- FRBの利下げと今後の金融政策に関する矛盾したシグナルを受けて、ビットコインとイーサリアムの価格は下落した。
- FRBが短期国債を購入する決定は、流動性管理を目的としており、量的緩和を実施するものではない。
- FRB内部の意見の相違と、2026年までの金利の道筋が不明確なことから、市場の不確実性は続いている。
時価総額トップの暗号資産（仮想通貨）であるビットコイン（BTC）は、アメリカ連邦準備制度理事会（FRB）による前夜の利下げを受けて下落している。その理由は、FRBのメッセージによってトレーダーが将来の金融緩和への期待を薄めていることにあるとみられる。
FRBは12月10日、予想通り、政策金利を25ベーシスポイント引き下げ、3.25%とした。また、銀行システムの流動性管理のため、短期国債の買い入れを開始すると発表した。
しかし、BTCは一時9万ドルを下回り、アジア取引時間の早い時間の2.4%下落した。イーサリアム（ETH）は4%下落して3190ドルとなり、CoinDesk 20指数（CD20）は4%以上下落した。
リスク回避の動きは、インフレ抑制と雇用目標のバランスをめぐるFRB内部の意見の対立が深まっていること、そして将来の利下げがより困難な道筋となる兆候が見られることによるものと考えられる。
10日には2人の委員が金利据え置きに投票したが、個別予測では6人のFOMC委員が利下げは「適切ではない」と判断していた。
さらに、FRBは2026年に1回のみの利下げを示唆し、2～3回の利下げが見込まれていた予想を裏切った。
「FRBは分裂しており、市場はジェローム・パウエル（Jerome Powell）議長が交代する2026年5月までの金利の動向について、まったく見通しが立っていない。パウエル議長が積極的に利下げを推進するであろうトランプ大統領の忠実な支持者に交代することが、金利にとって最も確実なシグナルとなるだろう。しかし、それまではまだ6カ月ある」と、アンバーデータ（Amberdata）のデリバティブ・ディレクターであるグレッグ・マガディーニ（Greg Magadini）氏はCoinDeskに語った。
同氏はさらに、現時点で最も可能性の高い事態は、FRBに明確な利下げを納得させるために必要な「レバレッジ解消」、つまり市場の下落だと付け加えた。
モナーク・アセット・マネジメント（Monarq Asset Management）のマネージングパートナーであるシリアン・タン（Shiliang Tang）氏は、BTCは株式市場の下落に追随していると述べた。
「暗号資産市場は当初、このニュースを受けて急騰したが、その後は株式市場の先物市場と連動して着実に下落しており、BTCは2週間で3度目の9万4000ドルの局地的な高値を試していたものの、突破には至っていない」とタン氏はCoinDeskに語った。
同氏はさらに、今年最後の大きな市場要因が過ぎ去り、インプライド・ボラティリティ（IV）は引き続き低下傾向にあると付け加えた。
流動性の管理であり、量的緩和ではない
暗号資産コミュニティは、FRBの準備金管理プログラムを、2020年から2021年にかけて前例のないリスクテイクを煽った古き良き量的緩和（QE）だと非難する傾向があるが、必ずしもそうとは限らない。
準備金管理プログラムは、FRBが400億ドル（約6兆2000億円）の短期国債を購入するものだ。これは確かにバランスシートを拡大するが、主に短期金融市場の流動性逼迫に対処するためのものであり、バランスシートの拡大や持続的な利回り抑制にはコミットしていない。
従来の量的緩和は長期国債や住宅ローン担保証券を対象とし、長期金利の積極的な引き下げと経済への数兆ドル規模の資金注入を通じて、投機的投資の流動性を直接的に押し上げた。
ステノ・リサーチ（Steno Research）の創業者、アンドレアス・ステノ・ラーセン（Andreas Steno Larsen）氏はXで次のように述べている。「残念ながらこれはランボルギーニ級の量的緩和ではない。『ウーバーが7分で到着』級の量的緩和だ」。
一部の観測筋によれば、今回実施されたプログラムは、2019年のような金融市場の不安定化を未然に防ぐ先制攻撃だ。
「2019年のような混乱を招くリスクを冒す代わりに、FRBは今、静かに緩衝材を買い集めている。単に金融システムが春を乗り切るのに十分な余裕を確保し、何かが破綻する事態を防ごうとしているだけだ」と、匿名の観測筋、EndGame Macro氏は述べた。
｜翻訳：CoinDesk JAPAN
｜編集：井上俊彦
｜画像：Shutterstock
｜原文：Why is Bitcoin Trading Lower Today?
