SBIグループの暗号資産(仮想通貨)取引所ビットポイントジャパンは11月28日、大阪市に本社を置く東証スタンダード上場の住設機器メーカーASAHI EITOホールディングスと、イーサリアム(ETH)とソラナ(SOL)の取得・保管・活用支援に関する業務提携を開始したと発表した。
トイレや洗面台などの製造を手がける同社が12月から始動予定の「トレジャリー事業」を、国内交換業者として支援する形だ。
同社は11月21日の取締役会で、グループの財務基盤の強化と資産運用の多様化を目的に、暗号資産流動性提供事業を中核とするトレジャリー事業の開始を決議。過去数期にわたり営業損失が続き、製造業単体では十分な収益確保が難しい状況を踏まえ、ステーキングや流動性提供による報酬を活用して資本効率の向上を図る方針だ。

同社のリリースによると、運用対象はイーサリアムとソラナで両者をおおむね半分ずつ取得する。
第三者割当による新株予約権の発行で調達する最大約27億円を活用し、2025年12月から2031年12月にかけて段階的に購入する計画だ。取得したソラナの一部は、ソラナ基盤で展開されるIP(知的財産)関連トークンの「スマートポケット(SP)」に転換するという。
保有したイーサリアムやソラナは、ステーキングによる報酬獲得に加え、DEX(分散型取引所)への流動性提供を通じて手数料収入を得るLP事業(Liquidity・Providing)に活用する。従来の製造事業に加えて、デジタルアセットを新たな収益源として位置づける方針を示している。
ビットポイントジャパンはこれまで、法人による暗号資産の取得やカストディ(管理)支援などを強化してきた。今回の提携でも、ETH・SOLの取得サポートから保管体制構築、税務・会計処理まで支援する。同社は期末時価評価課税の適用除外に関するサービスも行うなど、国内企業が暗号資産を保有する障壁となりやすい領域もカバーしている。
ASAHI EITOホールディングスは11月中に、社内に「トレジャリー事業部(仮称)」を設置し、内部統制やコンプライアンス体制を整えながら段階的に事業拡大を進める。当期業績への影響は軽微としつつ、暗号資産の運用収益や資産価値の上昇を通じて企業価値向上につなげる考えだ。
製造業を基盤とする企業が、暗号資産の保有に加え、LP事業やステーキングに本格参入する例は国内でも珍しい。企業財務に暗号資産を組み込むDAT(デジタルアセットトレジャリー)企業は、国内でもメタプラネットなどを中心に拡大してきたが、単なる保有に留まらず、積極的に運用に踏み出す動きが加速しつつある。
同社の取り組みは、DAT企業の次のフェーズを示す事例としても注目されそうだ。
|文:橋本祐樹
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