(約143億円)を投資し、株式の9.8%を取得。その後2025年2月に51%への引き上げを提案し、最終的に2025年3月に70%まで引き上げて支配権を獲得した。
この過半数株式の取得により、テザーは同地域で最も有名な食品・バイオエネルギー生産企業の1つを支配することになる。アデコアグロはブラジル、アルゼンチン、ウルグアイに砂糖工場、米農場、酪農事業、再生可能エネルギー資産を保有している。
テザーは、分散型金融とサービスが行き届いていない市場への投資を通じて「経済的自由」を促進するという同社のミッションに合致させながら、アデコアグロの生産量拡大を支援することを目指していると述べた。
現実資産のトークン化を推進
この動きは、テザーが昨年、資産トークン化サービス「ハドロン(Hadron)」をローンチしたことからも分かるように、現実資産(RWA)をトークン化するという同社の野望の一環である可能性がある。このプラットフォームは、債券、コモディティ、株式、その他のステーブルコイン、ロイヤルティポイントなど、幅広い現実資産をブロックチェーン上でデジタルトークンに変換するプロセスを簡素化することを目的として設計された。
「農業と再生可能エネルギーにおけるアデコアグロの実績ある専門知識と連携することで、我々は伝統的な産業と分散型金融の未来、そして経済的エンパワーメントの橋渡しをするための具体的な一歩を踏み出すことになる」とテザーのCEO、パオロ・アルドイノ(Paolo Ardoino)氏は述べた。
この取引を受けて、アデコアグロの取締役会も再編された。5人の取締役が退任し、テザーとその戦略的目標に関係する幹部が後任に就任。政治と農業に関心を持つウルグアイの実業家、フアン・サルトーリ(Juan Sartori)氏が会長に就任した。
テザーは過去1年間で、ビットコインマイニング、AI、暗号化通信といった分野でベンチャービジネスを展開してきた。アデコアグロの株価は30日に2.6%上昇した。
|翻訳・編集:廣瀬優香
|画像:Shutterstock
|原文:Tether Finalizes Buying 70% of Adecoagro Stake, Securing Tokenization Ambition