暗号資産銀行シグナム、ビットコイン利回りファンドを発表──BTCのDeFi需要拡大を受けて
  • シグナムはスターボード・デジタルと共同でBTCアルファ・ファンドを立ち上げ、8%~10%のリターンを目指す。
  • このファンドは裁定取引戦略を採用し、ビットコインで配当を受け取ることができる。
  • また、ファンドを担保として利用できるため、流動性オプションが拡大する。

スイスの暗号資産(仮想通貨)銀行シグナム(Sygnum)は、ビットコイン(BTC)の価格変動に対する投資家のエクスポージャーを低下させることなく、ビットコインから利回りを生み出すことを目的とした新たな投資商品を立ち上げた。

アテネを拠点とするスターボード・デジタル(Starboard Digital)と共同開発した「ビットコイン・アルファ・ファンド(BTC Alpha Fund)」は、裁定取引戦略を用いて年間8~10%の収益を目標としており、収益は直接ビットコインで支払われる。

このファンドはケイマン諸島に拠点を置き、プロフェッショナルおよび機関投資家向けだ。裁定取引による利益をビットコインに換金することで、参加者は保有コイン数を増やしつつ、ビットコインの長期的な価格上昇の恩恵も受けられる。シグナムによれば、暗号資産で機関投資家レベルの利回りを求める顧客から、すでに強い関心が寄せられているという。

このファンドは、機関投資家がポートフォリオにビットコインを保有するだけでなく、分散型金融(DeFi)を利用して保有するBTCからより多くの収益を得ようとしている状況の中で登場した。アナリストによると、ビットコインのDeFiは人気を博しており、巨大な市場を開拓する可能性があるという。

バイナンス(Binance)の最近の調査によると、ビットコインの供給量のわずか 0.8% 程度が現在DeFiで使用されており、これは大きな「未開拓の機会」が潜在していることを示唆している。実際、昨年、フランクリン・テンプルトン・デジタル・アセット(Franklin Templeton Digital Assets)のディールアナリスト、ジュリアン・ラブ(Julian Love)氏は、その機会は1兆ドル(約150兆円、1ドル=150円換算)にも上る可能性があると述べた。

「ビットコインは、現代のポートフォリオにおいて重要なエクスポージャーとなっており、当社の顧客の多くは、ポジションをさらに構築しながら投資を継続したいと考えている」と、シグナムでBTCアルファ・ファンドの提供を主導するマーカス・ヘンメリー(Markus Hämmerli)氏は述べた。

ビットコインの流動性を確保

投資家にとって実用的な特徴の一つは、この新しいファンドをシグナムにおける米ドル建て有価証券担保ローンの担保として差し入れることができる点だ。この仕組みにより、長期のビットコイン保有者は、暗号資産を売却することなく、他の投資のための流動性を確保することができる。

月次流動性と厳格なリスク管理の仕組みは、暗号資産市場の変動性に対応しつつ、ファンドの柔軟性を確保する。また今回の提携では、スターボードの取引・リスク管理ノウハウも活用される。

シグナムは昨年、さまざま施策を開始して以来、ビットコイン関連サービスを拡充している。新ファンドは伝統的金融と暗号資産経済の架け橋となる規制対象商品のラインアップ強化に寄与するだろう。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Swiss Bank Sygnum Unveils Bitcoin Yield Fund as BTC DeFi Demand Grows

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