地方創生の実例と導入・活用を議論:「Web3で加速する地方創生」8月・9月開催オンラインセミナーレポート

CoinDesk JAPANを運営するN.Avenueは8月29日と9月12日、地域が直面する課題に対して、Web3技術をどのように活用できるかを探るオンラインセミナー「Web3で加速する地方創生」を開催した。7⽉に岡⼭と島根で開催したセミナーの成果を踏まえ、より実践的な内容へとステップアップするためのプログラムだ。

共催は、経済産業省中国経済産業局、おかやまデジタルイノベーション創出プラットフォーム(OI-Start)、グリーンイノベーションセンター(GIC)。

8月29日の登壇者は以下の3名。

・DAOの組成支援事業を手がけるガイアックス Chief web3 Officerの峯 荒夢氏

・web3教育×地方創生×DAOのPBL(Project Based Learning、課題解決型学習)に取り組む戸板女子短期大学教授の川嶋比野氏

・島根県隠岐郡海士町で「大人の島留学」「海士町オフィシャルアンバサダー制度」「AmanowaDAO」を創設した海士町 関係人口経営特命官の青山達哉氏

モデレーターはN.Avenue代表取締役社長の神本侑季が務め、主にそれぞれが取り組む事例を中心に、Web3、特にDAO(分散型自律組織)を地方創生に活用する際のポイント、課題、今後の展望などを語った。

9月の登壇者は以下の3名。

・地域イノベーションを牽引するエンジニア兼起業家で、一般社団法人 Hiroshima Web3協会 代表理事/株式会社CodeFox 代表取締役の進藤史裕氏

・8月から連続の登壇となったガイアックス Chief web3 Officerの峯 荒夢氏

・Web3マスアダプションに不可欠なデジタルウォレットを手がける株式会社HashPort 執行役員 営業統括/大阪・関西万博担当の宮田健佑氏

モデレーターは、CoinDesk JAPAN編集長の増田隆幸が務め、前回の事例に基づいた話を受けて、「実際にDAOをどのように導入・活用していくか」という観点から、Hiroshima Web3協会からは「地⽅創⽣におけるWeb3.0事業構築ガイドライン」、ガイアックスからは合同会社型DAO、HashPortからはウォレットやステーブルコインの取り組みが紹介された。

8月:事例を中心に課題、展望を議論

DAOで地域課題に挑む

最初に登壇したのは、ガイアックスの峯氏。同社が支援する「美しい村DAO」「ぐんま山育DAO」の事例を通じて、DAOの概要、そのメリットなどを解説。

「DAOは参加者がオーナーでありユーザーでありワーカーでもある」と述べ、目的を達成するために、人が集まり、ルールを決め、ルールに沿って自律的に動いて目的を達成する、そうした組織を「DAO」と捉えていると説明した。

峯氏は、DAO設計における3つのポイントとして「ビジョンの設定」「集客設計」「資金調達の設計」をあげた。

教育現場から生まれた「BizenDAO」

戸板女子短期大学の川島氏は「DAOを用いてweb3リテラシーを学ぶPBL授業の事例」と題して講演。「備前焼」の振興とWeb3リテラシー教育を組み合わせたユニークな取り組みを紹介した。

授業ではまず、備前焼陶芸家によるライブ講座、備前焼での盛り付けデモンストレーション、備前焼と白磁器との盛り比べなどを体験。さらにその後、実際に「備前DAO」に参加し、備前焼に紐づくNFTを発行したり、『備前焼の魅力を最大限引き出す料理の盛り付けコンテスト』を実施し、自身の盛り付けをSBT化して、ブロックチェーンに刻むことを体験した。

盛り付けのSBTはメタバース空間にも展示、陶芸家とアバターで交流した、と川島氏は述べた。

海士町が挑む「関係人口のDAO化」

海士町の青山氏は「Web3.0を活用した関係人口経営構想の実装を目指して」と題して、「関係人口のDAO化」の取り組みを紹介した。

青山氏は地方創生に取り組む視点として「住民からいただく税収は2億円ぐらい。一方、ふるさと納税で地域の外からいただく額は3億円」と述べ、「地域は一体誰のものかを問い直さなければならない」と続けた。

講演では海士町の取り組みを、これまでの「移住定住促進」、現在の「滞在人口創出」、そして次のステップとして「関係人口経営」と整理。「予算と権限」をDAOに渡すことで、関係人口もまちの一員として、まちづくりに加わることができる、と述べた。

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9月:実際の導入・活用をテーマに

経験と知見を結集させたガイドライン

9月のセミナーはまず、経済産業省「Web3.0・ブロックチェーンを活用したデジタル公共財等構築実証事業」において「地方創生におけるWeb3. 0事業構築ガイドライン」を策定したHiroshima Web3協会 代表理事/CodeFox 代表取締役の進藤史裕氏が登壇。

進藤氏は「我々自身も実際にDAOを構築・運営した経験から、つまづきやすいところやキーポイントを落とし込んだ」と述べ、自治体職員やWeb3ベンダー向けの集大成ともいえる、100ページを超えるガイドラインの要点を解説した。

金銭的価値では都市部と戦うことは難しいので、地方が持つ「非金銭的価値」をいかに高めることができるかが重要と進藤氏は述べた。

合同会社型DAOの詳細

8月に続いての登壇となったガイアックスの峯氏は、2024年4月の府令改正で可能になった「合同会社型DAO」について説明。

従来、DAOには責任者が明確でないため、契約主体となれず、サーバーを借りたり、銀行口座を作ることができないという問題があったが、合同会社型DAOによって「契約主体となれるようになった」、さらに「出資額の1倍まで収益分配を行える」ようになり、収益分配のハードルが下がったと峯氏は説明した。

さらに実例として、空き家を改修して運用するような事例は、銀行からは融資を受けづらかったが、DAOとして取り組む事例が生まれていると述べた。

デジタルウォレットとステーブルコインの可能性

HashPortの宮田氏は、まず、同社が大阪・関西万博で手がける「EXPO2025デジタルウォレット」の取り組みを紹介。「開幕30日で30万超が利用」し、万博終了後は「HashPort Wallet」としてリニューアル予定と述べた。

さらに、1EXPOトークン=1円として使える「EXPOトークン」や、EXPOトークンからステーブルコイン「USDC」への交換機能など、万博での先進的な試みを解説した。

地方創生においては、インバウンド向けにステーブルコインが活用できるほか、地方企業が海外送金に活用できると述べた。

8月、9月のセミナーの最後には、経済産業省中国経済産業局地域経済部デジタル経済課の清水保貴課長が挨拶を行った。

「今年度の一連のイベントは今回で終了となるが、これから具体的なアクションを取っていただく際に、今日の講師の皆様に個別にご相談して欲しい。また、どこに聞けば良いか分からなければ、気軽に中国経産局に連絡して欲しい」と清水課長は述べた。

石破政権が掲げる「地方創生2.0」は、全国各地で実践的な学びが行われながら、ひとつずつ形になっている。そう実感させるセミナーとなった。

|文:CoinDesk JAPAN編集部
|写真:イメージ

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