- S&Pグローバル・レーティングス(S&P Global Ratings)は、テザー(Tether)のUSDTステーブルコインを、リスク資産へのエクスポージャー増加と準備金開示の不備を理由に、最低評価に格下げした。
- S&Pの報告書は、USDTの裏付け資産に対する懸念を強調し、ビットコインが現在準備金の5.6%を占めており、価格下落によりUSDTが担保不足に陥る可能性があると指摘した。
- 安定性への懸念があるにもかかわらず、USDTは時価総額1800億ドルを超える最大のステーブルコインであり、近年複数回の下降局面を通じても価格ペッグを維持している。
S&Pグローバル・レーティングスは、ビットコイン(BTC)などのリスク資産へのエクスポージャー増加と、準備金開示の継続的な不備を理由に、テザーの主力ステーブルコインUSDTを、自社のステーブルコイン安定性評価尺度で最低ランクに格下げした。
11月26日に公表された改訂評価によると、S&PはUSDTの米ドル価格ペッグ維持能力スコアを、2023年12月に付与されたこれまでの「制約あり(4)」から「脆弱(5)」に引き下げた。
テザー社は、CoinDeskと共有した声明でS&Pの評価に反論した。
「テザー社は、本報告書における評価に強く異議を唱える。これはデジタルネイティブ通貨の本質・規模・マクロ経済的重要性を捉えきれず、USDTの回復力・透明性・グローバルな有用性を明確に示すデータを無視した時代遅れのフレームワークを適用したものだ」と、テザー社は声明で述べた。
S&Pの報告書によると、ビットコインは現在、USDTの裏付け資産の約5.6%を占めており、3.9%の過剰担保マージンを上回っている。これにより、価格急落時にトークンの担保不足が生じる懸念が高まっている。
テザー社のステーブルコイン準備金には金、社債、担保付ローン、その他様々な信用リスクや市場リスクを伴う投資も含まれるとS&Pは補足した。S&Pは、これらの資産の評価額や保有銀行・保管機関の信用力に関する詳細な公開報告が不足しているという、頻繁に指摘される懸念を指摘した。
「ビットコインの下落が他の高リスク資産の価値減少と重なれば、準備金によるカバー率が低下し、USDTの担保不足を招く可能性がある」と報告書は述べた。
テザーのUSDTは流通量最大のステーブルコインで、時価総額は1800億ドル(約28兆円、1ドル=156円換算)を超える。グローバルな暗号資産市場、そしてとりわけ米ドルへのアクセスが制限されがちな新興国において、USDTは中心的な役割を果たしている。
「テザーFUD(恐怖、不確実性、疑念)」と呼ばれる、USDTの安定性や裏付け資産に関する懸念は長年、暗号資産ウォッチャーや規制当局の間で議論を呼んできた。それにもかかわらず、USDTの価格はペッグを維持しており、この点はS&Pも報告書で認めている。
USDTは複数の資産で裏付けられており、テザー社の最近の開示資料によると、準備金の77%を米国債と現金同等物が占めている。テザー社は以前、2023年末までに準備金から担保付ローンを段階的に廃止する計画を表明していた。しかし、BDOイタリアが署名した最新の保証報告書によれば、2025年9月時点でもこれらの資産は担保資産の8%(140億ドル超)を占めている。
今年成立した米国のステーブルコイン法(通称ジーニアス法)では、発行体は短期米国債や、マネーマーケットファンド、レポ契約などの流動資産を使って、ステーブルコインを1:1で裏付けることが義務付けられている。
|翻訳・編集:山口晶子
|画像:CoinDesk
|原文:S&P Downgrades Tether’s USDT, Citing Falling Bitcoin Prices as Risk


