ソラナ・トレジャリー戦略のパイオニア、DFDVが仕かけるエコシステム拡大とグローバル事業

米ナスダック上場企業のDeFi Development Corp.(DFDV)は、ソラナ(Solana)エコシステムにおけるデジタル・アセット・トレジャリー(DAT)業界のパイオニア的存在だ。上場企業を買収して、ソラナ・トレジャリー戦略を発表。社名を4月にDFDVに変更して以来、積極的にソラナ(SOL)を蓄積し、直近の保有高は約180万SOL、約3.9億ドル(約580億円)相当を超える。企業評価額(時価総額)は年初の約800万ドルから、約3.6億ドル(約530億円)に急拡大している。

また、ソラナ・エコシステムを代表するDEX(分散型取引所)のOrcaと提携し、独自リキッド・ステーキング・トークン(LST)「dfdvSOL」の流動性プールの立ち上げやトークン化した自社株式のスワップ実装など、エコシステムとの連携、および伝統的金融(TradFi)の融合を強化してきた。さらにOrcaは、米国でSolana Policy Instituteなどとともに「Project Open」に参画し、RWA(現実資産)のオンチェーン展開や透明性向上を推進している。RWAに取り組むOrcaと、ソラナ・トレジャリー戦略を進めるDFDV──両社の連携はエコシステム拡大に向けた新しい動きを生み出している。

DFDVの今後の戦略について、Orcaのアジア太平洋地域担当事業開発責任者のRGが、DFDVのCIO兼COOのパーカー・ホワイト(Parker White)に聞いた。

「クラーケン・パイレーツ」によるソラナ・トレジャリー戦略

──DFDVはどのような企業なのか。またチームのバックグラウンドを教えてほしい。

私たちは、ソラナ・トレジャリー戦略のリーディングプレイヤーだ。ビットコイン・トレジャリー企業として知られるストラテジー(Strategy)や日本のメタプラネットのソラナ版と言えるだろう。彼らの“プレイブック(戦略のひな型)”を、ソラナ特有の機能を活かして拡張している。具体的には、ソラナのステーキングやバリデータ運用、自社株のトークン化などだ。

さらに、独自のLST(リキッド・ステーキング・トークン:ステーキング資産を裏付けに発行されるトークン)を発行し、複数のDeFi(分散型金融)展開を行い、ソラナ・エコシステム全体の成長を支援している。

チームは、全員が元クラーケン(Kraken=米大手暗号資産取引所)のメンバーで、すでに暗号資産事業に長く携わっている。CEOのジョセフ・オノラティ(Joseph Onorati)は2013年、カナダ初のビットコイン取引所のCEOを務めた。私自身も2017年からこの業界に身を置いている。

──元クラーケンのメンバーで「ソラナ・トレジャリー事業を始めよう」と決めた経緯は?

ジョセフと私は、今年2月に会い、ストラテジーの動きを見て「これをソラナでやろう」と決断した。その後すぐにジョセフの人脈を通じて、小規模なナスダック上場企業を見つけ、議決権の9割を持つ株主から買収した。わずか2カ月という記録的なスピードだった。

その後、「最高のチーム」を作りたいと考え、信頼できるメンバーを元クラーケンの人たちを中心に集めた。また社外で関わる多くのパートナーやサービスプロバイダーも元クラーケンが多い。私たちはこれを「クラーケン・マフィア」「クラーケン・パイレーツ」と呼んでいる。

コミュニティ拡大がTradFi(伝統的金融)を動かす

──DFDVは、ソラナを代表するDEX(分散型取引所)のOrcaやミームコインプロジェクトのBONKとの連携、レンディングプロトコルとの協業など、多くのパートナーシップを進めてきた。その背景や理由は?

