- ブラジルのフィンテック企業メリウスは、黒字で無借金にもかかわらず、企業価値「ゼロ」と評価されていたことが判明し、ビットコインへと舵を切った。
- 同社は、国債保有がマイナスリターンとなる状況から脱するためにビットコイントレジャリー戦略を採用。
- メタプラネットに着想を得た手法を用い、デリバティブで利回りを生みつつ、保有ビットコインの80%をコールドウォレットで保管している。
ブラジルのフィンテック企業Méliuz(メリウス:CASH3)が2024年後半に自社のバランスシートを精査したところ、驚くべき事実が浮かびあがった。黒字で無借金、成長しているにもかかわらず、マーケットは同社の事業価値を「ゼロ」と評価していた。
「手元資金を除外すると、会社の価値は何もなかった」と、メリウスのビットコイン戦略責任者Diego Kolling(ディエゴ・コーリング)氏は、Blockchain Conference Brasil 2025でCoinDeskに語った。当時、約2億5000万レアルの手元資金の多くは国債で運用されていた。しかし税金とインフレを考慮するとリターンはマイナス。
「われわれは資産を奪われていた」
そこでメリウスは、ブラジルの上場企業としては異例の決断を下した。すなわち、ビットコインへと舵を切った。
シフトは驚くほどスムーズだったとコーリング氏は語った。同社株主総会では、ビットコイントレジャリー戦略の導入に圧倒的多数が賛成した。しかも総会の出席率は66%という同社史上最大の出席率だった。
メリウスが採用したのは、多くのビットコイントレジャリー企業のように、ビットコインを購入するためにドル建ての安価な社債を発行する手法ではない。株式発行を活用し、現在ではデリバティブなどの戦略も組み合わせている。
債券市場の活用は低コストな資金調達手段となり得るが、ブラジルのような新興国では通用しないと同氏は述べた。ブラジルでは、基準金利は15%付近、民間の借入金利は20%を超えることも多いという。
「アメリカではStrategy(ストラテジー)は4%のFRB金利と競争している。ブラジルでは22%だ」
メリウスはまた、日本のビットコイントレジャリー企業メタプラネットに着想を得た別の戦略にも取り組んでいる。メタプラネットはキャッシュ担保のプットオプションを売却して利回りを得ており、メリウスも同様に、BTC購入のために確保した資金でオプションを売却して利回りを生み、その収益でビットコインを購入している。元本は維持して戦略を進めている。
コーリング氏はメリウスの運用規模については具体的な数字を明かさなかった。だがBTC保有量の20%を上限に利回り戦略を展開しており、導入に際しては、少額からテストを重ねたうえで投入するBTCを増やしていったと説明した。
メリウスは、ブラジルで3000万以上のユーザーを抱える金融サービスプラットフォーム。保有するビットコインの80%はコールドストレージで保管し、デリバティブを通じた利回り獲得には一部だけを当てている。将来的には、Lightning(ライトニング)やビットコイン担保の債務など、他の戦略への拡大の可能性もある。
だが、動機は明確だ。投機ではなく、サバイバルだ。
「ビットコインは脱出口になった。法定通貨を保有することは、蓄えるより早く、企業資産を溶かすことを意味した」
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Midjourney/modified by CoinDesk
|編集:Priced at Zero: How Brazil’s Méliuz Turned to Bitcoin to Escape a Treasury Trap


