- ビットコインは過去1カ月で20%以上下落、アルトコインはさらに大幅に下落しており、暗号資産(仮想通貨)市場の弱気相場への転換を示唆している。
- 米国株式は人工知能(AI)への投資家の熱狂により持ちこたえている。
- レバレッジ主導の清算と、ブロックチェーンとAIの融合不足が市場心理を弱め、長期投資家は10万ドル超の局面で利益確定の機会を捉えた。
ビットコイン(BTC)は、絶対値ベースでも、米国株式との比較でも、足場を失った。
暗号資産投資会社21シェアーズ(21Shares)のチーフ投資ストラテジスト、エイドリアン・フリッツ(Adrian Fritz)氏によれば、暗号資産と株式の乖離はマクロ圧力、投資家心理、そして同氏が「パンダ市場」と呼ぶ現象に起因する。本格的な暗号資産の冬ではないが、依然として弱気相場の状況である。
「テクニカル面では、弱気相場に入った」と、フリッツ氏はCoinDeskのインタビューで述べた。ビットコインは高値から30%以上下落し、50週移動平均線を割り込んだ。この水準は歴史的に、市場の勢いの広範な転換を示す指標だ。一方、アルトコインはさらに急落し、多くが50%以上下落している。
ビットコインは過去1カ月で22%下落し、伝統的市場と比較して大幅に急落した。同期間、S&P500はわずか2.5%下落したのみであり、ビットコインが歴史的に連動してきたナスダックは4%下落した。
フリッツ氏はこの状況を、人工知能(AI)の過大な影響によるものと分析する。「『マグニフィセントセブン』を除けば、S&Pの上昇幅はさほど大きくない」とフリッツ氏は述べ、次のように続けた。
「しかし、AIが明らかに市場心理を牽引している。ウォール街の新たな目玉商品なのだ」。
この「目新しい商品」は、暗号資産に流れ込むはずだった資本を吸い上げている可能性がある。フリッツ氏は、AIとブロックチェーンの融合(ディープフェイク時代にコンテンツの真正性を検証するブロックチェーンの活用など)は以前から予想されていたものの、実際の投資事例における重複は限定的だと指摘する。
「人々は日々、AIの影響を実感している。ブロックチェーンはまだ、そのような瞬間をもたらしていない」と、フリッツ氏は指摘した。
暗号資産のもう一つの足かせはレバレッジだ。最近の市場調整は10月初旬に始まり、200億ドル(約3兆1200億円、1ドル=156円換算)の清算が発生した。
それ以来、1日あたり5億ドルの清算が日常化している。フリッツ氏によれば、この洗い出し現象と、過去の暗号資産下落を特徴づけた詐欺や大規模ハッキングの不在を組み合わせて考えると、過剰なリスクテイクが根本原因であると考えられる。
この下落は、長期保有者(フリッツ氏が「富裕層ビットコイン投資家」と呼ぶ層)にさえ、利益確定を促している。「2011年に購入し、数十億ドルの利益が出ているなら、今数億ドルを売っても人生は変わらない」と、フリッツ氏は語った。
一方、金は不確実な時代に選ばれる資産としての地位を再び証明しており、毎週のように新高値を更新していた。ただし、現在は、直近の最高値から約10%下落している。
「ビットコインは、依然としてリスクオン資産のように取引されている」とフリッツ氏は指摘し、次のように続けた。
「ビットコインは確かに、固定供給量、事前に決められた発行量など、金のような特性を持つが、流動性が高く、24時間365日取引される。つまり市場のセンチメントに即座に反応する」。
とはいえ、テクニカル指標は相反するシグナルを示している。反発の可能性はあるものの、10万2000ドルの抵抗線を奪還できなければ、さらなる下落が確定する恐れがあり、最悪のケースでは200週移動平均線(約5万5000ドル)が支持線となる。
先行きについてフリッツ氏は、慎重な楽観姿勢を維持。年末まで変動が続くと予想しつつも、規制の明確化や金利低下といった材料が2026年のビットコイン反発を支えると見る。
「ビットコイン自体は懸念していない」と述べつつ、「広範なアルトコイン市場は成熟が必要だ。投資家は盛り上がり以上のものを求めている。実際の収益やステーキング利回りだ。ファンダメンタルズが再び重要になっている」と指摘した。
AIトークンや、その他のブロックチェーンとAIのハイブリッドについては、最終的には注目を集める可能性があるが、現時点では意味のある形で認知されていないと、フリッツ氏は指摘する。それまでは、暗号資産は依然としてまったく異なる波に乗っている株式市場に遅れを取る可能性がある。
|翻訳・編集:山口晶子
|画像:Shutterstock
|原文:Why Bitcoin Is Underperforming Equities Despite Bullish Catalysts