私たちが第一に望んでいることは、ソラナ・エコシステムの成長を支えることだ。トレジャリー企業として大量のソラナを保有しており、その価値がさらに成長してほしいと願っている。

成長に不可欠なのは、コミュニティの拡大だ。そのためにも、パートナーシップを通じてプロジェクトに信頼性を生み出していきたい。上場企業である私たちとのパートナーシップは、彼らにとっても一定の信用につながるはずだ。

同時に、こうした取り組みを通じて、伝統的金融(TradFi)からブランド認知や注目を引き寄せることもできると考えている。そのために私たちは多くの時間を投じて投資家と対話し、ソラナとは何か、私たちのビジネスがどう機能しているのかを伝えている。

投資家の多くは、まずDFDVの株を買うことから始めるだろう。そこからソラナの“ラビットホール”に入り込む──つまり関与を深めながら、エコシステム全体を理解していくようになる。その過程で私たちのパートナーにも注目し、他の領域にも関わるようになるだろう。

──機関投資家がDFDVに関心を持つとき、一番の“フック”となるものは何か。

ブランド認知を築くことがまず重要だ。究極的にはソラナ・エコシステムのチャンピオンとして認識されたいと考えている。ストラテジーのマイケル・セイラー氏が強力な旗振り役となってビットコインの価値を高めたように、私たちもソラナの先頭に立つことで、大きな価値を生み出したいと考えている。

もちろん、ブランド認知だけでなく、実際の経済的価値も伴う。例えば、WIFやBONKといったミームコイン・プロジェクトとの提携、ソラナ上のドメイン・ネームプロジェクトであるAllDomainsでのバリデーター運用、Orcaにおける株式トークンの流動性プール支援、自社のLST「dfdvSOL」の提供などだ。

〈株式トークン「DFDVx」:Orca〉

私たちはエコシステム内の多様なプロジェクトと連携し、株主に現実的な価値を還元している。これは重要な点だ。そして、ブランド認知と経済的価値は切り離せない両輪となる。今はブランドを広げる段階だが、その先ではパートナーシップをさらに活用して、より大きな経済的価値へとつなげていきたいと考えている。

──デジタル・アセット・トレジャリー(DAT)というモデルが拡大しつつある中で、DFDVがこれまで進めてきたエコシステムへの貢献やパートナーシップは、すでにソラナを保有している伝統的金融機関に今後、影響を与えるだろうか? 例えば、彼らがDeFi(分散型金融)に乗り出すことにつながるだろうか?

私たちの存在は、必ずしも伝統的金融機関のDeFi利用を直接的に促すものではないだろう。DeFiには一定の複雑さがあるからだ。ただし、流動性が拡大し、エコシステムに対する認知が高まり、私たちのようにオンチェーンで活動する上場企業がグローバルで次々と登場すれば、自ずとエコシステムは成長していく。そしてエコシステムが大きくなれば、さらに多くの参加者を引き寄せることになる。

そうすれば、これまで二の足を踏んでいた金融機関や大企業にとっても、オンチェーンで活動することが当たり前になるのではないか。

「ゆっくり、そして突然に」

──今、多くの人がRWA(Real World Asset=現実資産)のトークン化を話題にしている。エコシステムと連動して、独自LSTを発行したり、自社株式をトークン化する中で、どんなメリットや課題、あるいは学びがあったのか?

株式のトークン化では、xStocksやクラーケンと連携した。またOrcaと連携して独自LST「dfdvSOL」の流動性プールを立ち上げるといった取り組みも進めた。

その中での大きな学びは、「オンチェーンに乗せれば自然に広がる」ことは決してなく、人々が積極的に利用したくなるような強力なユースケースが不可欠という点だ。そしてこれは「ゆっくり、そして突然」広がっていく。

例えば、最初の大規模なトークン化RWAは2015年に登場したドル建てステーブルコインのUSDTだが、当時は目立たなかった。しかし、10年経った今ではステーブルコインは「新しいホットな話題」として注目されている。私からすれば「なぜ今になって、これほど騒がれるのか」と感じるが、これこそが「ゆっくり、そして突然に」という現象だ。

つまり、まずは資産をトークン化・オンチェーン化して世の中に出すことが重要で、その上で、マーケティング、流動性の確保、ブリッジの改善などを行っていかなければならない。オンチェーンとオフチェーンをつなぐクラーケンのような存在を増やすことも必要だ。やるべきことは、まだまだ多い。

フランチャイズモデルでグローバル展開

──デジタル・アセット・トレジャリーのムーブメントは米国が先行している。日本やシンガポール、EU、イギリスといった市場をどのように見ているか?

「Treasury Accelerator Program」を約1カ月前に立ち上げた。これはいわばフランチャイズモデルで、各国でトレジャリー企業を立ち上げることを支援する仕組みだ。対象はソラナをはじめ、ソラナ基盤のトークンも含み、米国を含むグローバル展開を想定している。 

DFDVは、バックエンドのインフラを提供し、事業会社の設立や資金調達の支援も行う。つまり、DFDVはマザーシップ(母艦)として、世界中の新しいトレジャリー企業が生み出す経済的価値に参加できるようになる。今、まさにこの取り組みに強くフォーカスしているところだ。

目標は近い将来、世界中の主要市場にDFDVブランドのソラナ・トレジャリー企業を展開することだ。すでにいくつかは動き始めており、近く発表できるだろう。グローバルで50〜100社規模のDFDVブランドの企業を立ち上げるまで拡大させていきたい。

──トレジャリー戦略において、こうしたフランチャイズモデルの取り組みは、DFDVが初めてになるのか?

私たちが初めてではない。ビットコインでは、デビッド・ベイリー(David Bailey)氏率いるNakamoto Holdingsがすでにフランチャイズモデルを展開している。ただし、「Nakamotoブランド」を冠したものはなく、それぞれ異なる名前で展開されている。

私たちのアプローチは違う。すべてを「DFDVブランド」で統一する。共通のウェブサイトで指標を公開し、1株当たり資産の成長にフォーカスし、同じ運営原則を適用する。

イメージとしては、見知らぬ土地で名前も知らないハンバーガーショップよりも、黄金のMのアーチを掲げたショップを信頼するようなものだ。

市場と対話しながら、ソラナのストーリーを広める

──2〜3年後のDFDVをどうイメージしているか?

重要なことは、投資家にソラナのストーリーを語り広めることだ。マイケル・セイラー氏がビットコインのストーリーを作り上げ、多くの機関投資家に浸透させたように。そのために、市場の声に耳を傾け、実際に市場に出て、いろいろと試してみる。

私たちの願いは、投資家が部屋に入ってきて「ビットコインは理解している。ソラナでは最近、どんな面白いことが起きているのか」と自然に聞いてくることだ。投資家はソラナのストーリーをすでに理解しており、「ソラナとは何か」をイチから説明する必要はない。それが私たちの最終的な目標でもある。

プロフィール

パーカー・ホワイト(Parker White):DeFi Development CorpのChief Operating Officer(COO)兼Chief Investment Officer(CIO)。直近6年間を米暗号資産取引所クラーケンで過ごし、エンジニアリングディレクターなど複数の役職を歴任。それ以前の5年間は伝統的金融機関で、債券取引とポートフォリオ運用を担当。2017年に暗号資産業界に入り、2020年からは暗号資産分野でのエンジェル投資も行う。2021年から、ソラナで活発に活動している。Bitcoin Venture Fundを運営するTVPのアドバイザリーボードにも名を連ねている。

RG:国内暗号資産取引所の事業開発・プロダクトマネージャーなどを経て、2022年にOrcaにジョイン。アジア地域を中心として、DEX上の流動性に関連する事業開発・戦略等を担当している。

Orcaは、ソラナ・エコシステムのトークン発行者、トレーダー、流動性提供者をつなぐ存在で、最近ではRWAの統合を強化。金利付きトークン(Interest Bearing Tokens: IBT)のサポート開始から、オンチェーン株式などの検討も進めており、伝統的金融(TradFi)との融合を目指すDFDVと足並みを揃えている。

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